第22話 (※中途ですがまた小説返歌)

「小説返歌」

売女めと罵らば罵りね烏の世されど遣(おこ)せよ寝屋と粥、汝が犠牲(にえ)ぞ


オレンジの皮むくごとくをみな実の余所衣(よそい)はがすはつひになからず

                           ―上二首、byわたし


(PS)再度返歌とは何かを下に綴らせていただきます。くどければ読まずに次ページに飛ばしてください。

(注)小説返歌とは和歌の世界における長歌の形式に倣ったものです。古来わが国には長歌という和歌の一形式がありまして、五・七、五・七の連続のもとに己が抱くところの心象や事象への感慨を綿々と謳ってまいります。そしてその末尾にこれまでの長歌に対する(呼応する)和歌一首を置くのですが、ここでは長歌に代わるところの小説(就中ここまでの文章)に対して、同じ形式を踏んでみました。すなわちここまでの小説の内容に呼応するような和歌数首を樋口一葉の和歌集から、またわたくしこと多谷の拙歌集からそれぞれ選んで置いてみたのです。ところでご存知でしょうか?樋口一葉が小説家である前に歌人であったことを。生前彼女は日々の生活における己が喜怒哀楽や苦しみなどを綿々と綴ってまいりました。あたかも和歌がなんでもうちあけられる友ででもあるかのように、己が真情をそこに吐露して来たのです。翻って一葉と比べれば至って拙くはありますが私もまた歌人であり、和歌への思い入れだけは一葉に同じくするものがあります。和歌は友であり、私の魂の吐露であり、生き行く上での指針(これを和歌の世界では「言上げ」と云います)でさえもあります。そのようなわけですのでこれ以降も小説の節目節目で「小説返歌」を置いてまいります。小説ともどもどうぞお楽しみくださいませ。

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