第7話 到着、魔王学園(1)
(まさか、自分が乗るハメになるとは……)
俺は今、白亜色の馬車の中に
ロココ調の内装といえばいいのだろうか?
明るい色彩の中、優雅な曲線を描いた装飾は、俺の隣に座る少女に
馬車には魔法が掛かっているためか、ほとんど
これと同じ黒塗りのキャビンがあるのなら、俺の家にも一台欲しいくらいだ。
アスファルトの道など存在しないため、通常の馬車は
この馬車なら移動中の読書にも集中できるだろう。
助けた美少女『オロール』からは学園までの護衛をお願いされたのだが――
(俺がキャビンの中にいては、意味がないような……)
恐らく、護衛は建前で「俺と昔話でもしたい」という事らしい。
どうせ目的地は同じである。
俺としては問題ない。
そのため、彼女の勢いに押された事も理由だったが、二つ返事で俺は了承する。
素直に喜ぶオロールに対し、彼女の侍女は納得がいかない様子だった。
嫁入り前の貴族の娘が、下位貴族と親しくするのが気に入らないのだろう。
オロールの言動はどう見ても「次期魔王の座を狙っている」とは思えない。
それでも、この時期に魔王学園へ来た。
理由を推測するのは、それ程、難しい話ではない。
「オロールの
彼女は家から、そんな命令を受けているのだろう。
魔王に取り入るのが目的だ――と考えれば納得できる。
俺と似た様な状況らしい。
まあ、彼女のような美人を手に入れる事が出来るのなら――
(魔王になるのも悪くはない……)
俺でさえ、そんな
つまり、オロールは「テッラム家の秘密兵器」といった所だ。
彼女の侍女が目を
世が世なら『亡国の美女』として、敵国に送り込むことも出来た。
それ
彼女に
魔王候補たちの実力が分からない今、不用意に敵を増やすのは賢い選択ではない。
(オロールとは「ただの幼馴染み」という距離感を心掛けよう……)
そんなワケで、あまり
俺は無難な会話を選択するように
(まずは馬車を
「
馬車は魔法に守られていて、
この分なら、ドラゴンの攻撃も大丈夫だっただろう。ブラックドラゴン自体も同程度か、それ以上の魔力を
オロールが防御魔法でも使えば、対処可能だったろう。
俺が、そんな
「そんな事はありません。ドラゴンに立ち向かうなんて……」
とても
同時にキラキラとした瞳で見詰めてきた。
トドメとばかりに、
「
とまで言われてしまう。
社交辞令だろうが――俺としては――ただただ
今は馬車の屋根の上にいるであろう
耳がいいので、会話は
もし、隣に
「ワフフフフ! ご主人をもっと
などと言っていそうだ。今は荷物持ちの他、警護も兼ねているので、俺が『カレー魔法』で創り出したニンジンを持たせている。
再びドラゴンが
(おやつ感覚で食べていそうだな……)
毛並みは白いので、食べている
もう少し、命令に忠実であって欲しいモノだ。
まあ、パールにも同様にニンジンを渡してある。
(そっちは大丈夫だろう……)
今は女騎士と一緒に御者台にいるハズだ。
こっちは完全に、俺たちの会話が聞こえていたらしい。
(こういう反応をされると余計に腹が立つのは
パールとしては、
面白い事になってきた――と思ったようだ。
(これは母に報告されるな……)
そう直感したが、オロールの手前、俺が取り乱すワケにもいかない。
それに彼としては、主人である俺が
離れていても、機嫌のいい事が分かる。
「フハハハハ! カリオ様を
と上から目線の対応をしそうだ。
まずは、ラッシーとパールの2人が、バカな態度を取らなかった事に
俺は自分の平常心を保つためにも、会話を変える事にした。
「そこまで
「それよりも、オロールが美人になっていて
最初は誰か分からなかったよ――と苦笑を
「はい! カリオくんの野菜のお
とオロール。
「これは結婚を申し込まれる日も近いですね♡」
などと
それよりも『野菜』のくだりの意味が分からなかった。
(いったい、
これは知らない内に「また、
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