第3話 村の焼け跡 

ムンクは私の肩の上にチョコンと乗っかっている。重さはほとんど感じない。

白色で、10cmくらいの小さなスライム。でも、私なんかよりはるかに強い!と思う。レベルの違いは強さの違いだよね。


とりあえず、私の元いた村へ向かってみよう。村のみんなの死体くらいはちゃんとしてあげたいし。

(ムンク? 私のいた村へ向かうから・・・)

ピカピカ光ってプヨプヨしている。これは「良いよ」ってことなのかな?


見えてきた、私の住んでいた村。

でも・・・ほとんどきれいに燃えてしまっている。まあ、木や藁や木の皮や魔物の皮で出来た家だからね、少しの火でも、こうなってしまうわね・・・

なんか、目頭が熱くなってきた・・・・良い思い出なんてほとんどないけど、私を育ててくれた村。


村長のじい様の家だった場所へ向かう。

ほとんど残ってないけど、黒く煤けた石積みだけは残っていた。確か、この横にじい様の隠し金があったはず。それも盗られたんだろうか・・・

燃え焦げた地面を少しその辺に落ちていた錆びたナイフでガシガシと掘ってみた。

<チャリ、ジャリ>って・・・ああ、あるよ。

掘り出してみた、皮の袋にいれてある。


『いいか、ヨシノ、儂らに何かあって、お前が生きていたら、ここを掘ってみろ、金を隠してあるからな』って、そんなこと私に話して、私が盗んだらどうするのよ~ってその時は思ったけど、毎日、忙しくて忘れていた。でも、じい様は私のことを信じてくれてたのかな? 「じい様・・・」  

袋の中には、銀貨が30枚、金貨が5枚入っていた。

「じい様、これ、もらっておくから・・・ありがとう」


とりあえず、袋の紐を利用して腰にぶら下げた。何か入れる物があればね・・・

でも、この状況では、みんな燃えてしまってるだろう。


家の外にも中にも遺体は無かった。

他の家のあった場所も回ってみたが、同じようなもので、全部燃えてしまっている。


一体、どこの誰なの! どこの盗賊団なのよ! 村を返して! みんなを返してよ! ・・・


私から離れて、燃えた村を見回っていたムンクが戻ってきた。

(あるじ~向こうに良い物が落ちてる)


ムンクに付いていくと、そこは村の端っこの家で、半分残っている。土壁が火を止めたのかな? 人がいるのか? 

いなかった! 誰も中にはいない。確かここは、もと狩猟班のリーダーだった人の家だよ。

確かに! ムンクが教えてくれたように・・・ナイフが転がっている。しかも燃えていない。煤と土が付いているくらいだ。


<状態?>

*ミスリル・ナイフ 刃渡り30cm、狩猟用


ああ!これ、前に自慢気に見せてもらったナイフだ・・・おやじさん!・・・

皮の鞘も土壁の所に残っていたので、そのまま腰に巻きつけて装備してみた。

「おやじさん、悪い! これ、使わせてもらうよ・・・」


(あるじ~ あと、これだけ回収できたよ)

ムンクが体内から、銀貨12枚を取り出してくれた。何でも、村中を回って拾い集めたものらしい。

あれ? でも、どこから出したの? 

(あるじ~僕はね、体内に収納空間があって何でも保存できるよ?)

なんだって? 便利だなぁ~ 

それって? この巾着袋も収納できるの?

(ムンク、これも収納できるの? 無理ならそう言ってよ?)

(平気だよ)っと、スッっと、ムンクの小さな身体の中に消えた。


(あれ? 収納できたの?)

(うん、平気だよ)って、サッっと、取り出してくれた。


何よ、便利なスライムなんだね・・・

銀貨を7枚だけ私のズボンのポケットに突っ込んで、残りの5枚も巾着袋に入れて、巾着袋をムンクに収納してもらった。

ナイフは、まあ要らないけど、一応格好いいからこのまま装備しておこう。


*ムンクの収納、便利!

*収納 金貨5枚 銀貨30+5枚

*所持金 銀貨7枚


そのあと、私も、一応焼け跡をくまなく探し回って、まだ燃えてない、判別できる銅貨を23枚拾えた。

*銅貨23枚


結局、処理すべき死体は残ってはいなかった。そんな勢いで燃えてたの?


村から出たところで、焼け跡に向かって手を合わせておいた・・・


この世界から村が一つ消えた。 簡単なんだね・・・




えっと、確か、一つ西の森を越えれば、その向こうに大きな城壁の町があったはず。

狩猟班のおじさんたちに聞いたことがある。

その西の森には小動物よりは魔物が多かったので、私は一度も行ったことは無いけど、そこを通って街へ向かおう。


迷わないように小川の流れに沿って進む。この小川が森の向こうまで続いてくれてれば良いけど・・・

ムンクが私の肩から下りて、私の前の地面をピョンピョン跳ねながら進んでいる。なんとなくだけど、ムンクが案内してくれてるみたいだ。


いやいや・・・ムンクさん、前に見えてきたのは、ゴブリンではありませんか!?

4匹が水を飲んでいる。

(ムンク、ゴブリンがいるよ? 隠れていようか?)

(あるじ~ あいつらをやっつける!)

(そうは言っても・・・私は・・・)

(最初のうちは僕がやるから、あるじは良く見ててね・・・)


ムンクが、ゴブリンたちのところへ近づいていって、ピカピカ光って、体当たりをしている。

なにをやってるのよ! 挑発でもしてるようだけど・・・

そらね、距離をとって離れていたムンクめがけて、奴らが一斉に走って来た。


ムンクから、魔法が放たれた、あれは?・・・風の鎌みたいなものが飛んでいってる。

ゴブリンたちの首が一斉に落ちた。あれ? 凄い! 魔法って凄いんだ!~ 

(あるじ~見ててくれた? これは、風刃って言って、風魔法の刃を飛ばして相手を切るの)

(そうなんだ~ 見てたけど、凄いな~)

(まあ、今は良いけど、僕のをちゃんと見ててよ! あるじも出来るようになるから!)

ははは、そんな~・・? でも、ムンクが嘘をいう訳ないよね、だから、信じよう!


そのあと、ムンクが、転がってるゴブリンたちに寄っていって、何か魔法を使ってる。

ゴブリンたちの胸のところから石ころが出てきた。

(あるじ~これ、ゴブリンの魔石、お金になるからね、4個、僕が収納しておくから)


ムンクに言って、一個出してもらって、じっくり見せてもらった。

これ、あいつらの胸の中にあったんだよね? ムンクがどうやって取り出したかは分からない、魔法じゃないみたい。スキルって言ってた。それに、綺麗な宝石みたいなんだね。

そうか、魔物には魔石があるってことだから、魔物をやっつけたら、魔石を取り出して、それがお金に変わるんだ・・・・

冒険者ギルドっていう冒険者の組合みたいなところで売れるらしい。



ムンクにいろいろ教えてもらった。

ムンクは、どのくらい長くかは分からないけど、氷龍様の使い魔としてこの世界をそれこそ何百年も見てきているから、知識や経験が豊富なんだよね。

だから、私は、かなりいろいろ教えてもらってばかりいる。

おかげで、何か今までは何! って感じだけど、この世のこととか、人間のこととか、「えっ?そうなの?」ってことばかり・・・

一緒に歩きながら、そんな話をしてくれてる。

でも、何故か?知らないけど、そんないろんな知識などがすんなり頭に入ってきて、覚えていられる・・・きっと、これも氷龍様の加護のお陰だろう・・・



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