第27話 正常な人が1人しかいない!
県外にある、国立磯辺公園。
今日は3次選考当日だ。
「おはよ~」
「おはようございますっ!」
「おっはよー! いい朝だぜ~!」
「おはよ」
「おはようございますっ」
「おはようございま~す」
「あー……おはようございます……」
それぞれ違う挨拶をする、私、彩里、七羽、莉乃、智紀、優弥、イケダリフォートップ。
今日は玲奈先輩以外、全員勢ぞろいだ。
玲奈先輩は、同じ日に開催される、北原学園出場の東海大会を見に行くらしい。
6人で向かい合って座ることができるグリーン車をつばっさーが予約してくれたんだ!
誰がどの座席はまだ決まってないけど、6人と4人で座れる。
男子と女子で分かれて座るのかな……?
と思ったら。
「男子だけだと色々イザコザが起こりそうだから、男女混合にします!」
そうなって、駅への徒歩の道のりの間で席を決めることになった。
どんな居酒屋? が起こるの?
「じゃあまずはグッパーしよっか。それで前側と後ろ側決めよう」
グッパーね……よし!
「せーの!!」
「「「「「「「「「「グッパージャス!」」」」」」」」」」
グーが……大和くん、つばっさー、優弥、七羽、莉乃。
パーが……陽ちゃん、かずかず、智紀、彩里、私だ。
「1回で綺麗に分かれたね。じゃあグーとパーで1から5の番号決めて。左側が1、右側が5。自分の座りたい席を選んでね。6人席は左側だよ」
つばっさーから全て聞いているのか、かずかずが仕切っている。
つばっさーがムスっとしてるの、気のせい?
まぁそれは置いといて、とりあえずグーとパーで分かれる。
「はいっ。私窓側がいい!」
グー側に聞こえないように、小声で言った。
「俺も窓側がいい! そんでもってちょっとわちゃわちゃしたいから6人席の1番がいい!」
「じゃあ私5番がいいですっ」
「ア……ジャアワタシハ2バンニシヨウカナ……」
「あれ? 彩里、私の隣じゃ……フグッ」
なぜか私の隣にしてくれなかったー!
言い方は不自然だし、口も塞がれたし……。
まぁ、陽ちゃんと隣がいいのも当然かな?
推しだし。
「……じゃあ俺は3番にするよ」
いつもの笑顔でそう言ったかずかず。
「……じゃあ俺は4番ってことですか……」
智紀は、なぜか彩里を睨んでそう言った。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「えぇぇぇ……」
グー側の席はグリーン車に乗るまで公表しませーん!!
って言ってたから楽しみにしてたんだけど……。
左は智紀。これは分かってたこと。なんか悔しさと嬉しさと喜びが混じった顔をしている。
目の前はブッチョー面の大和くん。目を寄せてスマホをいじっている。
斜め左前は、にっこにこの優弥。優弥だけは表情が正常だ。
「ね、ねぇねぇ。ポテトティップス食べよ?」
「1枚ちょーだい」
「……」
なぜかポテティを1枚だけねだる大和くんと、無言で袋に手を突っ込んで5枚同時に食べる智紀。
「僕も食べるー! 3枚ちょうだい!」
「……は、はーい!」
ああ、一人正常……優弥、本当にありがとう……!!
ホント、調子狂っちゃうなぁ……。
「先輩、のど飴いります? 確か曲の間にちょっと大声で喋るんですよね?」
「そうそう! 欲しかったんだよ~。マジせんきゅー!」
「ポテティいりますか?」
「あ、ありがとう。これ、めっちゃ好きなんだ……!」
左側はわちゃわちゃ盛り上がっている。
私もあっちに行きたい……。
その後も会話をココナッツも、優弥以外はほぼ反応せずに断念。
※『ココナッツ』じゃなくて『
スマホをいじったり、外を見たりして、国立磯辺公園の最寄りの磯辺駅まであと15分。
相変わらず左側はずっと盛り上がっていて、彩里、七羽、莉乃の推しへのハートも少しずつ大きくなって話しかけている声が聞こえてくる。
そっちに耳を澄ましていると……。
「……あ」
なぜか、智紀と大和くんが寝ていた。
「あはは……」
眉毛を下げて笑う優弥。
優弥は分かってたのかな?
「優弥、ごめんね……全然話せなくて」
やることもないし、話しかけてみた。
「ううん。胡桃ちゃんのちょっと怒ってる表情見てるだけで楽しかったよ」
「え? 楽しい?」
「うん。この2人の寝顔も見れるしね」
大和くんの幼い寝顔を見て、お兄ちゃんみたいにふっと微笑む。
え、なんで?
「胡桃ちゃん」
「なに?」
優弥はこっちに視線を向けて、微笑む。
「演奏……楽しみにしてるよ! 絶対に突破してね、3次選考」
「――うん!!」
きっと、きっと、上手くいく。
私たちが全力で考えた構成と歌詞が。
最っっっっっっっっっっっっっっっっっ高にイキってやるんだからー!!
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