第4話:魔王様と対談しました
結局あの後私たちは食事とお風呂を済ませて寝た。
前の世界では朝だったがこちらの世界では夕方だったらしく、時差に困惑しながらもしっかりと寝ることができた。
ちなみに食事もお風呂もとても豪華だった。食事はなんだかよくわからないお肉だったし、不安でしかなかったがとても美味しかった。コマ用に味付けのされていないものを出してもらえたし、聞いてみると獣人用のおやつじゃなくともペット用のおやつがあるそうで、今度買ってもらえることになった。
お風呂から上がった頃には暇になっていたのでセイラさんから貰った本を読んでおいた。思ったよりわかりやすかったし、図が多かったので見た目以上に早く読み終わってしまった。
おかげで本の中身はほとんど理解できたし、この世界についてかなり詳しくなれたほうだろう。
そうやって本を読み終える頃には眠気も増してきたので、コマとともにベッドに入って就寝した。
というわけで、日が越したということは魔王様との対談だ。
魔王様とは昨日の最初の方しか合っていなかったが、とても高圧的なオーラのある方だった。甲冑マンと呼んでいたが流石に魔王様といわねばならないだろう。魔王様はコマの言葉もわかるらしいのでコマにもしっかりと注意しておいた。
「ここからはお二人で行ってくださいね〜」
セイラさんによって案内された大きな扉の前で深呼吸をする。昨日とは違って魔王様の執行室だそうだ。この扉の向こうに魔王様がいる。
息を整えて、私は扉をノックした。
奥から返事が聞こえて私は扉を押した。扉は案外簡単に開き、コマはするっと部屋に入った。私もそれにつられて入った。
部屋の中には机に向かって座った美少女がいた。
都市は17、8ほどに見える、いわば私と同級生くらいの女の子だ。白い肌は透き通っていて頬には健康的な赤みを宿していた。赤茶色の艷やかな髪は腰まで伸び、白のドレスをまとった彼女はどこかの天使だと言われてもおかしくはない。
「ようこそ」
彼女から発せられた声は柔らかで、同性の私も思わずドキッとしてしまう。
「え?あ、あのなぜ天使族がこちらに?」
私はやはり彼女が天使であると予想した。
セイラさんから渡された本には天使族という種族も乗っていた。天使族は基本的に無干渉だが、人間族とつながりがあり、戦争自体には参加しないものの勇者側だと書されていた。
彼女は私の発言に目をパチクリとさせて困惑していた。
「ふっ、フハハ!お前、ユミだったか。ユミは私を天使だと予想したのか」
あれ?この笑い方…昨日聞いたような…。もしかしなくともこの人って魔王様?!でも昨日みたいな甲冑マンではないし、オーラも特に無いんだけど!
「も、もしかして…魔王様?!」
「あぁ、そうだ」
「も、申し訳ありません!気づかなくて…」
魔王様は特になにも気にしていないようで安心した。
「さぁ、ユミよ。そこにかけるがいいぞ。犬も座っていいからな」
魔王様に促されるままにソファに座る。コマも大人しく言うことを聞いているようだし、安心した。
魔王様も続くように対面のソファに座ってどこからともなくカップを取り出した。
「コーヒーと紅茶、どっちが好きだ?」
「あ、えっとコーヒーで」
そう答えると魔王様は指をパチンと鳴らし、カップにコーヒーが注がれた。そのままカップは浮遊したまま私の目の前の机に置かれた。
私は突然目の前で見せられた魔法に感動しつつもこういうのって飲まなきゃダメだよなぁ、と思い一口飲んだ。
味はとても深みがあり、美味しかった。少し苦めだが、ミルクと砂糖も入っているのかそこまで苦くもなかった。
「お、おいしいです。ありがとうございます」
「まぁ、そう緊張するな。今日はゆったりとした対談にしようじゃないか」
魔王様は自分のカップに注いだ紅茶を飲み、笑った。
「改めて、私は魔王軍のリーダーであり、第二魔王。ディルシスト・レイ・フェイルズだ」
第二魔王。昨日セイラさんが行っていた通りのようだ。ちなみに昨日渡された紙には第二魔王様である目の前の方の情報が一番多く、中には意外と甘いものが好きという情報も書かれていた。きっとあの飲んでいる紅茶も甘いものなのだろう。
とりあえず改めて私も自己紹介をするべきなのだろうか。まだ高校生だし、わからないな……。
「え、えっと相田由美です。普通の女子高生…学生で、年は17です。こっちはコマで2歳です」
「わふっ」(よろしく〜)
こ、コマッたら!めちゃくちゃノリが軽いじゃないか!魔王様はニコニコとしたままだし、後でしっかりと注意しておかなきゃ…。
「うむ。セイラから聞いたぞ。コマはかなり強いそうだな」
「は、はい!」
「わぅん!」(コマはさいきょー!)
「ふむふむ、そうかそうか」
魔王様のその笑顔は怖いですぅー!
「ユミ、お前のことも聞いているぞ」
「あ、はい……私はその、役立たずなんですけど…」
「そうじゃない。お主、セイラの本を1日で読んだそうだな」
「え?はい」
確かに私は昔から本を読むのが早かった。それに勉強も苦手ではなかったのであの本は暇つぶしに読んでいたらあっという間に読み終わってしまった。中身も結構理解はできたがまだ読み直しは必要だろう。
「異世界の常識を1日で頭に入れるなんて普通でかないからな。それにユミは魔力量が高いんだろう?それはテイマー特有の特徴だということは知っておるな?」
「は、はい。本で読んだのでわかります」
「モールが言うにはお主の魔力量はとんでもないらしい。全く鍛えられていない状態だというのに『10』。磨けばかなりの魔力量……我ほどまで魔力量が及ぶ可能性があるそうだ」
「え?!そ、そんなに?!」
私、チートがないとか言ってたけどそこにチートがかかってたんだ!ていうか魔王様レベルの魔力量?!原石どころじゃないじゃん!ありがとう邪神様!
「我もどう活かしてやろうか考えたのだが、人間のことは人間に任せたほうが良いのだろう」
「人間のことは人間に?でも人間は勇者側じゃ……」
「そうだ。だからユミはこれから魔王軍のスパイになってもらうぞ」
「す、スパイ?!」
スパイってあれだよね?!諜報員で密偵でネズミってこと?!?!?!
「あぁ。しばらくはここで鍛えてもらうがな」
「え、でも…私なんかにスパイが務まるのかどうか…」
「お主は魔力量も多い。しかし、それ以外は普通の人間。人間に馴染むにはうってつけだ。それにその犬。強い上にお主に懐いておる。万が一でも問題はないだろうし、テイマーは人間側では貴重だそうだ。いい人材として保護してくれるんじゃないか?」
魔王様はそう言って私に微笑んでみせた。
確かに魔王様の言った計画で言えばうまくいくように感じる。まぁもとより私に拒否権はないので何も言い返しはしないが、正直リスクが高すぎて怖い。
「わ、わかりました!やります!」
「うむ!気合い充分なようだな。ある程度はこっちで訓練してから放すから心配するな。……して、気になっておることがあるんだ」
魔王様は確実に裏のある微笑みを見せて私の目をまっすぐに見た。
「ひゃ、ひゃい…」
「魔王と同格になりうる魔力量…気になるんだよな。試させてくれるか?」
「お、お手柔らかに…おねがいしまひゅ……」
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