第8話:あれ?私なんかやっちゃいました?

 セレストのおかげもあって私たちはあっという間に魔獣たちをテイムし終わった。時間にすると4時間くらい?流石の私もかなり体力を使ったし、お腹も減った。ちなみにアイダファミリーは21名まで増えました。いぇい

 かなり多種多様でよくわかんない触手みたいなやつとか目がたくさんある怖めの見た目の魔獣とか…。性格も十人十色で楽しい大家族になったもんですよ。ハハハ


 というわけで来た道を戻って魔獣小屋の外に出た。ワープの間に行き、そこにいた犬の頭の人に話しかけた。


「あ、あの魔王様のところまでお願いできますか?」


「む?あぁ、人間か。はいはい」


 犬の人はササッと魔法陣を起動させてくれた。ちなみにセレストは強い希望があったので連れてきているが、他の魔獣たちは元の檻に残ってもらっている。犬の人が少し訝しげにこちらを見ていたのもそのせいだろう。

 正直腹ごしらえをしたい気持ちはあるが、まずは報告というのが社会のルールだと聞いたことがあるような気がする。


 魔王様のフロアまでワープし、私は記憶を頼りに魔王様の部屋まで歩いていった。


「まお…ディル様〜、私です。ユミです」


「おう、入っていいぞ」


 一瞬魔王様といいかけたが、急いでディル様と言い直した。


「む?スライムをテイムしたのか」


「あっはい」


 ディル様も早速セレストに目をつけたようだ。かなり興味津々といった感じで目を丸くしている様子が可愛らしい。


「いやはやスライムがあの魔獣小屋にいただなんて我も知らなかったな!」


 ディル様はそうやって笑い飛ばした。


 魔獣小屋の生物を把握しきれてないって…それは大丈夫なのかな?


「して、どれくらいテイムしたんだ?」


「案内されたところの子を全部なんで…19匹ですね」


 私がそう答えると魔王様はくりくりな目を更に大きくさせて口をあんぐりとさせていた。


「ぜ、全部…?」


「?え、えぇ…。あれ?ディル様が言ってませんでしたっけ」


「いや…全部とは言っていなかったが…そうか、そうか…」


 ディル様は考え込むように俯いた。


 あれ?もしかして私なんかやっちゃった?


「あ、あの…もしダメなことだったなら謝ります…」


「む?いや、気にしていないぞ。むしろ期待以上で喜ばしい。いやぁ…まさかあの数をこの数時間でやってのけるとは。うちのテイマーでもあそこの小屋のものは中々手なづけられなかったからな。して、どのようにテイムしたんだ?やはりコマの力か?」


 ディル様は興味津々といった感じで全く怒っている素振りはなかった。とりあえずは安心だ。ていうかオルクたちってやっぱりテイムしづらい子なんだね。実際穏やかだったのはセレストとヘイルとブーンくらいだったし、納得っちゃ納得?


「最初はコマの力を借りたんですが…この子、セレストっていうんですけど、この子の力のおかげで順調に仲間を増やしました」


「スライムの力?スライムがあそこにいる魔獣に勝てるとは思えんのだが…」


「この子は随分強いようなんです。まずこの子かコマが魔獣を弱らせて、その後にこの子が魅了魔法を使ったんです」


「ほう、魅了魔法か…」


 セレストは強烈な毒を放つことができる。その毒の種類は様々で麻痺させたり、口から泡を吹かせたりなどどれも強力だった。


 そして魅了魔法。


 魅了魔法の中には回復効果を伴うものもあり、いずれも目の前の相手や術者に魅了されるようになる魔法だ。セレストはその魔法を使って目の前の私に魔獣たちが魅了されるようにして、私のテイムに応じるようにしかけたのだ。

 魔獣たちを騙す形になってしまったのが少し気がかりだが、魔獣たちは自分たちの負けを認めているし、ありがたいことに私を主人として見てくれているみたいだ。


「ふむ…ま、まあ期待以上の働きをしてくれる分には問題はないし、我自身かなり興味のそそる話だった。そうか、謎多きスライムはそんな力を秘めていたのだな」


 ディル様は満足そうに頷き、私に満面の笑みを向けた。


「予定ではもう少し後にするはずだったが、少し早めようか。お主ら2人には魔法の経験が乏しいのだろう?モールに頼んであるから明後日からは魔法訓練も始めるからな。あと、まだ先ではあるが剣とか弓とかの基礎的な実戦訓練もやるから覚悟しておけよ」


 ディル様はニッコリと笑いながら恐ろしいことを言った。実戦?戦うの?怖い……


 あとモールさんって私のこと嫌ってそうなんだけど大丈夫なんですかね?!私叱られるよりも褒めて伸びる派なんですけど!


「まぁ、そうビビるな!コマに関してはもう戦い方が分かってきてるみたいだし、お主もすぐに慣れるだろう!」


 いやいやいや、私犬とは違うんですけど!ていうかコマが特別すぎるだけだと思うんですけど!この世界に来て数分で魔法の使い方が分かっちゃう天才犬なんてコマくらいですよ!


「お主ら昼はまだか?今日は貴重な肉が入ったとかで厨房が気合入れてたぞ」


「あ、そうなんですね」


 ディル様に言われて改めてお腹が空いてきた。コマも暇そうにしていたが『ようやくご飯が食べられる!』と尻尾を振って、ソワソワしている。


「じゃ、食べに行こっか」


「わふっ!」(たべりゅ!)


「いってらっしゃ〜い」


「あれ、ディル様は食べないんですか」


「あぁ、我はもう食べたからな」


「そうなんですね」


 ディル様は自身のお腹をさすってみせた。


 私たちはディル様のおすすめのままに魔王城の食堂へ向かった。


「〜♪〜♪」(ごはん♪ごはん♪)


「コマ、ご機嫌だね」


「わふっ!」(うん!お肉だもん!)


 お肉という言葉にワクワクが止まらないコマに釣られて私も思わずワクワクしてきた。


 そういえば貴重なお肉って言ってたけど、何の肉なんだろう?こっちの生物だし、変な色とか味じゃなければいいんだけどなぁ……。

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