第6話 部活対抗の体育祭⁉

「そういや、半月後は体育祭だよね~」

「あれ、そうだっけ? みんなと同じ組になれるかな⁉」

「無理っしょ」

「えぇぇえ⁉」


 ある日の朝、彩里たちと四人で話していた時。

 急にその話が出てきて、びっくりしちゃった。

 体育祭、五月にあるんだ!

 っていうかそんなに運が悪くなるようなこと言わないでよぉ……


「だって部活動グループ対抗の体育祭だもん。軽音楽部は音楽組だから、美術部、つまり芸術組の私とは違うよ」


 七羽が冷静に言う。


「私もバスケ部だから体育館組だよ~」

「私は陸上部だからグラウンド組! みんな違うねー……」


 えぇ、部活動グループ対抗の体育祭ってそう言うこと⁉

 みんなと一緒になれないの⁉


 ってことは、逆に、イケダリフォートップの四人とは一緒になるんだよね……⁉

 ギャァァァ!! 私の人生終わるぅ! 先輩たちに殺されるぅ~!!


「心配しなくても大丈夫。これは部活動の境ないんだから、恨みは胡桃だけじゃなくて吹奏楽部とか合唱部、同じグループの人たちにも飛ぶから」


 へー、そーなんですかぁ。

 もう何も考えたくなくなった私はゲキチン。

 心が地に落ちそうだよ~……。


 まぁしょうがないんだよね。花里学園は勉強に力を入れていたりするわけではないし、幼稚園からゆる~い部活があるくらいだから、ものすごく部活に力を入れてるんだよね。

 先生たちも、授業の時より部活のコモンやってる時の方が生き生きしてる感じ。

 実際、生徒もそうだけど。


 この学園の部活は、多くの分野で賞を取っていて、部活で名門の学校だ。体育祭とかの祭りも、自分の部活の大会のモチベーションを上げるために、一緒にしたがるのは分かる。

 ……でもなんで部活?


「私、吹奏楽部兼部しようかな〜」

「私もっ! 翼先輩と一緒の組がいい〜」

「借り物競争とかも同じ組の人の中で借りるんだし、絶対同じ組がいいよね!」


 えぇ、そうなの⁉︎

 知らなかったぁ……。

 ってか、同部活・同分野の部活の仲間意識めっちゃつけさせようとしてない?


「まぁ、とりま頑張って! 私にはそれしか言えない!」

「うん……」


 頑張れと言われても、何を頑張れば?


「そういえばさ、何の種目やるの?」


 と私が聞くと、彩里が答えてくれた。


「いろいろだよ~。借り物競争とか、台風の目とか、ダンスとか、百メートル走とか、障害物競走とか?」


 まるで小学校の運動会みたい!


「最後には組対抗全員リレーあるよ! イケダリフォートップの誰かにバトン渡すならモチベ上がるのにな~」


 莉乃が言っている。

 きっとつばっさーを思い浮かべてるんだろうな。


「体育祭は二日間に渡って行われるよ。一日目は幼稚園生と小学生、二日目が中学生と高校生だよ。一日目は学校に来たい人だけ行くの。でも下の子たちがグラウンド使ってるから、大人数での練習は難しいんだ。胡桃は来る?」


 七羽が一気に話して聞いてくる。


「んー、どうしようかなぁ。練習できるなら人工芝だけだけど……」


 うちの学校には、高校グラウンドと中学グラウンド、そして人工芝がある。

 花里学園は結構大きな学校だし、幼稚園生や小学生はこれから中学に上がってくるから、その時の部活の能力の育成のために、クラブがある分野が多い。

 そこに魅力を感じて入学してくる子が多いらしいから、幼稚園も小学校も、募集定員は多いんだ。


 もちろん倍率も高いから、落とされる人も多いけど。

 だから幼稚園も小学校も全員出てきたら、中・高グラウンドも全部埋まってしまう。


 そうしてできたのが人工芝グランドだ。

 人工芝グラウンドは花里学園が所有しているものだ。

 道を挟んでむこう側にあって、遠いけど使いやすい。

 でもやっぱり滑るんだ。

 だから体育祭の練習に最適とは言えない。


「この後体育祭の話し合いがあるから、聞きながら決めたら?」


 七羽がそう言って、時間割が書いてある後ろの黒板を指さす。

 確かに、一時間目と二時間目が学活になってる。

 しかも、もとの時間割は、一時間目は数学だっ!


 潰れたああああああ!!

 やったねぇ!


「数学潰れたと思ってるだろうけど、六時間目に移動してるからね」


 七羽に言われたことを幻だと思って、ギギギッ……とロボットのような動きで後ろの黒板を見ると。


「ギィィィィィアァァァァァァ!!!! 数学があるぅぅぅぅぅ!!!!!! いーーーやーーーだーーーーー!!!!!!!」


 たまらず少しだけ叫ぶと、三人は耳を塞いだ。


「あれ、なんでみんな耳塞いでるの?」

「「「アンタが大声すぎるからだよ!」」」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「それでは、今日は一、二時間目を使って、高校を合わせた全学年の部活動グループで、種目決めをしてもらいます」


 学級委員の七羽がそう言い、クラスメートたちが歓声を上げる。

 やっぱりみんな、楽しみにしてたんだ!


「グラウンドグループは陸上部、サッカー部、野球部、ソフトボール部です。高校グラウンドの朝礼台前へ向かえ!」

「またなんだよ、偉そうに!」


 学級委員長が偉そうに言って、男子が文句を言う。

 学級委員長は私の幼馴染、佐倉さくら 智紀とものりだ。

 運動神経が良くて、頭も良くて、まとめる力もあってイケメンな、ケチの付け所がないお隣さんだ。


 陸上部の莉乃は「行って来まーす!」と言って元気に教室を出て行く。


「体育館グループはバスケ部、バレー部、卓球部です。高校体育館へ向かってください」

「おっしゃ、借り物勝ち取ったる!」


 彩里が本気を出して、男口調になって教室を出て行く。


「芸術グループは美術部、工芸部だ! とりま美術室へゴー!」


 智紀が言って、七羽が「バイバイ」と教室を出て行く。


「音楽グループは吹奏楽部、合唱部、軽音楽部です。中学音楽室へ行こう!」


 智紀はサッカー部と吹奏楽部を兼部している。


「俺、音楽組の方に出るから、一緒に行こうぜ」

「うん」


 先に教室を出て行った女子たちが、みんないいな~って目でこっちを見ている。

 やっぱり智紀はモテるんだ。


「よし、行くぞ~!」


 運動が得意な智紀は、やっぱり気合いが入ってるみたい。

 腕まくりをしている智紀を見て、私はふふっと微笑んだ。


 ――高校生の妬みの視線を除けば、楽しい体育祭になりそう!!

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