第13話 煉獄魔法VSカレー魔法(1)
「プリン王は死んだ――」
そう言って――ガクッ!――と
だが、エレノア嬢はそれを手で制した。同時に、
「私にここまでのダメージを与えたのは……」
貴様が初めてだ!――と言われてしまう。
まあ、
俺へ向けられた蒼い瞳には憎悪の炎が宿っている。
どうやら『プリンカレー』は、お気に召さなかったらしい。
スパイシーなカレーに甘味がプラスされ、クリーミーな舌触りを楽しむこと出来る一品だ。また、カラメルソースの苦み。
これによってコクが加わり、味の奥行きが増すのだ。
隠し味として、インスタントコーヒーを加えるのと同じ効果だろう。
よりカレーのコクを強め、味を引き立ててくれる。
できればプリンは、市販のチルドカップがいい。
プリンに醤油を掛けるとウニになる――という話は有名だが『プリンカレー』はそれとは逆で、カレーに対し、デザートとしての可能性を示してくれる。
『カレー魔法』を
「
とエレノア嬢。「見るのも
魔力で創り出したモノなので、消すのは一瞬だが――
(折角、出したのに
「
そんな俺の
俺は周囲を見回した後、ラッシーを手招きして『プリンカレー』を手渡す。
えっ⁉ 食べてもいいの?――と
尻尾をパタパタと
「美味しいです♪ わん♡ 美味しいです♪ わん♡」
と言ってラッシーは、あっという間にカレーを平らげる。
(見たか、これが『プリンカレー』の実力だ!)
しかし、エレノア嬢はまるで汚物を見るかのような視線をこちらへと向けてくる。
同時に
グッと
「決闘だ!」
そう言って、魔法陣の方へ――バッ!――と手を伸ばす。
どうやら、戦いは
パールとラッシーが言っていた通りになってしまった。
この後、学園に通う事になる。であるのなら、嫌でも顔を合わせるハズだ。
上級生に目を付けられて過ごすよりも、今ここで決着をつけた方がいい。
(確か『アルドル家』の血統魔法は炎系統だったな……)
火属性の魔法自体は珍しくないのだが、血統魔法の場合、それにオプションが付く。『消えない炎』や『獣の姿をした自立型の炎』など、想像には
俺はオロールへ下がっているように伝え、パールとラッシーに彼女の警護を頼んだ。
「すたこらさっさ~なのです! わん♪」
とラッシー。いまいち信用に欠ける返答だが――
(まあいい……)
エレノア嬢の取り巻きたちも同じように魔法陣から離れた。
(地面も所々、
街の景観が台無しである。まあ、俺が戦えばカレー
「カードは持っているな」
とエレノア嬢。俺は門に
スタンプラリーのように
彼女の取り巻きの一人が砂時計を用意したので、あの砂が落ち切るまで、魔法陣の中に留まればいいのだろう。自動的に魔力の
「安心するがいい。中からの攻撃は、外に届かない……」
今の所はな――とエレノア嬢。
まるで本気で攻撃すると「周辺にも被害が及ぶ」と言っているようだ。
確かに魔法陣の周囲には結界が張られている。
炎による熱の余波は防げないようだが――
(この分なら、多少は本気を出しても大丈夫かな……)
「頑張るです~! わん♪」
とラッシー。
目が合うとオロールは微笑み、軽く手を振ってくれた。
パールも冷静なようなので、いつも通りである。
3人とも「俺が勝つ」と思っているらしい。
一方でエレノア嬢の取り巻きたちは不安そうにしていた。
(ああ、そうか……)
『スタティム家』の血統魔法は死の系統である。
物理的な攻撃や炎の直撃は防げても、死を防げるのかは未知数なのだろう。
「俺が使うのは『即死魔法』じゃない。『カレー魔法』だ」
そう言って〈ファイアボール〉ならぬ〈カレーボール〉を出し、周囲にアピールする。「意味が分からないよ」と全員が、そんな顔をしていた。
(ビーフカレーではなく、チキンカレーの方が良かったのだろうか?)
「バカにしているのか?」
とはエレノア嬢。完全に「俺がふざけている」と思っている顔だ。
「いや、俺はコレしか使えないんだ!」
ホントなんだ!――とボディランゲージと合わせて説明すると、
もしかすると半信半疑なのかもしれないが、俺が手の内を明かした事に対して、自分が明かさないのは「
一旦、怒りを
「私の魔法は『
と説明してくれた。もしかして――
(『プリン』さえ与えていれば、実は『良い人』なのかもしれないな……)
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