あとがき


この度は『ネタバレが激しすぎる勇者物語~最後の敵の正体は勇者の父~』を最後まで読んでいただきありがとうございました。このあとがきに思いのたけをぶつけた結果とても長くなったので、飽きたら最後の行だけ読んでください。


 この作品は自作ゲーム『ネタバレが激しすぎるRPG―最後の敵の正体は勇者の父―』を原作に、大きく加筆して小説にしたものです。2020年、新型コロナウイルスの蔓延により時間をもてあましているときに、ある配信者があまりにもバカバカしいインディゲームを実況配信していたのを見て、私は笑い転げました(実際には転がったわけではない)。そして小学生のとき、「RPGツクール3」というプレイステーションのゲームを作るゲームでゲームを作っていたことを思い出し、もう一度チャレンジしてみるかと思い立ち、ゲーム制作を始めました。最初につくったゲームは時間をかけて作ったわりに公開しても反応が薄かったので省略しますが、その次に制作したのが『速すぎるRPG』という、全てが速すぎて本編が15分くらいで終わるゲームでした。この作品は少ない労力で作ったにもかかわらず、とても多くの人にプレイされました。これを皮切りに「すぎるRPG」シリーズが制作され、ここまでに『無駄をそぎ落としすぎたRPG』『弱すぎるRPG』『虚無すぎるRPG』などが制作・公開され、2023年4月にその最新作として制作・公開したのが『ネタバレが激しすぎるRPG―最後の敵の正体は勇者の父―』でした。


 このゲームのもともとのアイディアを思いついたのが確か2022年10月ごろだったと思います。プレイヤーは名前を見れば一瞬で何者かがわかるのに、登場人物たちはそれを知らずに、真面目に会話している。コメディのルールにこんな考え方があります。「情報を最も多く持っているのは観客。登場人物たちがそれを知らずに動いているから面白い。」これは神の視点ともいえます。自分は全部を知っている、つまり登場人物たちより上の視点にいるというわけです。このアイディアはそんなコメディの考え方にぴったりフィットするものでした。ちなみにこの名前ネタバレ方式の便利な点をもうひとつあげると、いちいち説明しなくていいところです。たとえば「すぐ死ぬ僧侶」を観客に提示するためには、占い師が「こいつはすぐに死ぬぞ」というとか、「実は僕の余命はもう少しで」などと説明する必要があります。しかしネタバレ方式であれば「僧侶スグシヌヨン」という名前を出すだけで、その情報を伝えることができるわけです。なんて楽なんでしょう! 「僕は最強の僧侶スグシヌヨン。100歳まで長生きしたいなあ」この一行ですぐ死ぬことと、それを知らずに「長生きしたいなあ」などと言い放つ悲哀と滑稽さが伝わります。


 さて、しかしこのアイディアだけで長い物語を書くのはなかなか難しいものです。物語自体はかなり王道のファンタジーを意識しました。王道の力は偉大です。そしてもうひとつ、このネタバレ方式自体にひねりを入れることにしました。序盤は、登場人物はなんのひねりもなく名前の通りの人物であるということがプレイヤー(小説の場合は読者)に伝わりますが、それが続けば「ずっと同じパターンか」と少しずつ飽きていってしまうでしょう。その先入観が崩されるのがジンロー村です。村長ジン・ロウが人狼であることは誰でもわかるのですが、オマエモカも人狼であることは多くの人が見逃がします。これは、オマエモカの夫が「女性に貢ぎまくってる」と言い、その後オマエモカも「男性に貢ぎまくってる」と言ってるため、ここで名前の伏線(?)が回収されたと油断するためです。それに続いて、勇者たちを裏切るのはウラギールではなくマトハズレイ、ユウ・シャノチーチは勇者ケンジャノッチの父ではなくユ・ウシャの父であるなど、プレイヤー(読者)は、自分の想定を裏切られていくことになります。何もかもネタバレしていると笑っていたら、実は想定していたネタバレは勘違いだったわけです。(しかし名前自体に嘘はないのです。)我ながらいい構成だと思いました。こういうのを叙述トリックというそうです。へぇー。


 さて、もうひとつ意識したことが、ネタバレしているがゆえにハラハラドキドキさせたいということです。たとえば「ウラギール」という名前の人物が勇者にずいぶん優しくしてくれるとか、「ジン・ロウ」という明らかに人狼である人物がいるのに別の人物を斬ってしまうとかです。先が見えているからこそ「なんでそんなことするんだよ!」とか「違う、その選択は間違ってる!」とか思ってしまうわけです。こういうのっていいですよね。




【創作の過程メモ】


 「名前でネタバレする。」まずはこのアイディアが一番最初にありました。のっけから国王クロマーク(黒幕)が登場し笑いを誘う。裏切者が最初からネタバレしてると面白そうということで、仲間の一人は「ウラギール(裏切る)」になりました。そのほかの仲間はノリで決まった気がします。パーティの人数は3人が適正かなと思っていたので、「スグシヌヨン」には即刻退場してもらいました。「敵の親玉が、実は父親だった」というのはよくネタとしてある展開なので、魔王の名前は「ユウ・シャノチーチ(勇者の父)」になりました。

さて、一番最初に決めたタイトルは『ネタバレが激しすぎるRPG』だけでした。しかしタイトルというのは重要です。タイトルを見た瞬間笑えるものの方がいいと思い、サブタイトルをつけました。最初は確か「魔王の正体は主人公の父」だったと記憶しています。つまり最初の構想としては、魔王が主人公の父で、そのあと黒幕である国王を倒して終わり、という話でした。つまり、サブタイトルにひねりはなく、その通り魔王が主人公の父の設定だったのです。


 しかしこれでは何か足りない、と思いました。そこでミスリード(観客に間違った予想をさせること)を思いつきました。つまり、ユウ・シャノチーチは主人公の父ではなく、全く別の登場人物、ユ・ウシャの父だったという展開です。そうするとサブタイトルは嘘になってしまう、別のなにかにしないといけない。そうだ、「魔王の正体」ではなく「最後の敵の正体」にしよう。そうすると、最後に戦う敵の正体が、勇者の父である必要があります。しかし魔王はもう使えません。「魔王を使わず、意外な人物の正体が実は父親だった」という風にするにはどうすればいいだろう……そこででてきたのがスライム化の呪いです。人間がスライムになってしまう。そのスライムを父親だと気づかずに主人公が倒してしまう。この方針で決まりました。魔王を倒しに行く理由が特に決まっていなかったので、少しサスペンス的な雰囲気で、「なにか奇妙な事件が起こっている。その犯人は魔王に違いない。」という設定になりました。


 さて、せっかくミスリードを設定したので、このミスリードをもっと使えないか考え、国王クロマークは実は「黒幕」ではなく「黒マーク」だったという設定を思いつきます。国王に黒いマークがついている。これによって何者かに操られている。誰に? そう、そこででてきたのが王妃です。真の黒幕は国王ではなく王妃というわけです。王妃の名前はなんでもいいやと思っていのですが、登場の時に笑えそうな「フリーン(不倫)」になりました。実は魔王と不倫をしている。そう、魔王も王妃に操られていたのだ。ここで話の真実の大枠は決まりました。


 実は主人公の名前はずいぶんあとで決まりました。主人公にこれといって特徴がなかったのです。「クロマーク」「ウラギール」「ユウ・シャノチーチ」のように、本来であれば衝撃の展開になるはずの事柄を最初にネタバレしとくと面白いなと思っていたので、意外な展開……そう、実は主人公はすごい血統だったのだ! という展開を思いつき、すごい血統、賢者の血、ケンジャノッチ、と名前が決まりました。ケンジャノッチだけ、名前を聞いた瞬間にはなんのネタバレかわからないところは、ちょっと惜しいなと思っていました。


 さて、これだけでは話の中盤が決まっていないので、よくあろう王道展開という事で、魔王の手下である四天王を配置し、ジンロー村を置きました。人狼は本来誰が人狼なのかわからないから面白いのに、最初からネタバレしてたら面白いだろうなと思ったからです。「人狼ゲームって人狼ふたりいるよなぁ」とぼんやり思っていたところで、村長ジン・ロウ(人狼)以外に人狼がいる展開を思いつきます。ここでもせっかくなのでミスリードを使おうと思い、オマエモカ(お前もか)が配置されました。ユ・ウシャをその前に登場させることにしたのですが、最初からユ・ウシャを登場させると感づかれる可能性があると考え、ユ・●●という偽名をつけようと思い、友達がたくさんいるユ・ウジンナシ(友人なし)という名前になりました。そのほか四天王は、その場で面白そうな名前にしようということで、めちゃくちゃ強そうなクソザッコ(クソ雑魚)、めちゃめちゃ弱そうなツヨスギルン(強すぎる)になりました。


 これでストーリーラインは完成したので、それに従ってセリフを打ち込んでいきました。細かいつじつま合わせやエピソードづくりなどはその都度調整していきました。たとえば、そもそも王妃はなぜ国王と魔王を操っていた? その目的は? そうだ、邪魔な存在の二人を消すと同時に、ケンジャノッチを成長させたり、賢者の血を覚醒させたりし、ケンジャノッチと結婚するためだ、とか、それなら、ケンジャノッチとウラギールのいい感じのシーンは、愛についての話題にしよう、とかです。


 ここからは余談ですが、こうして原作ゲームは完成したわけですが、実際にテストプレイしてみると、「ボイスがあったらもっと面白そうだなあ」などと思いついてしまい、条件とマッチしそうな声優さんを必死で探したり、もらった音声データを調整して全部カットして、いちいちセリフと同時にその音声を鳴らすコマンドを入れるという膨大な作業が増えてしまい、結局完成までに、それまでの倍の時間がかかることになりました。最後に一枚絵が表示されたら感動するよなぁなどと思いつきイラストまで依頼しました。あのときの自分は、なにかハイな状態になっていたんだと思います。そのおかげで原作ゲームはさらにいい出来になったと思います。




【小説を書くときに意識したことについて】


 さて、ここまではゲームを作るときに意識したときの話で、ここからようやく小説を書いたときの話をします。そもそも私はあまりまともに長い小説を書いたことがありません。文章や舞台脚本などは書き慣れているのですが、小説はちょっとしたものしか書いたことがありませんでした。こういうファンタジーに関しては経験ゼロです。もちろん小説自体は読んだことがあるので、セリフと地の文があるとか、頭に浮かんだ映像をこういう感じの言葉で表現するとか、それはなんとなくはわかっているのですが、こういうファンタジーを読んだことは実はあまりありません。「戦闘描写? なにそれ? おいしいの?」状態です。アニメはいっぱい見たことあるので、いろんなアニメのいろんな場面を思い出したり参考にしたりしながら、その映像を言葉で表すとこんな感じか?と手探りで書ききりました。もっとうまい人いっぱいいるんだろうなぁ。ギリギリ伝わるくらいには書けたのではなかろうかと思います……たぶん……。

 ゲームから小説に置き換えるのに一番苦労したのが、まさにこの戦闘描写でした。RPGの戦闘では敵に攻撃があたりダメージが入るのはほぼ当たり前ですが、これを小説でやるとすごいことになります。「こいつら全員攻撃をボディで受けてるのになかなか死なねえ!」とツッコミが入ってしまいます。「剣で斬った! 100ダメージ!」とか書けないわけです。剣で斬ったらふつう死ぬだろと思ってしまうからです。難しいですね。ゲームは自分で操作しているので楽しいですが、小説は自分で操作しないので、敵にいっぱいダメージを与えて倒すみたいなのは面白くありません。なので戦闘描写は、ゲームを少ししか参考にできず、ほぼオリジナルで書くことになりました。戦闘描写とか書いたことないのに。方針としては、それぞれの敵に強い特性をつけて、それを攻略するという形を取りました。「そういうのアニメでいっぱい見たことある!」と思ったからです。たぶんほとんどのアニメはそういう方針でバトルシーンをつくっているんじゃないかと思います。知らんけど。アニメをイメージするとどうしてもセリフが多くなってしまいますね。セリフが並ぶと誰がしゃべっているのかわからなくなりがちなので、いちいち間に地の文を入れるのに手間がかかりました。ゲームなら名前出るからセリフだけでいいのに……。


 そのほか、ボリュームの問題もありました。せっかく書くんだしできれば10万文字を目指そうと考えました。検索したら何かのサイトに「10万文字書くといいよ」と書いてあったからです。しかし、どう考えてもゲームの内容だけでは10万文字にはなりませんでした。ゲームのセリフは数えてみたところ27,000字くらいしかなかったからです。実際の物語の内容を考えても10万文字には届かないだろうなと思いました。なので、ゲームにないエピソードを追加することにしました。まず、序盤の街は丸ごと存在しません。ゲームではいきなり王との会話からスタートします。でも、それじゃあ味気ないし、もう少し情趣をもたせたいなと思い、ケンジャノッチの住む街とそこの住人たちが登場することとなりました。そのあとの、マトハズレイの故郷ノーキンタウンも小説で新たに追加しました。カマセーイヌもメン・タルヨワイも新キャラです。そのほか愛の伝道師テメーガユ・ウナや、帰りにジンロー村に立ち寄るとかも新たに追加しました。そのほか色々と追加した点や、異なる点がありますので、気になる方は『ネタバレが激しすぎるRPG』で検索してみてください。なんと無料で遊べます。3~4時間でクリアできます。


 そのほか苦労したところは「web小説」「連載」という点です。まずweb小説を読んだことがありませんでした。書籍の小説と違って横書き、というのはまあいいとして、改行をいっぱい入れなければいけないらしいことがわかりました。確かにパソコンやスマートフォンの画面だと、あんまり文字がびっしり並んでると見づらいよな。勉強になります。あとがきはきっと物好きが読むと思うのでびっしり書きます! すみません! あと、なにかポイントとかどれくらいの人が見てるのかとかわかっちゃうのか。10,000話以上更新してるものとか、読み終わるのに500時間かかるものもあるらしい。10,000ポイントを超えている作品もあれば0ポイントの作品もある。厳しい世界だ……。とりあえずモチベーションさげず最後まで書ききれました。応援してくださった皆様ありがとうございます。

 連載というのも、ほぼ経験のないことでした。「ある程度書ききってから投稿始めるといいよ」というアドバイスも見つけたのですが、そんなことしてたら一生連載開始しないと思い、1話書ききった時点で投稿を始めました。追いつめられるととにかく次を書く、人間の性ですね。なんとか「次の話も読みたいな」というところで1話1話を終わらせられたのではないかなと思います。連載には連載の楽しさとか大変さがあるのですね、勉強になります。1話1話盛り上げないといけないというところで、2時間程度で1つの話が完結する映画や舞台とはつくりが違いますね。ふむふむ。




【評判のいい作品はアニメ化するってマジですか? の話】


 昨今、こういったweb小説から、書籍の小説になったり、漫画になったり、果てはアニメ化されるなんて話があるらしいではありませんか。確かにweb小説原作のアニメというのはよくきいたことがあります。

原作ゲームの実況動画の感想欄に「アニメ化してください」みたいなコメントがあったのですが、「いや、してくださいと言われましても、それはテレビ局の偉い人か誰かに言ってくれないと……」と思いはしたものの、その実こっそり私も「自分の作品がアニメ化したら嬉しいよなぁ」などと思っていました。たぶんweb小説を投稿しているほとんど人がそう考えていると思います。たぶん。しかしやはり原作のボリュームではアニメ化するほどの尺にはならないということと、ゲームでのキャラクターデザインがソフトに同梱されているもの(つまりRPGツクールでゲームを作っている多くの人に使われているキャラクター)であることから、アニメ化される可能性なんて1%しかないだろうと思っていました。「その1%をつかむまでだ!」とマトハズレイのようにかっこつけてもいいのですが、かと言ってこれらの要素はこれ以上私にどうすることもできません。そうとなれば、もっと長い話にして、小説にしてしまえば、その可能性は1%から2%くらいに上がるのではなかろうかと思ったのです。いや、創作者特有の謎の自信を基準にすれば本当は5%、いや10%くらいあったっていいと思っています。10%といえば宝くじで1等7億円があたる確率の実に200万倍です。宝くじで7億円あてるよりかなり現実感があるじゃありませんか。こうやって夢を見ていきましょう。夢を見なければ創作なんてやってられません。


話を戻しますが、「もしアニメ化された時のことを考えて」などと浅はかな考えをしつつ、個人的に気を付けたことがあります。どうしても原作のキャラクターデザインが頭の中で動いてしまうため、主要な人物の外見に関しては、ほぼ何も書きませんでした。それを書いたら明らかに原作ゲームのキャラクターデザインに引っ張られるからです。きっと、勇者、魔道士、剣士、国王、魔王、王妃など、人によって頭の中に描いたイメージは全く違うものになったでしょう。何かの間違いで書籍化された場合には、多くの人にとって意外なキャラクターデザインになっているかもしれません。それもまたひとつの楽しみとしてみなさま話題にしてください。よかったら「#ネタバレが激しすぎる勇者物語」で感想や、自分が思うキャラクターデザインなどをSNSに投稿してください。観に行きます。そして面白かったらぜひSNSでこれのアニメ化をしてほしいと投稿してください! 偉い人に届け! この小説を読んで面白いと思った偉い人! アニメ化してください! 書籍も出させてください! コミカライズしてください! 言うだけはタダなので何回でも言います! 偉い人! お願いします! あとはグッズとか作ってください! ゲームにしてください! ゲーム原作にゲームにするの意味わからないかもしれないけど! そしてお金ください!!


 自分の作品がアニメ化されるというのはいったいどういう気持ちなのでしょうか? きっとここにもそういう人が何人も、いや何十人もいるかと思います。知らんけど。「自分はこれだけ面白いもの書いたんだから当然だよね」みたいな冷静な感じなのか、「うおおおぉぉぉ!! やったああぁぁ!! 自分の作品が書籍化!!! コミカライズ!!!!! アニメ化!!!!! 生きててよかったあぁぁぁ!」みたいな感じなのでしょうか。多分私は後者になると思います。いい反応すると思うので、ぜひそういうお話をください。とはいえ実際は全く想像がつきません。自分の小説の登場人物を誰かがキャラクターデザインしてくれるってどういう気持ちなんだろう? コミカライズされるって? アニメ化されてテレビで放送されるってどういう気持ちなんだろう? 自分の書いたセリフを声優の人が読んでくれるってこと?? どんな気持ちなんだろうか?? ここ5年くらいつけてないテレビをつけて、深夜にリアルタイムで視聴することになると思います。そしてSNSで感想を検索して、いい評判にニコニコしながら、悪い評判にしっかり落ち込むことになるかもしれません。でもいいです。そんなのは当たり前にあることですから。




【創作とインターネットの不思議】


 実は私は、普段は舞台の脚本を書いてそれを上演しています。ついこの前上演した作品を知っているのは、世界で400人にも届きません。小説を書くよりも、ゲームを作るよりも、金も人も時間も費やしているのにです。では、小説はどうでしょう? この小説を知っているのは世界で1000人くらいはいるようです。書くのに100時間くらいかかったみたいです。文章は私ひとりで書きました。お金はかかってません。(せいぜいインターネットの接続料と電気代くらい。)原作ゲームはというと、こちらも恐らく100時間くらいです。一番再生されている実況動画は85万回らしいので、何回か見た人がいると考えても30万人くらいは知っているようです。東京ドームの席数は55,000らしいので、30万人といえば、東京ドームで6回イベントをして集められる人数です。お金のことを言うと、こちらなんとフルボイスでイラストもひとつ書いてもらったのですが、それでもRPGツクールのソフトの料金含めても10万円かかってないくらいです。これはなんだか不思議な感覚です。かかったリソースと認知度は必ずしも比例しないのです。自分が舞台で、東京ドームで6回も公演をやるなんていうことは全く想像もつきません。今までの人生で一番時間を費やしてきたのが舞台なのに……これはいったいどういうことなんだ……! しかしこれがインターネットの力なのかもしれません。舞台はほとんどその地域にいる人しか観に来ませんが、インターネットで公開する小説やゲームは、日本全国、いや場合によっては世界中の人が触れる可能性があるのです。インターネットってすげえや。他のゲームはどうやら300万再生されてるものもあるようです。300万人が私のゲームを知っているってことでしょうか? まったくもって実感がわきません。




【小説を書く人への尊敬について】


 今回実際に小説を書いてみて(といってもまだまだ駆け出しの素人ではありますが)、小説を書く人はすごいなと思いました。とんでもない頻度で更新し続けている人がたくさんいます。とんでもない分量を書いている人もたくさんいます。おそらく、それに人生をかけている人もたくさんいるかと思います。原作ありの20話の話を書くのにこれだけ骨が折れたのに、オリジナルでイチから書き続けている人たちがたくさんいて、素直に尊敬します。どうしたらそんなに書くことができるのでしょうか……?

 舞台の脚本、せいぜい30,000字とかです。それなのに、100万字超えてる小説なんかもザラに見かけます。いったいどうなっているんでしょうか? ふだん何食ってたらそんなに書くことができるのでしょうか? 書籍化して10巻とか20巻とか出してる人、とても信じられません。想像のつかない世界です。今後また私がこういう小説を書くかどうかはわかりません。なにやら評判がよかったらなにか書くかもしれません。『ネタバレが激しすぎる勇者物語2』とか書くかもしれません。いや、書く前にゲームを作るかもしれません。それが観たい方はぜひ評価してください!




【時代の変化について】


 みなさん、20年前を覚えているでしょうか。(もしかしたら生まれてない人もいるかもしれません。)ようやくインターネットで家庭に普及し始めてきた頃です。当時はまだ、アニメと言えば子供が観るもの、ゲームと言えば子供がやるもの、という認識だったと思います。殺人事件が起きたときには、「犯人の部屋にはアニメのグッズが……」などと報道されるような時代でした。今でもごくたまにそういう報道があるようですが……。こういった勇者物語も、当時の価値観では「子供が喜ぶもの」という認識をされたと思います。私の中では「アニメやゲームはやはり子供のやることで、大人になったら卒業するんだろうな」という予想もありました。しかし実際はどうでしょう。そのときアニメやゲームに慣れ親しんだ世代が大人になり、大人もアニメやゲームに触れるのが当たり前のような時代になったのです。アニメソングも当たり前に受け入れられ、むしろイケてるくらいの認識がされているわけです。海外にもかなり受け入れられているのではないでしょうか。知らんけど。一部の一般人がオタクに憧れを持つという、20年前から考えたら異常とすら思える状況になっているわけです。完全に市民権を得たわけです。これは私たち創作者にとっては背中を押されるような環境です。

 サービスの充実もまた、私たちにとっていいものとなりました。その昔は自分の書いた小説を読んでもらおうと思えば自費出版しか手段がなかったのに、インターネットが普及しこういったサービスが現れたことで、無料で多くの人の小説を読んでもらえる機会を手に入れたわけです。小説のみならず、インターネットのおかげで様々な制作物を発表できる場を私たちは手に入れました。動画も、マンガも、音楽も、そしてゲームも、ネットで発表して多くの人に触れてもらえるのです。(もちろん今はそれが溢れすぎて、発表したのに見てもらえないという可能性もありますが……)昔は家族や友達に見てもらって終わりでした。多くの人に見てもらえるのは、テレビに出られる機会を得た一部の選ばれし人間だけでした。みんな! この時代を謳歌しよう! 



 最後に、ここまで読んでくださったみなさまや、僕のゲームを遊んでくれたみなさま、そして「小説書いてみたら?」と言ってアドバイスや感想をくれた兄に感謝を贈ります。ありがとうー!!!!

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★書籍化決定★ネタバレが激しすぎる勇者物語~最後の敵の正体は勇者の父~ みぬひのめ @minuhinome

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