第28話 Next challenge!

「エントリーナンバー18トゥウェンティーエイト!! 茨城県代表、花里学園~!!」


 野外ステージということもあり、アナウンスの人もテンションが高い。

 大きくセットされているステージにのぼる。

 この曲が――北原学園との闘いを左右する!


「は~い!! 愛知ではおなじみでした、」

「「「「「花里学園軽音楽部で~す!!」」」」」


 5人で声を合わせて言うと、黄色い声が飛び交う。

 やっぱり人気だなぁ……。


「ボーカルは私っ、桜庭胡桃がつとめます!」


 手を挙げてそう言うと、これまた大きな歓声!!

 私が認められてる感じで嬉しい……!


「そしてっ、ギターの!」

「秋津陽太で~す! よろしくなー!!」

「ベースの?」

「芦田百航です! 精いっぱい頑張ります!」

「キーボードのっ」

「月城翼ですっ。よろしくお願いします!」

「ドラムのっ?」

「町田大和です! 一番ドラムが輝ける曲なので、持ってるもの全部ぶつけます!!」


 全員の紹介が終わると、みんな手を挙げて「ふゅ~!!」と言ってくれている。

 私たちの存在が、こんなに多くの人に認められてるって、こんなに楽しいんだ。


「私たちが作曲した曲は、『Next challenge!』という曲です!」

「僕たちはこのコンテストで優勝を目指しています」

「僕たちに向けて、今聞いてくださっている皆様に向けて、」

「4次選考への強い思いを全てぶつけます!!」

「みんな、聴いてくれよな~~~!!」


 最前列で見守っていくれている、中1組たち。

 みんな笑顔で、周りの歓声で聞こえないけど、口の動きで『がんばって』と言っているのが分かる。


 うん、うんっ!

 その想い、しっかりぶつけます!!


「まずは君たちその目を俺たちへ

 おぉいいぜ! 盛り上がってこうぜ!

 そんなにベースは得意じゃないけど毎日練習積み重ね

 自分納得の演奏しに来た花里学園 百航ですっ!」


 イキって、イキって、イキりまくる。

 女の私の声だけじゃそれはできない。

 だからってみんなが歌うことは演奏の評価を下げることになるってみんなが言ってたから、それならラップすればいいんじゃない? って言ったんだ!

 そしたらみんな賛成してくれて、いつもは優しいかずかずもちゃんとイキってくれてる!


「俺らの学校で 俺たちの愛称は

 イケダリフォートップ! ぷらす天使の歌声胡桃さま!

 1次も2次も3次もね 緊張したけどどうでもいいぜ

 今ここで君と一緒にいることそれが俺の幸せだ!」


 やっぱりカツゼツいいなぁ。全部ちゃんと綺麗に聞こえるよ!

 いつもの優しさはどっかに飛んでったけど、それでも歌詞に優しさがにじみ出ている。


 ラップのところは個人で作詞したんだよね。だから私が『天使の歌声胡桃さま』って言われちゃったんだけど……照れるなぁ……えへへ。


「さぁさぁ盛り上がって来てるか?

 これから俺らの過去話す!

 東北出身茨城在住 ドラムの神様大和デス!

 1次選考では2位通過で正直無理だと思ったけどな

 運いいことに3位通過 これからは全く違えぞ

 俺ら1位突破目指すというか必ずだ!」


 なんでこんなに早口なのに話せるわけ?

 もうわかんないよ~……。

 私も早口喋られれば良かったんだけど、無理だからサビだけ歌うことになったんだよね……。


「ここまで来たからには絶対優勝

 それが目標でここまで来たんだ

 君らも応援してくれるよなあ⁉

 まぁ自分の県の応援するだろ

 でもちょっとぐらい俺らにも目を向けてみろ!」


 ドラムの大和くんは歌いながらは難しいからってドラムを今やっていなかったんだけど、エレキギターのイキった感じでフォローできてる!

 陽ちゃんに感謝……! 技術えぐい!


「さぁ……俺らの真骨頂だ」


 大和くんがそう言って、私にバトンが渡る。

 よっし! かますぞー!!


「♪Next challenge! 止まらないぜ

  次の挑戦へ共に行こうぜ!

  ずっとずっと最後まで

  諦める選択肢は俺らにはない!」


 はぁっ!! 爽快!!


「皆さん、ありがとうございまーす!! これからもどんっどん盛り上がっていきましょう!!」


 間奏で、私は空を指さしてそう叫んだ。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「3次選考突破は……489点の花里学園です!! おめでとうございまーす!!」


 そう、大きな声が公園に轟いた時は……心臓が止まるかと思った。

 正直この曲さ、イキりすぎて生意気って思われないかなって考えてたんだよね。

 私たちは、抱き合って喜んだ。


 20分の1……たった1つの枠。

 それを私たちは――勝ち取った。


「花里学園のみんな! 俺たちの分まで頑張ってくれ!!」

「花里学園の演奏の時、ずぅっと鳥肌立ってました! 頑張って!!」


 他の参加学校からのそういう声ももらった。

 そう……これで私たちは、関東代表になったんだ。

 人が集まってていい学校が集まる東京や神奈川など、首都圏を倒して。


 分かった――君の分まで、頑張る。

 絶対に、優勝するんだ!!!

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