episode #66
飛行機が上空を通り過ぎて行く。小さくなるそれを見計らってボロ布の塊がゆっくり動き出した。その隙間からは恐ろしく整った青年の顔が覗いている。ボロ布で覆っているが、足元に見える両脇の車輪からそれが車椅子であると分かる。瓦礫の山を車椅子が難なく進んでいく。良く見ると車椅子は少し浮いているのだ。青年は小さく息を漏らして、膝の上に乗った白い物を撫でた。そしてそのまま恭しく持ち上げた。それは頭蓋骨だった。頭や頬の一部にはまだ肉が残っている。風に乗った砂粒が一つ、頬の肉にくっついた。それは、肉に溶けるように馴染んだのだった。青年はその骨の歯に優しく唇を寄せた。
「僕が必ず戻してあげるから、もう少し待っててね」
青年、アーサーの目が暗く湿度を帯びた光を放った。唇の端を歪めるように笑って、アーサーは頭蓋骨に話しかけた。
「美鈴、僕が側にいるよ。いつまでも、ね」
アストニッシュ・ベル〜泣き虫女子高生はマルチバース転生でマッチョイケメンヒーローになる〜 晴川祈凜 @harekawa_inori
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