第8話
「過ぎたもんはもうしょうがない。こうなったら闘ってやろうやん」
「…闘うって言ったって」
「あんたがそんな顔してどうすんねん」
「そりゃこんな顔にもなるやろ…」
「情けな」
「…なあ、別の病院に行ってみんか??もしかしたら、診断が間違っとるかもしれんし…」
「市内で一番でかい病院なのにか?」
「でかかろーが小さかろうが関係ないやろ。俺やって昔ヤブ医者に引っかかったことあるし」
「あのオンボロ病院のことか?残念やけど、それとは話が違うで」
「せやけど…」
どうしても信じられなかった。
先生の言葉を疑うわけじゃなかった。
心のどこかではわかっていた。
だけどそれ以上に、整理できない気持ちがあった。
全部嘘だと思いたかった。
それは、今もだ。
「あんたいつも私に言うとったやろ。マウンドで困っても、逃げる場所なんてない。ミットを構えるから向かってこい、って」
「ああ?」
「困った時はストレート勝負。あんたが教えてくれたんやで?逃げずに、立ち向かうことを」
彼女は海を向いたまま、そう言った。
後ろ髪が靡いていた。
大人になってから伸びた、少しだけクセのある茶色い髪。
透き通ったうなじの白い肌が、持ち上がった髪の下に見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます