episode #34

 気が付くと美鈴は瓦礫の中にいた。辺りを見回す。それはさっきまで見ていた光景だ。

「どうしてまたここに? だってこれは、夢……あれ? 夢だわ。夢ってはっきり分かる」

 美鈴の頭にはすぐに明晰夢と言う単語が浮かんでいた。夢の中で自分が夢を見ていると気付く事。初めての体験に美鈴の心にはワクワクとした感情が芽生えている。ならば、こんな恐ろしい場所からは一刻も早く出てしまいたい。そこで美鈴はどうしたらここから出れるのか分からない事に気が付いた。どうしよう、と辺りを見回したが何もヒントになる物はなさそうだ。仕方なく美鈴は目を瞑って、取り敢えず頭にHOJビルの談話室を思い浮かべた。ここに行きたい、そんな事を念じながらゆっくり目を開けてみる。だが、景色は変わらなかった。もう一度辺りを見回す。そういえば、さっきから誰にも会わない。それどころか破壊音や悲鳴の類も何も聞こえないのだ。これはどういった事なんだろう。何だが不気味な感じもする。ならば、いっそ目覚めてしまおうか。だが、醒めろ醒めろと念じてもやはり何も変わらなかった。美鈴は口を尖らせたが、こうしていても仕方ない。意を決して美鈴は歩き出した。

 不気味な程に静まり返った廃墟の群れを当て所無く歩く。そしてそこにあったであろう、人々の日常を想った。

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