第1話 勧誘されてもいきませんっ!!
「じゃ、とりあえず入るか」
そう言ってイケメンさんが私を招いたのは、音符部屋。
※おんぼろ部屋だよ!
どうやらここが部室らしい。
「えっと……私、体験するなんて一言も……?」
そんな私の声も無視され、虚しく廊下に消えていく。
頭がいいわけでもないし、運動もできない。
まぁ、美術とか音楽にはギリギリ自信持てるけどね~!
「まぁいいだろ、どうせこの後暇そうだし」
どうせって……!
ひどいひどい、私はお昼ご飯食べないと死んじゃうんだって!!
ガラララッ
言われるがままに、部室に入ってしまった。
「おー、おかえり大和。早くね? ってか昼飯持ってね―じゃん」
中には、イケメンさんに負けない他のイケメンさんが3人。
日焼けイケメンさんと、クールイケメンさんと、優しイケメンさんだ!!
「あれ、その子新入部員?」
「うーん、そうなんじゃね?」
「うおおおおーーーー!!!」
たくさんのイケメンさんの中の、日焼けイケメンさんが金切り声の歓声を上げる。
※金切り声は主に女性の高い声に使う言葉だよ!
拍手に包まれ、どんどんいたたまれない気持ちになってくる。
耐え切られなくなった私は、精いっぱいに叫んだ!
「新入部員になんて、なってませんっ!!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ⁉⁉」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「えーっと……中等部一年A組の
言っていることと行動とが裏表だけど、とりあえず自己紹介した。
※「裏表」じゃなくて「裏腹」だよ!
「俺らも自己紹介するか。俺は中等部二年D組の
一番最初に声をかけてきた先輩が、そう言った。
「大和ってホントにドラム上手いんだよ! 俺の方がリズム感いいはずなのになぁ~」
と日焼け先輩が言う。
「リズム感いいなら俺より上手いはずだろ」
という大和先輩の厳しい言葉を無視して、日焼け先輩が話し始める。
「えー、そんで俺が中等部三年C組の
「
と、大和先輩が教えてくれた。
「俺は運動神経良すぎてイケメンだからさ、特に野球部とかバスケ部とかにも助っ人で借り出されるんだよな~!」
は、はぁ。
自分でよく言えるなとは思うけど、陽太先輩は日に焼けてて、筋肉もついてて、身長も大きいから、自分で言ってても違和感はない。
「……僕は
「つばっさーは幼稚園から学園に居て、十二年間キーボードやってるんだよなー! 俺も負けたくねぇ!」
花里学園は、幼稚園から高校まである学園。
私は中学受験で入学したんだ。
陽太先輩の説明に、なるほどーと納得するけど、負けず嫌いな陽太先輩は、大和先輩に「陽ちゃんは中学からなんだからどうやっても勝てないって」とたしなめられている。
「それで、翼と同級生、高等部1年B組の
「よ、よろしくお願いします」
と、百航先輩の自己紹介に、未だ翼先輩に掴みかかる勢いで叫んでいる陽太先輩を横目に見ながら、返事をする。
でも、自己紹介を耳にしていたら、気付いてしまった。
「あのー……ボーカルさんは?」
普通バンド的なやつってボーカルさんいるよね?
でも、ここはギターにドラム、ベースとキーボードしかいない。
「えー⁉ ボーカルぅ⁉ いないぜそんなの‼」
陽太先輩が翼先輩に掴みかかろうとしながら叫んだ。
天国耳だ。
※地獄耳だよ!
すると、大和先輩は私の座っていたソファの隣に座った。
「だからお願いなんだ。胡桃もボーカルとして、軽音楽部に入ってくれないか?」
「い、いやいや何言ってるんですか? 私、歌下手ですよ?」
「俺が教えてやる」
真剣な表情で言う大和先輩。
そんな簡単に言わないでよー!!
「やりませんって! 絶対に!!」
そう言った途端、
ぐぅぅぅぅ……
と再び腹の虫が鳴った。
「ハハッ、腹減ってたのかよ」
「そうだよ大和! お前昼飯買ってくるって話だったろ! 早く行け!」
陽太先輩が鬼の形相で、部室から大和先輩を追い出す。
「わぁぁぁ~!!」
階段を転げ落ちている大和先輩の声が、静かすぎる階段に響き渡る。
※もし転げ落ちてたら骨折案件だよ!
「あ、胡桃ちゃん。ココ、昇降口とは反対側の部室棟ね? 1階に降りて右に曲がってそのあとずっと歩けば昇降口があるよ。あと、俺らは君を下の名前で呼ぶから」
「ハ、ハイ」
そうだ、私は昇降口を目指してたんだ!
今更気づく。
「あと、大和のことは大和くん、陽太は陽ちゃん、翼のことはつばっさー、俺のことはかずかずって呼んでね。これから関わり深くなるから」
「は、はい……?」
これから関わり深くなる?
だから入部しないんだって!!
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