第30話



 真っ青な海の匂いが、ハーバー通りを抜けてやって来る。



 片道50分の距離。


 三宮駅を通り過ぎて、線路沿いの歩道橋の下を潜り抜けた。


 県道30号線沿いには、古びたビルが立ち並ぶ。


 手入れの行き届いた街路樹に、山手迎賓館の石造りの建物。


 片側3車線の道には、「バス優先」の黄色い塗装が通りの向こうまで続いている。


 いつ見てもシャッターが閉まってるダンススクールの教室は、すっかり自転車だらけの無法地帯だ。



 もうすっかり見慣れてしまった。


 中学の頃は、この辺は全く通らなかった。


 三宮に来ることは度々あった。


 ただ、どっちかっていうとハーバーランドとか、海側のショッピングモールとかに行くことが多くて、自転車で街中を走り回ることはあんまなかった。


 ずっと地元で暮らしてた。


 須磨海岸の砂浜の景色と、板宿商店街の昭和臭い街並み。


 中央区の賑わいに比べたら、須磨区は嘘みたいに何もない。


 何もないって言うと語弊があるか…


 まあ、それぐらい田舎ってことで。







 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る