第11話 競技も協議も、もう大変!!

 結局お弁当のいんげんを食べるのを智紀と優弥に手伝ってもらって、やっと食べ終わってダッシュでグラウンドへ!


「……それでは、体育祭実行委員第1回協議会を始めます」


 かずかずが私たちに向かって親指を立ててからそう言った。

 せ、せーふ。


「実行委員は修羅場です。今日練習する種目も決めてませんが、どーします?」


 か、かずかず、いつもはしっかりしてるのに、なんか脱力してる感じ。

 半分諦めた?


「選択競技で良くね?」


 って陽ちゃんが言うけど、


「まだパンが来てないんだよ」


 とかずかずが牽制。

 えっ、まだ来てないの?


 実行委員の得点とかあったら食べたかったのになぁ……私、事はたくパンに嫌われてる。


 ※ことはたくって何よ? ことごとく、じゃないの? え? よくわからなすぎて訂正ができないヨ。


「義務競技がいいと思うんだけど……」

「パンじゃなくて明日の給食でいいから何か食べてぇ!」

「それなっ、腹空くっつーの!」

「私はイケダリフォートップと佐倉くんのみんなの100メートル走の勇姿を早く見届けたい!!」

「わかるー!! 貴重な瞬間だよねっ。写真撮りたい……」


 自分の見せ場が多い100メートル走、もしくは障害物走。どっちかやらないといけないから通称「義務競技」派のかずかず。


 パンじゃなくてもゼリーでも白米でもいいから何か食べたい「選択競技」派の男子軍団。


 イケダリフォートップと智紀の勇姿を見届けたくて必死な「義務競技」派のじぇーけー。


 ※胡桃ちゃんは英語が超苦手なんだよネ。


「それでは、女子の皆さんもこう言ってるので……」

「イケダリフォートップだからって調子乗んなよ!」

「自分たちの有利な方向にしやがって~」


 私も別に義務競技でいいと思うんだけど、他の男子たちは納得せず、ヤジが飛んでくる。


「だって……」


 かずかずが口を開いた瞬間。


 ガチャッ


 会議室のドアが開いた。


「ちゃんとやってるかー? なんかすげー男子の大声が聞こえた気がすんだが……」


 うちの隣のクラスの熱血担任がドアからひょっこりと顔を出し、赤いタオルで汗を拭きながら言う。


「……」


 みんな、黙る。


「……あははっ、気のせいですよ、気にしないでくださいっあはは」


 かずかずが壊れた。嘘みたいな満面の笑みだけど大丈夫かな?


「そうかー? そろそろ練習始まるから出てこいよ~」


 そう言って熱血担任はのんびりと足早に去っていった。


 ※前、国語の授業の時に、七羽ちゃんに「足早」を教えてもらったんだよね。のんびりしてたら急いでなくない?


「…………ふぅっ」


 みんな緊張してたのか、ドアが閉まった途端にほっとしてため息を吐く。


「……行くか!」


 陽ちゃんの一声で、


「おっしゃー!!」

「やったる!」


 と男子たちが何故かやる気を出す。


 あれ、競技、どっち?


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 結局外に出たら義務競技に燃えてる人が多かったし、男子たちが女子の熱量に圧倒されたから、義務競技になった。よかったね、かずかず。


 そう言えば私は障害物走なんだけど、「実行委員だから」と言ってトラックの真ん中へ連れてかれた。


 実行委員は100メートル走、障害物走でそれぞれ3人でピストルやんないといけないらしい。

 私は出る競技が障害物走だからピストルは100メートル走に決まり!


 あとは、「年下が優先だよなー!」というよくわからないことを言った陽ちゃんの一言で、100メートル走は私、智紀、大和くん。障害物走は陽ちゃん、つばっさー、かずかずでピストルをやることになった。


「きゃぁぁぁぁ、陽太くんが障害物走! 私の走り、見てもらえるっ♡」

「いやいや、100メートル走にしてよかったよ! こっちには町田くんがいるしね☆」

「噂の中等部の佐倉くんもいるよ! こっちの方が神ってるもん!」


 何故か自分の競技にいるイケメンたちの価値で競い合ってる。別に何にもならないと思うんだけどな……?


「おぉぉぉぉっし、やるぞ!!」


 短い昼休みだけど、ピストルの音を思いっきり楽しもう!


 ※なんで?


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 そして始まった練習。

 最初は体系的に小さい女子からだ。

 今日はできるだけスムーズに競技を進めるために、足の速い彩里が最初っ!!


 彩里は100メートル走だから、1レーンのスタート地点につく。

 にこって笑いかけてくれた。その目にはちらちらと炎が映っていた気がした。

 彩里、勝って!!


 大和くんにマイクを近づけてもらって、


「いちについて、よーーいっ、」


 バンッ!


 ピストルの音が近くで鳴り、走者が一斉にスタート!

 彩里は徐々に前かがみから体勢を整えて、ダントツトップ!


 一番内側だからスタートが後ろなのにぐんぐん速度を上げて、カーブに突入。

 そのまま走りこんでゴール!


「彩里ー!! かっこいい~!!」

「ありがとー!!!」


 めっちゃ遠くにいるから、マイクを通して話して、彩里も超大声で返してくれる。

 かっこよかった!!

 ペチッ。


「痛いっ!」

「そのためのマイクじゃないっ!」


 この会話もマイクに入っちゃって、みんながどっと笑う。

 ま、まぁ、結果オリーブだよね!


 ※食べ物への愛がものすっごく伝わってくるね……。

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