ハッピー・ハロウィン・ウエディングっ！

第19話 ２:２０

　やっばい！　セブリーヌとくわえタバコのグスタフ、キリスト教の神父さんを何人も連れて来てる！　

　でも部屋の奥側には窓があるから最悪そこから脱出できるかもですが、ルースヴェンさんはどうするつもりなんでしょう？

「どう？　吸血鬼さん？　エレン？　これなら文句ないでしょ？　神父様たちだって何人も来てくれたんだから」

　セブリーヌの高飛車な話し方がムカつきます。

　でも今はムカついている場合じゃないっっ！

「ほら、あなたは仕事に戻りなさい！」

「え？　で、でもっっ」

「いいから行きなさいっっ！」

　セブリーヌの態度にビビりまくっているフランソワは、慌てて医院長室から離れて行っていましました。

　あ～……唯一の味方のフランソワが行っちゃった～……

　私は落胆してしまったのですが、ルースヴェンさんはとても落ち着いている様子。

　十字架が眩しいのか目を細めてはいますが、口元は微笑んでおり余裕を感じます。

　そして私を「部屋の奥へ」と手で合図して来たので、私はゆっくりと移動しました。

　やっぱり窓から逃げる作戦みたい。

「セブリーヌさん。それと旦那様。そしてここに集まって頂いた神父様……どうやらあなた方もホンモノの神父ではなさそうですが……まあ、いいでしょう。こんな私のために皆さまに集まって頂いて大変光栄です。しかし私はあなた方にやられる訳にはいきませんし、手荒な事はしたくない。できればそのまま立ち去って頂ければありがたく存じます」

　笑顔であいさつをして、しっかり神父さん達をニセモノと見破ったっぽいルースヴェンさんですが、よく見ると身体中から煙が少し上がっています。

　これはヤバいのでは……

「フフフ、吸血鬼さん。そんな丁寧なモノの言い方をしたって、私たちが立ち去る訳ないでしょ？　ね？　皆さん」

「そうです！　そうです！」

「化け物は退治しないと！」

　信じているのか操られているのか、私にはよく分かりませんでしたが、自称神父さん達はセブリーヌ同様、ここから引き下がる気はなさそう。

「どうしても私を退治したいと？」

「はい。これが私たち全員の見解です」

　セブリーヌはそう言いながら、背中から大型の水鉄砲を回して構えました。それと同時にくわえタバコのグスタフと神父さん達も水鉄砲を構えたのです。

　グスタフのくわえタバコの火は煌々と光っています。

「これだけの装備を準備してたから、こんなに遅くなっちゃったけど、間に合ってよかったですわ♪」

　セブリーヌはその言葉を言い終わると同時に、その水鉄砲を噴射しました。当然、中の水は聖水なはずっっ！

　しかしルースヴェンさんはニヤリと笑って一瞬にして大きな傘を開いてその水を受け止めました。

「あなた方に時間があったという事は私にも時間があったという事ですよ。セブリーヌさん」

「く～～～～っっ！　まだまだ～～～～っっ！！」

　セブリーヌをはじめ、グスタフや自称神父さん達はこれでもかと聖水をかけてきます！

　おかげで私にも水がかかって冷たいっっ！

「エレンさん！　窓から離れてっっ！」

　ルースヴェンさんが叫びました。

　私は何事？　と、思った次の瞬間！

　バシャーーーーーーーーーーーーーンッッ！

　ルースヴェンさんが傘を持っていない右手を窓に手を当てた瞬間に、窓ガラスが全て粉々に飛び散ったのですっっ！　粉々に散ったガラスの破片が部屋の内外に飛び散りました。

　私は怪我しないように身体を丸めました。

　その時、まるで猫が自分の子供を首根っこでくわえるように、私の上着の首根っこをルースヴェンさんが掴みました。

「窓から出します！」

「えっっ！」

　分かってはいましたけど、ここは四階！　落ちたら死んじゃいますけど～～～～っっ！

　そんな事を思ってる間に私はルースヴェンさんによって窓から外へポーンと放り投げられたのですっっ！

　これは思っても見なかった展開！

　ゲゲゲ～～～～～～～～～～っっ！　私、空中を飛んでますけど～～～～～～～～っっ！

　しかし空中へダイブした私の行く先には漆黒の馬車が！

　あのミイラ御者さんが馬車の扉を開けて、中から両手を出して「グググ」と私を受け止めてくれました！

　しかし私の勢いがちょっと凄かったようで、私をキャッチした御者さんと私は馬車の反対側の扉まで滑り込んでそのまま激突！　扉は開かずによかったんですけど、御者さんを挟んでしまいましたっっ。

　しかも聖水を浴びた私をナイスキャッチした事で、御者さんに水が飛び、煙があがってるっっ！

　御者さんはどうしていいか分からず大慌てっっ！

　私も慌てて馬車の中を探すと、何やらいろいろと用意されていました。その中にバスタオル発見！

「御者さん！　これこれっっ！」

　私は大慌てで、バスタオルで身体中の聖水を拭き始め、何とか大事には至りませんでしたっっ。

　あ～～っっ！　もうルースヴェンさんがそんな手荒な事をするなんて～～っっ！　すんごく怖かった～～～～～～～～っっ！　でも助かったけど～～～～～～～～～～っっ！

　これにはセブリーヌ達も驚いて、神父さんの中にはその場で腰を抜かした人まで現れました。

　馬車も空中で待機をして、次はルースヴェンさんの番！　なはずなのに、なぜか医院長室から出ようとしない！

「ルースヴェンさん！　早くっっ！」

　しかしルースヴェンさんは来ようとしません。

　しかも臨戦態勢なまま！

「まだ持って行かないといけない物があるんです」