第8話 商人の馬車を助ける 

瞬歩!で駆けつけると、馬車が何人かの男たちに襲われている。

馬車の護衛の人たち4人も応戦しているけど、襲っている盗賊らしき奴らは6人、しかも一人、やたらと強いのがいるみたいだ。


「こんにちは~ 助太刀します!」

「おお・・・すまん、頼む!」

まずは盗賊たちに向けて気絶!をかける・・・ああ、やっぱり、あの一人には効かないか~

(ムンク! あいつには効かない)

(ああ、任せて!~)


まあ、なんか簡単に・・・全員を無力化できた。

「おおお~、あんた、すげぇな~ 助かったよ・・・」と言ってくれてる護衛の人たちも、切り傷だったりの怪我が多い。

回復の指輪を使って、<回復!> <ヒール!>をかけてまわる。

「おお、姉さん、回復持ちかぁ~ 助かる」

「はい、この指輪の魔法ですけどね・・・」


(あるじ~馬車の中に人が倒れている・・・)


「あんたたち、この馬車の護衛なんでしょ? 護衛対象は?」

「ああそうだ、馬車の中だ。最初に荷を守ろうと飛び出した旦那がやられて、そのあと、追うようにお嬢さんも斬られた。馬車に押し込んでおいたんだが・・・」

へぇ~なんか切羽詰まってたのか? 扱いがひどくないですか? それに、護衛になってないじゃん・・・


馬車の中を覗いてみた。

確かに! 旦那さんが背中から血を流して倒れている、その隣で、腕から血を流した娘さんが気を失っている、状況。


なんか・・・頭に来た! こんな状況が許されるものか!~

馬車の中に、ヒール! 回復! 治癒! さらに、回復! クリーン! をたて続けにかけていた・・・

(ははは、あるじ~ そんなに焦らなくても、あるじなら、大丈夫!できるよ。この人たちを助けてあげよう・・・)

(うん、ムンクお願い、力を貸してちょうだい!)


(ははは、あるじ、中の二人をよく見てみなよ、もう血は止まってるし・・・。もうお嬢さんの方は気が付いたようだよ?)


お嬢さんが起き上がって、自分の腕の傷が消えているのに戸惑っている。同時に旦那さんの背中の血も止まって、傷もほとんどなくなっているのが分かったようで、馬車の中で、きょろきょろしだした。


「あら? あなたは?」

と、馬車の扉を開けて声をかけられた。


「ああ、お嬢様、ご無事でしたか? すまん、俺ら、役にたてなかった・・・」

「まあ、みなさんも、ご無事でしたか? 良かったです。」

「ええ、そこの姉さんが加勢してくれて、そら、そこに奴らが転がっていますよ」

「まあ! あの~ 助けていただきありがとうございました。 あの~私やお父様の怪我が治っているのですが・・・」

「ああそれ、きっと、その姉さんの回復魔法ですよ、俺らも怪我を治してもらいましたから」


お嬢さんが馬車から下りてきて、きれいなお辞儀を私に向かってしてくれる。

「どうもありがとうございました、私は、カロリナです。父が辺境伯領でカーリー商会と言う商店を営んでおります。」

「あつ、私は、ヨシノです。たまたまここを通りかかったら、危ない状況だったので、つい加勢してしまいました。お節介はお許しください」

「とんでもありません、怪我まで治していただき、感謝に耐えません・・・ あら? その子はスライム?」

「ああ、気になりましたか、私の友達なんです。おとなしいですから危害は加えませんので・・・」

「そうですか・・・可愛いです・・・」


<ううう~~ムニャムニャ・・・>「おお、儂は? カロリナ! どこだ?」

「まあ、お父様、お目覚めですか?」

「おお、カロリナ・・・・腕は? おや、誰かいるのか?」


まあ、お嬢様がいろいろわかっていることを旦那さんに話してくれてる。よかった、変に疑われたくないし・・・


旦那さんも馬車から下りてきて、

「ヨシノ殿か? すまんな・・・ありがとう、我々を助けてくれて、それに、娘からも聞いたが、儂の怪我も治してもらえたようだな、本当にありがとう!」 って、またまた深くお辞儀をされてしまった。


*カーリ商会 旦那と娘(カロリナ)


どうやら、地方回りをしてきた帰りで、もう少しで辺境伯領というところで襲われたようだ。

商品は少し残っていたが、護衛に雇った冒険者たちのおかげで守れた。

売上金などはすべて旦那さんの鞄に入れてあるようでそれも無事だったと・・・

よかったですね。


「そうそう、そこの連中、まだ生きていますよ、意識を無くしているだけですから・・・どうされます?」

「おお、そうか、じゃあ、俺たちで縛り上げよう! 姉さんのお陰で手も身体も動くしな、ははは・・・」

見てたら、持参していた細い紐を取り出して、指、手足をきつく縛っている。

ああ、あんな細い紐でも、後ろ手で、指をきつく固められていれば、意識が戻っても逃げられないだろうね・・・


あとは、彼らが、辺境伯領まで引き連れていくらしい。

「姉さん、こいつらは俺らが警備隊に引き渡そう、姉さん、ヨシノさんだったな、ちゃんと伝えておくから・・・」

うん? なんだろう? 

「そうですか、ではお願いします。では、私はそろそろ失礼いたします」


「ヨシノさん? これからどちらへ?」

「いえ、特にアテはないのですが、その辺境伯領にでも行ってみようと思います」

「なるほど・・・では、我らと一緒ですな。どうぞ、馬車に乗ってくだされ!」

「えっ? 私がですか? 初めてお会いしたばかりですが・・・」

「まあそうですな、でも、ヨシノさん、あなたからは悪意は感じませんからな、それに、私たちの命の恩人を、このまま返してしまうほど、このカーリー、残念な奴ではありません、ささ、どうぞ馬車へ!」


なんというか、戸惑っていたら、うん? 手を握られて連れていかれる・・・お嬢様だ。

いやいや、良いの?

ムンクは、私の肩の上で、プルプル揺れてるし、良いのか~?



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