第24話:利権争い?!
皆が私の手の中にある箱に集中する中、私は意を決してその箱を開いた。
箱を開けると銀色に輝く………〝爪切り〟………が入っていた。
ご丁寧に爪やすりまでついているその箱の中にはどこかのブランド名が印字されており、結構良い爪切り&爪やすりらしい。
「…………」
みんなが真剣な表情で爪切りを見つめている……なんか面白い。
「…なにを笑っておる」
「い、いえ…なんでもないです…」
しかし、これでコマがビビっている理由が判明した。コマは爪切りが大嫌いすぎて人間用の爪切りであっても飛んで逃げてしまうくらいだ。つまりはコマは爪切りの気配を察してこうしてビビっているのだ。
「こ、これ…爪切り、ですね」
「…爪切り?」
レイラさんが信じられないという様子でこちらを見ている。
確か、日本の爪切りって海外とは全然見た目も違くて性能が良いんだっけ。なんかどこかの記事で日本の爪切りが海外で大人気!みたいなのを見たことがある気がする。だからここの人たちも爪切りだと分からなかったのかもしれない。
「はい、これは私の出身国では普通に使われてた爪切りですね。こっちは爪やすりみたいです」
みんなは信じられないという様子で見つめている。
「ハ、ハハッ!ボクは爪切りごときで国を渡ったのか!ナハハ!」
アルトロス様は腹を抱えて豪快に笑った。そりゃそうなるよねぇ…。
「して、その爪切りは何か特別なのか?」
「い、いえ別に…ただ、他国よりは安全で使いやすいらしいですよ」
そう言って私はディル様に見えるように伸びかけていた小指の爪を切って見せる。
最近の爪切りはちゃんと飛び散らないようになってるし、結構切りやすいと思う。パチンパチンを切って付属の爪やすりで整えて見せる。
ディル様はその様子を見て興味深そうに頷いた。
「ふむ…良いな。我もアルトロスも爪を切る必要はないが、爪切りが必要な種族には良さそうだ。金の匂いがするぞ」
ディル様は無感情にそう言った。
「この爪切りはうちのユミが解明したんだから我の国が権利を貰おう。お前の国には関税をかけずに輸出してやろう」
「はぁ?ボクが持ってきたものなんだからボクの国のものでしょ?その言葉はそのまま返してやるよ」
「いやいや、知らなければ意味のないただのガラクタと同然だったのだろう?ならばその爪切りに価値を見出した我が国のユミにその権利が渡るべきでは?となればユミの主である我が権利を保持するのも不思議ではないだろう?」
「いやいや…」
「いやいや…」
………お金が絡む話って難しいねぇ…。
こういうところを見てると二人ともちゃんと政治家なんだなっていうのがわかるね。二人とも魔王様ですごい人だけど見た目が可愛らしいし……。
「きゅうん…」(爪切りしまってぇ…)
「あぁ…ごめんごめん」
私は爪切りと爪やすりを元あったようにケースに仕舞った。切った爪の残骸もひとまずハンカチに包んであとで捨てておこうとポケットに仕舞った。こういう部屋汚すと後でメイドさんたちに怒られちゃうんだよね。
二人の魔王様の言い合いを見守りながらふとレイラさんのほうを見ると目が合った。微笑みかけてみるとレイラさんはジト目で二人の方をチラ見して呆れたような表情で笑った。なんだかんだでレイラさんもアルトロス様のこと嫌いじゃないのかな?
「はぁ…はぁ…」
「はぁ…はぁ…」
二人の言い争いは解決こそしていないようだが、落ち着いてきたようだ。
「ふ、ふぅ…今日はこれぐらいにしてやろう。して、これが本題ではないのだろう?焦らさず本題に入るんだ」
「はぁ?なんだその舐めた口……いや、そうだな。本当の目的について話そうか」
アルトロス様は今まで以上に真剣な顔で胸元から一枚の紙を取り出した。
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