episode #41
デッドマンの後を追い、辿り着いたのはトレーニングルームだった。様々なトレーニング用の器具が置いてある間を擦り抜けて、デッドマンは奥にある扉の前で止まった。
「入れ」
扉を開け静かにデッドマンが言う。
「あの、ここって?」
美鈴が聞いてもデッドマンは何も答えず扉を閉めた。中は真っ暗だった。訳も分からず美鈴が一歩前に出た。その瞬間、部屋が突然明るくなった。
「な、何?」
その光景は無だった。何処を見ても真っ白で、天地の境目も分からない。
「何、ここ……」
美鈴が呆然と辺りを見回す。すると、突然耳の中に音声が響いた。
『ようこそ。美鈴様。本日のトレーニング内容を選択してください』
機械音声が淡々と告げる。トレーニング? 何の事だろう。
「あ、あの、トレーニングって何をすれば?」
美鈴が問うと、暫くの沈黙の後、機械音声がまた喋り出した。
『でしたら、チュートリアルをオススメ致します。如何しますか?』
「は、はい。それでお願いします」
美鈴が答えると、真っ白だった空間が学校の教室に変わった。美鈴がどうしようかと躊躇っていると、
『お座りください』
と、音声が流れた。美鈴は手近な席に座った。
『美鈴様、トレーニングルームにようこそお越しくださいました。ヒーローの歴史を見ますか?』
「それは知ってるので、大丈夫です」
美鈴がそう言うと、また沈黙が訪れた。最初は戸惑ったが、何となく要領が分かってきた。
『これからトレーニングの説明を致します。ここではヒーローの皆様に実践と同じ臨場感でトレーニングを行って頂く事が出来ます。まずは美鈴様の能力を測定します』
そう聞こえた瞬間、教室は泡のように無くなり、美鈴は慌てて立ち上がった。辺りの景色は道場に様変わりした。その真ん中にはアンドロイドが立っている。白い道着を着て、真っ直ぐ立っている。
『攻撃してください』
音声が促す。美鈴はアーサーの教え通り、体に力が溜まるのを感じ、それを右手から放出する。美鈴の手から出たのは雪だった。強い風と共に吹き付けた雪がアンドロイドを白く染めた。やや間があって、
『こちらから攻撃します。防御してください』
と、音声が言った。その言葉に呼応するように、ギギッと音を立てて、アンドロイドが動き出した。体を振って雪を落とすと、構えを取った。
「防御なんて……」
美鈴は立ち尽くした。今まで防御は勝手に起こっている。意識してやるなんて分からない。だが、そんな美鈴にお構いなしにアンドロイドがギシッと鳴った。瞬間、鋭い風を切る音と共にアンドロイドが眼前に迫った。
「キャアア!」
美鈴は叫ぶと、頭を抱えて蹲った。その耳にバチンッと言う音が響いた。数秒の後、ゆっくりと顔を上げると、アンドロイドは煙を上げながら倒れていた。美鈴はアンドロイドに近づいた。道着の胸元が丸く焦げ、そこから煙が上がっていたのだ。
「これって、私がやったのよ、ね?」
『そうです』
美鈴の呟きに音声が答える。独り言にも律儀に反応を返すのが、なんだか申し訳無く感じた。耳の中にカロカロカロ……と読み込みの音が聞こえる。
『測定終了しました。美鈴様は意識して能力を発動させる事に問題があるようです。また、攻撃をする時に躊躇してしまう所があります』
確かにその通りだ。美鈴ははい、と小さく答えた。
『まずは自身の力を知る所から始めましょう』
また景色が変わり、広い公園になった。目の前にはカカシが並んでいる。
『では、左から順に参ります』
そう言われて、美鈴は左端のカカシの前に立った。
『このカカシだけを太陽で照らしてください』
「はい」
美鈴は返事をすると、カカシに手を翳した。太陽を思い浮かべて力を溜め解放する。だが、出てきたのは風だった。柔らかい風がカカシに吹き付けた。
「あ、アレ?」
美鈴は首を傾げもう一度挑戦した。今度はカカシの頭上からパラパラと雨が降ってきた。
『やはり美鈴様は意識して能力を発動させる事が苦手なようです』
淡々と言う音声に美鈴は頬を膨らませた。
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