第31話 もう……日が昇っちゃった……

 時刻は七時五分。


「もう……日が昇っちゃった……」


「……そのようですね」


 スプリンクラーのシャワーの中、ルースヴェンさんさんは冷静に答えました。

 でも内心は動揺しているはずです。

 だって左手を口元にそえてますもの。

 するとルースヴェンさんはその場でひざから崩れるように、座り込んでしまいました。


「ル、ルースヴェンさんっっ!」


「……先程、魔界との門が閉ざされて、魔界の力が私に届かなくなったのです……。魔界から遮断されてしまえば、私はこの程度の者なのですよ……。ところでテスラ……いくつか頼みたい事があるのですが……」


「うむ、今日はもう無理するな。ここで休むがいい。棺桶ならある。あいにくおまえの城の土はないがな」


 ルースヴェンさんはもう立つ事も出来なさそう。つかさずテスラさんとエドゥアルトが両肩を支えました。

 それより土ってなんだっけ?


「それにここには食料になる血なら、山ほどある。安心しなさい」


「ありがとうございます。テスラ……しかし、今日のところはもう横になった方がよさそうです」


「うむ。分かった」


 するとすぐにエドゥアルトが立ち上がりました。


「すぐに棺桶、用意するっスからねっっ」


 勝手の分からない私とセブリーヌは、見守るしかありません。

 エドゥアルトは、一瞬のうちに部屋から出ると、あっという間に棺桶を持ってきました。


「ルースヴェン。ここに入るっス」

「ありがとうございます」


 こうしてルースヴェンさんは棺桶に入りました。

 すると受付からテスラさんのスマホに連絡が。


「ええ? ……そうか。ではそちらも棺桶で保護しなさい」


「どうしたんですか?」


「……うむ。彼……ルースヴェン卿の馬車は、ここを出発しなかったらしい。ここの玄関で倒れてしまったそうだ」


「ええ~~~~~~~~~~っっ!」


 テスラさんとエドゥアルトはまた目の前から一瞬で消え去りました。

 部屋に残された私とセブリーヌは、ルースヴェンさんの棺桶に寄り添いました。


「ル、ルースヴェンさん……」


「エレンさん……これで、私たちは夫婦です。指輪も……そうだ、これを……」


 ルースヴェンさんは震える手で自分の右手の中指にはめていた指輪を外すと、私の左手を持って、薬指にその指輪をはめてくれました。

 当然ですが、ブカブカです。

 でも心の中は、結ばれたという実感と喜びでいっぱいになりました。


「……サイズは合っていませんが……私の元へ来てくれてありがとう……」


「こちらこそ……」


 私はルースヴェンさんにキスをすると、ルースヴェンさんは笑みを浮かべて目を閉じて、動かなくなりました。


「ル、ルースヴェンさん?」


「エレン、寝ただけだよ。大丈夫だよっ。きっと」


 セブリーヌが横からハグしてくれました。

 すると私も何だか目の前が真っ白に~…………




 目を覚ますと、そこには元気になったルースヴェンさんの姿。


「昨日はエレンさんにかなり無理をさせてしまったようです。食事は取れますか?」


 私の手には点滴を入れる管が繋がっており、私は病人のように個室でベッドで横になっていました。

 よくよく考えてみれば、私は昨日夕方から何も口にしないまま、ルースヴェンさんに血を二回もあげて、そのまま朝を迎えたのです。夜型でもないのに。

 そりゃ倒れるってもんです。


「ルースヴェンさん……私たち、夫婦?」


「そうです、夫婦です。これからよろしくお願いします。さ、冷めないうちに」


 私の目の前には夜中に食べ損ねた『チキンのクリーム煮』が!


「ルースヴェンさん。私と二人の時はマスク取って♪ あーん♪」


「ふ。エレンさんは思ったより甘えん坊さんなんですねえ。…………は、は、はい、ああーーん、し、してく、ください」






 私はこうしてルースヴェンさんと結ばれました。

 ルースヴェンさんは自分のお城から昼間にこの施設の職員が持ってきてくれたそうで、それがないと身体が維持できないとの事でした。

 そして私とルースヴェンさんを一晩中載せてくれた馬車の御者さんとお馬さんも、その土のおかげで元気を取り戻していました。


 その後、私はこの施設の職員として働き始め、ルースヴェンさんは貴重なサンプルとしてテスラさんに重宝されました。

 驚いたのはセブリーヌ。あの後、永遠の美が欲しくて吸血鬼になってしまいました。そしてやはりこの施設で働いています。


 そして私たちは、これもテスラさんがお金を出してくれたおかげで、あのルースヴェン城を手に入れて、あの城に住む事ができるようになりました!


 でも時折り見せるルースヴェンさんの深刻な顔……


「国がどうなっているのか、心配なのです」


 ルースヴェンさんは魔界の自分の国が、ベリアルに攻め込まれている事をとても心配していました。

 そしてある日のこと。


「エレンさん。テスラの元で、魔術を習っていただけませんか?」


 そう言われました。私は驚きましたが、魔界へ行く日までに、ある程度の魔術を覚えておいた方がいいんだそうです。

 そこで私はテスラの元で魔術を習いました。「覚えが悪い……」と、愚痴られましたけどっっ。


 こんな感じで私たち夫婦は一年間、基本的には楽しく、そしてその日に備えての準備をしていました。


 そして一年後のハロウィンの夜がやって来たのです。


「エレンさん! さあ、魔界に帰りましょう!」


「は、はい~~~~っっ!」


「あ、間に合ったっスね!」

「よーし♪ 私たちも手伝うわよ~♪」


「ゲゲゲっっ! セブリーヌとエドゥアルト~~~~~~っっ!」


「では行きましょう! エレンさん!」


「は、はい~~~~~~~~~~っっ!」


 こうして私たち4人は、人間界のルースヴェン城から、魔界のルースヴェン城へ向かうのでした~~っっ!


 今年のハロウィンもロクな目にあう気しかしない~~~~~~~~~~~~っっ!


  ★★★★★★


 ここまで読んで頂いて、本当にありがとうございました!

 ここで作品は一旦終了となりますが、また続きを書くと思いますので、よろしければその時にお付き合い願えれば~~……と思っています。


 本当にこんなゆる~~い作品を読んで頂き、ありがとうございました!!

 感謝感謝です!!

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ハッピー・ハロウィン・ウエディングっ! 広田川ヒッチ @hicthhamamoto

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