第29話



 街が動いている音が、そこかしこに響いていた。


 学校に行く道すがら、通り過ぎる街の風景が、雲間から差す陽射しの眩しさの中に、少しずつ朝の静けさを融かしていた。


 中央幹線を横断する朝焼けの日差しは、錆びれたガードレールの鉄細工を照らしながら、街の隙間の中に落ちる影の質感を濃く、鮮やかにしていった。

 


 何も感じなくなったって言えば、それは嘘になるかもしれない。


 だけど子供の頃に比べたら、今はもう大して…って感じ?


 昔はそんなことなかったんだ。


 ふとした時に、よく「明日」についてを考える自分がいた。


 人は死んだらどこに行くんだろうとか、宇宙はどこまで続いてるんだろうとか、そんなどうでもいいことばかり。



 不安だったんだ。



 なんでそう思ったのかはわからないけど、ただ、なんとなく。


 心のどこかでは、ずっと雨が降る予感がしていた。



 多分、——そう、ずっと、明日は来ないかもしれないって思ってた。



 わからなかったんだ。



 難しいことは考えたくなかった。


 なにもなければそれでいいって思うようにしてた。


 カーテンを閉めて、街の音が聞こえなくなるくらいにベッドの上にうずくまって。



 いつからだったかな?



 いつからか、そんな感情にも悩まされなくなった。


 いつの間にか、外に出たいって思うようになっていた。


 雨が降っても、傘を差せばいいって思うようになっていた。



 

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