第16話 0:03
私とルースヴェンさんを乗せた馬車は病院の屋上に到着。
もうすぐ深夜十二時。病院は真っ暗で、入院患者と夜勤の看護師しかいないはず。
それでもまだ警官もいるかもしれないので、ここは慎重にと、ルースヴェンさんがまた霧になって、病院内を偵察してきてくれました。
「どうやら警官は帰ったようです」
こうして屋上に戻ってきたルースヴェンさんと私は、見回りの看護師に見つからないように医院長室を目指し何事もなく到着。
部屋にこっそりと入った私とルースヴェンさんは部屋の灯りをつけずに離婚届を探す事に。私はスマホの光を頼りにしますが、ルースヴェンさんは暗闇でも問題なく見えるらしいです。
こうして二人して部屋中のありとあらゆる所を探したんですが……
しかし見当たりません!
「まさか持ち歩いてる……?」
「エレンさん。本当にそうかもしれませんよ。いつでもエレンさんに書いてもらう為に」
「え? じゃあまたマンション……?」
ええええええええ~~~~~~っっ! またマンションに戻らないといけないの~~~~~~~~~っ! もうシンドい~~~~~~~~~~っっ!
そんな事を考えていると、ルースヴェンさんが部屋のソファに座り込んで動かなくなりました。
「あれ? どうしたんです? ルースヴェンさん?」
「……そろそろ限界のようです」
「何がです?」
「血です…………」
「血……?」
ゲゲゲっっ! 忘れてた! そういえばこの世界だと数時間で血の枯渇が来るって言ってた!
「ル! ルースヴェンさん! 少し我慢できますか? 私、道具を取ってきます。だからここにいてっっ! いいですね?」
「はい……お願いします……」
スマホの光に照らされているルースヴェンさんの表情はマスクをしていても弱っているのが分かりました。
私はルースヴェンさんの心配をしつつ、ナースステーションへ。
一人で暗闇の病院を歩くのはとても久しぶり。昔は私も看護師だったから、夜勤の時はライトを持って見回りをよくしたものですが、そんなの十数年してませんっっ。
しかも今回は見回りの看護師に見つかる訳にはいかないから、スマホの灯りもつけれません。
病院内の非常灯の灯りだけを頼りに、コッソリコッソリと進みます。
さっきまで吸血鬼といっしょにいたのに、今ここで歩いてる方がよっぽど怖いのは何で?
途中、見回りの看護師を見かけましたが、何とか見つからずにすみ、ようやくナースステーションに到着。
ここは灯りがあるので怖くはないんですが、速やかに採血の道具一式を持って行かなければなりません。
どこだっけどこだっけ……ここもずいぶん久しぶりだから、全然覚えてないわ……え~っと……
「誰?」
ゲゲゲっっ! 見つかったっっ!
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