第11話 22:02

 私が屋上で泣き始めてどのくらいの時間が経ったでしょう? 私は少しスッキリする事ができました。


 するとルースヴェンさんはそれを察してくれたようで、


「……こういう時、今の人は何をするのですか?」


 と、聞いてきてくれました。私は少し考えたのですが、その時、


 ぐるるるるるる~っっ。


 恥ずかしいレベルのお腹の音が!


 私は顔を真っ赤にしましたが、ルースヴェンさんは私を見て笑顔になりました。


「何か食事でもしましょうか?」


「そ、そうですねっっ」


 もう恥ずかしいったらありゃしないっっ!


 でもこの人は何でも受け入れてくれる。そんな度量を持っている。現に今この人は笑いながら、私の心配をしてくれている。


 私はこの人の優しさにふれて、何でベリアルと安易にあんな【ルースヴェンさんとセブリーヌをくっつける】なんて約束をしちゃったんだろう、と、少し嫉妬に近い後悔のようなものを感じていました。


「どうしましょう? エレンさんの行きたい場所へ移動しますが?」


「は、はい。え……でもどこへ行けば……あ、マンション! マンションへ一度戻りたいです! あそこなら冷凍食品もあるし!」


「冷凍食品?」


「着いたら見せてあげます♪」


 こうして私とルースヴェンさんは馬車に乗り込み、自宅マンションへ向かいました。


 マンションの前に馬車は到着。ここにも何と警官が。


「わ! け、警察の人がまたいる……」


 私がルースヴェンさんに話しかけたのですが、ルースヴェンさんはマンションを見て明らかに顔をこわばらせていたのです。


「ご自宅は……ここですか?」


「? え? はい。ここですけど……」


 ルースヴェンさんは少し言葉を失っている様子。

 明らかに動揺しているルースヴェンさんを見て、私は最初、意味が分かりませんでした。

 が、すぐに察したのです。


 あれ? 待って? よくよく考えてみるとおかしいわ? そもそも何でルースヴェンさんの馬車はあの時ここに来てたのかしら? え? セブリーヌのマンションここじゃないのに。近所でもないのにっ。あれ? あれあれ?


 私の頭の中は混乱しまくりです。

 しかしその謎はすぐに解けました。


 マンションの前にグスタフとセブリーヌが腕を組んで現れたのです。


 私は唖然としました。


 こんな分かりやすく不倫現場を見せてくれるの? 絵に描いたような、ウソみたいな不倫現場! まあベッドに入ってないからまだマシだけど……でもそんな……グスタフは不倫の一つや二つはしてるかな~って思ってたけど、相手がセブリーヌだったなんて、全く思わなかった……


 グスタフとセブリーヌはマンションを見張っている警官に挨拶すると、軽くキスをして、マンション内へ消えていきました。


 もう私は打ちひしがれて、ボロボロです……


 横にいたルースヴェンさんも、私に声をかけづらいのか、黙っています。

 そこに一人の警官がこちらへ向かってきました。


「おい! そこの馬車、いつまで停まっているんだ? ここは駐車禁止だぞ!」


 その言葉を受けて、


「行きましょう」


 ルースヴェンさんは御者さんに声をかけました。


 そして馬車はまた走り始めました。

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