第10話 今度は席替え!?
あぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ……。
時間がないよぉっ!!
四時間目は学活、席替えー!!
今までは莉乃が近かったから良かったんだけどね……。
この席が良かったなぁ。
決め方は痛手単純。
※「至って」だよー!
男子は教室で、女子は廊下であみだくじをして、その番号の席になる。
女子が教室に入ったところで、隣になる相手の男子がだれなのかが分かる、ってわけ。
「じゃあ、女子は廊下に出ようかー」
先生がそう言って、外に出た。
「じゃあ、先にあみだくじ作っておいたので、出席番号順で自分の場所を決めて、一本線をひいてください」
学級委員の七羽がそう言って、出席番号順で一番最初の七羽が書いてから、江沢さんが書きに行く。
七羽は碓氷で「う」なのに女子では出席番号最初なんだよね。
何人かが書いて、次は私の番っ!!
私は「碓氷」と「鹿島」に「さくらば」と書く。
隣に書いとけば、どうせどっちかとは近くなるでしょー!!
「胡桃……」
「ん?」
「中学生なんだから漢字で書きな?」
「えー、めんどくさーい」
ん??
みんながなんか呆れた目でこっちを見てる気がするから、無言で彩里の胸に飛び込んだ。
あぁぁ、そんな目で見ないでぇ……。
ちらっと振り向くと、莉乃までもがぷっと吹き出している。
むー! 友達に向かってそれはよくないよー!!
「まっ、元気だしなって。私もしょうがないから『まつば』ってひらがなで書いてきてあげるよ」
「ありがとおおお……」
やっぱり彩里は神様やぁ……。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして時間は経ち、先生が教室から出てきた。
「男子も終わったから入って来て~」
「やったー!!」
「学級委員長と隣になれるかな~?」
みんなが隣の男子のことを気にする。
うちのクラスのイケメンなんて言ったら智紀以外にいない。
いや……一人だけいる?
怖いから、彩里の真後ろについて……そろりそろりと教室に入る。
ドアと反対側、一番後ろの席……って書いてあったけど、隣誰なんだろう。
「おっ。胡桃、また嫉妬の念を浴びるね~
え?
嫉妬の念を浴びるってことは……⁉
「とものり~~~っ!!」
目を開くと、すぐそこに智紀!
「お、おうなんだよ」
「隣⁉」
「そうらしいけど……」
「やったあ! 智紀だぁ!!」
私がはしゃぐと、彩里もおでこを押さえてため息。
莉乃は呆れて笑い、七羽は吹き出している。
周りの女子たちは羨ましそうにこっちを見てる。
「え? 私、なんかした?」
「したよね」
「ほんと?」
「ほんと」
彩里との小声の会話も会話にならずに、もうどうでもいいやっとなってまたはしゃぐー!
「やった! 勉強教えてもらえる! 体力の付け方教えてもらえる! 内職してても何も言われな~い! え、最高じゃんっ!!」
「は? ははははっ」
私が飛び上がっていると、クラス中が大爆笑で包まれる。
え、なんで?
「なんでみんな笑ってるの?」
「胡桃は知らなくていいよ」
智紀に聞いたのに何も教えてくれない。
むぅっ、幼馴染なのによくないよっ!
「皆さん、静かにしましょうかー⁉」
先生が少し怒り気味で大声で言ったため、みんな笑いを堪える。
よくないなぁと思いながら、先生に叱られてしゅんとして、新しい席に座った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そして昼休み。
いつも通り彩里たちと食べるけど、今日はめっちゃハイスピードで食べないといけない。
今日は私の席に集まる日だから、4人で集まったんだけど。
智紀の親友、まぁまぁモテていてイケメンで、可愛くてみんなに愛でられているクラスのマスコットキャラクター、
運悪く、中村くんもこの席に集まってしまった。
結局、6人で食べることになった昼食。
でも楽しんでられないんだよね。
昼休みは、15分後から体育祭の練習っ!
体育祭実行委員は先に5分前にグラウンド近くの会議室に集まらないといけない。
移動には5分かかる。学校が大きいから遠い!
だから、実質5分で食べないといけないんだっ!
ヤバいヤバい!
「中村くんも実行委員でしょ?」
「そうだけどさぁ……食べ終われないよぉ。あ、そういえば桜庭さん、僕のことは優弥呼びでいいよ?」
「えっ? あ、うん、おっけー。じゃあ私も胡桃呼びで~」
「りょっ、了解!」
少し中村くん……あらため優弥は、なぜか少したどたどしく返事をした。
な、なんで?
彩里たち女子軍団は、「胡桃、がんば」と何かを諦めた様子で笑いながらお弁当を頬張る。
え? 私、なんかした?
何気なく教室を見渡すと……あれ? 女子がこっちをみてる気がするけどまぁいいや。
「ほ、ほらっ胡桃、早く食べないと実行委員遅れちゃうよっ」
「あー! 忘れてたぁ!!」
いつになく七羽が焦った声色で言ってくる。
まだ女子たちの視線が気になって……なんて言ってる場合じゃない!!
早く食べないと、かずかずに怒られるぅ!
「じゃ、俺もらうわ」
「えっ⁉︎」
生まれてきてから何度取られたことか。
お母さん特製の紅生姜の入った卵焼き。
私、大好きなのにぃ!!
取った張本人、智紀は、満足そうに卵焼きを頬張っている。
「うぅっ、七羽ぁっ!! 好きなもの最初か最後、どっちに食べる派⁉︎」
「え、最後だけど……」
「ほらっ智紀! 好きなもの最後に食べるの一般的だから取らないでー!」
「一般的だからなんだよ?」
「生意気なー!」
私たちのそんな会話をドアの外から聞いている人がいるだなんて、これっぽっちも思ってなかったんだ——。
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