第9話 カーリー商会 

ムンクの揺れが大きくなった・・・と、<状態!>地図が勝手に現れた。

赤い印が一か所。あれ?これ、ここから近い。

更に詳細を拡大してみたら、うん? 荷車と馬? 誰かが見張っているってこともない。そうか! あの盗賊たちがこれでここまでやって来たのか!~


*盗賊の馬車を拝借


「あの~カーリーさん? 私がここへ駆けつけるときに見かけたのですが・・・」


荷馬車と馬が放置されていること、その場所を教えてあげた。


「おお、それって、あいつらが乗ってきたんじゃないのか? 俺が行って見てきてやる。会長さん、ちょっと外すが、ヨシノがいれば安心だろ?」

「ははは、護衛中断ですか・・・まあ、今回は大目に見ましょう。行ってみてください。もし使えそうなら持ってきてください」

「はい、了解です」

と、走っていった。あれ? 瞬歩じゃないけど、早いな・・・

(あれは、俊足ってやつだよ、あれこそから疲れる・・・)

なるほど、移動方法にもいろいろあるんだね。


残りのメンバーも、旦那さんやお嬢さんのこともあるし、休憩しながら待っていた。

しばらくして、<パカパカ・・ゴロゴロ・・・>って聞こえてきた。目をやれば、冒険者の人が屋根なしの荷馬車を操縦してこちらに向かってくる。

やったね!

これで、盗賊たちの運搬も楽にできる。

それにしても、ムンクは偉いな! 分かってたんだろうね・・・?

プヨプヨしてる・・・


「会長! ちょっと古いけどまだまだ使えますぜ~」

「そうですね、良かったです」

「じゃあ、俺たちは、奴らをこいつに乗せていますから、会長たちも出発の準備をしてください」

「はい、そうしましょう!」


商人さんの馬車は、冒険者の一人が運転するようだ。冒険者っていろいろできるんだね。

後ろからは、盗賊という荷物が満載の荷馬車が続いてきてる。


見えてきた、辺境伯領の東口だ、立派な石組みの外壁で囲まれている。そりゃそうか、魔物の森の近くにある辺境伯の領土だし。


「おお、これはカーリー会長、ご無事でしたか?」

うん? なんだって? どういうこと?

「ええ、お陰様で、ところでどうして?私が無事かと問われてるのですか?」

「いやあね、お宅の番頭さんが、会長の帰りが遅い・・・ってわざわざ、言いにきましてね・・・まあ、取り合わなかったもので、少し気になっていたんですよ・・・」

「なるほど・・・気にかけていただいて、どうもありがとうございます」

「はい、お帰りなさいませ! 護衛の冒険者たちも一緒に入ってくれればいい・・・」

「これはこれは、恐れ入ります、では・・・」


「それはそうと、その荷馬車の連中は?」

「ああ、途中で私の馬車が襲われまして、なんとか撃退して全員連れ帰ってきたものです。引き取ってくれますよね?」

「もちろん、徹底的に調べ上げましょう! なんだ、それで、帰りが遅くなったんですか~、でも、良かったですよ、ご無事で! 護衛の冒険者諸君! よくやった、後で良いから話を詳しく聞かせてくれ!」

「ええ、後で寄りますよ・・・」


*辺境伯領に入る


あれ? 私は? 良いのかな・・・

「ははは、ヨシノさん? ご心配なく、何かあれば、私の客人ということにしますから・・」


門をくぐったすぐのところには大きな建物が建っている。

カロリナお嬢様から突然、声をかけられました。

「ヨシノさん? これが冒険者ギルドですよ、あっ、ヨシノさんは冒険者ではなかったですね、ごめんなさい」

「いやいや、実は私は、村から出てきたばかりで・・・」

「ああ、そうなんですね、なんとなくわかっていましたよ、うふふふ・・・勘ですけど」

「そうですよね、田舎臭いですよね、すみません」

「ヨシノさん! 違いますから! うふふふ・・・」


そのまま中央通りを西へ進んで、中央市場の手前の角地にカーリー商会の大きな店舗兼屋敷が建っていた。


*カーリー商会


「では、会長、俺たちの護衛もここまでです。今回は本当にすみませんでした!」

「いえいえ、よく、商品を護っていただけました、ありがとうございました、またよろしくお願いしますよ!」

「おおお~~~任せてください! 俺たちも、もっともっと修行します!」

「ははは、では、お疲れ様でした」


馬車を店の人に引き渡して、護衛の冒険者たちは、来た道を引き返していった。冒険者ギルドに依頼完了の報告をして報酬をもらうんだって言ってた。


「さて、ヨシノさん、私は少し片付けをしてきますから、それまで、どうぞ、娘とお茶でもしてゆっくりしててください」

「えっ?」

「何も心配しなくていいですよ。ゆっくりしててください」

「はい・・・」


会長さんが店の奥へ消えていった。

同時に私はお嬢様に手を引かれて、店の中の商談室へ連れ込まれた。

「ヨシノさん、どうぞこちらで、父を待ちましょう」

お嬢様が備え付けのベルを鳴らすとすぐに、店の使用人さんかな? お茶とお菓子を持ってきてくれた。

「お嬢様、お帰りなさいませ、こちらでよろしいでしょうか? 先日の茶葉を使いました」

「うふふ、それでいいわ、マーサさんありがとう」

「さあ、ヨシノさん、どうぞ~」


まあ、カロリナお嬢様からは、店のことや扱い商品などのことをいろいろ教えてもらえた。


このカーリー商会は今のカーリーさんで3代目になる。辺境伯領でも老舗らしい。

始まりは、穀物取引や魔物素材の取引だったらしいが、今では、ほとんどすべての商品を取り扱っているらしい。

それこそ、宝石、金属、魔道具、武器、防具までも・・・


店の従業員は、入りたてから3年間は、中央市場の出店勤務で、自分たちで売りたいものを作って売ることが仕事らしい。といっても、串焼き、パン、総菜、などの食べ物がほとんどだって。

だから、こんな大店のお嬢様でも、そういう市場の普通の食べ物も大好きなんだって・・・


そんなことを話しながらお茶を頂いていたら、カーリー会長がやってきた。

使用人さんが何かをワゴンに乗せて運んでいる。


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