第25話 フレディストーカーどもの出現

さらにそれに合わせたわけでもあるまいが今度は木立の向こう、周回する車道の方からこちらは大声で「プータ!」「プータロー!」「プータ!」と男、女、男の順で若い男女の罵る声がした。すでに耳タコになっていた件のストーカーども、偏執狂の親分の使い奴どもとすぐ知れた。暴走族あがり(もしくは現役?)の彼らは楽しむがごとく車で私を追いかけて来ては罵り、車中で私が寝込めばまたぞろエルム街のフレディをやらかすのだった。どこへ逃げても神出鬼没のように現れるのは霊視女というナビゲーターを備えているからである。彼のオウム真理教の、あるいは(文字通り)ヤクザの街頭宣伝カーのように、彼らのビクティムに摺り込みをするがごとく、何回でも「プータ」を連呼してみせる。こちらの神経をまいらせようとでも云うのだろうがそのしつこさに限りはなかった。こいつらに限らずいまの、いじめ世のトレンドなのだとも思う。とにかくそいつらがまたぞろ現れた。一番現れてほしくない、いま、この時に。

 私の顔色がくもり木立の向こうを気にするのを見て一葉もそちらを見やった。「これはしたり。わたくしのことばかり申しあげてしまい、あなたのことをお聞きするのを失念していました。都の花を読まれたとか…これは私の勘なのですが、ひょっとしてあなたも文芸か何かをなさるのではありませんか?やはり小説か、あるいは和歌?…か」と、私の心に感応してそこを探るように、私の顔をまじまじと見ながら、また小首を愛らしくかしげながらそう聞いてくれるのだった。悪ガキどもを気にする私の仕草を誤解してのことだったがしかしこの質問には驚かされた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る