第3話:愛犬強すぎて草

 いや…あの…うちの子強くない?え?もっかい見直す?


『体 力:10 生命力:10 魔力量:10

 魔 法:10 物 理:10 精 神:1

  運 :10 素早さ:10 知 恵:3』


『嗅覚10 野生の勘10 火魔法10

 風魔法10 土魔法8 水魔法7

 光魔法7 回復魔法6 闇魔法3  』


 ん?なにこれ?基本ステとかほぼ10じゃんね。精神と知恵はなんか犬らしくて可愛いなって感じじゃん。嗅覚とか野生の勘もわかるけど……え?


「う、うちの子強すぎませんか…?」


「た、確かに強いわね。数値だけで言ったらうちの四天王レベルよ…」


「えぇ?!」



 モールさんも目をパチクリとさせて驚いているようで本当にコマが規格外なのだと思った。セイラさんに至ってはコマを何度見もしては不思議そうな顔をしている。

 当のコマはくりくりな目でこちらを見上げてるし、可愛いけどこの子四天王レベル?『可愛い×強い=最強』ってことですね!(脳死)


「想像以上ですわね…。これはきっと魔王様も喜びますわ」


「な、なら良いんですけど…」


(コマ強い?コマすごい?ユミ、コマを褒めるの?)


「あぁん!可愛い!コマすごいよ!コマ偉いね〜」


 コマが悪いことでもしたのかというように心配そうにこちらを見上げるので、撫で撫でもふもふして褒めちぎる。コマはとてもうれしそうに尻尾振ってるし、尻尾を見ずともキャッキャと声をあげて喜んでいるのがよく分かる。


「……そうしてる分には可愛いのね」


「でしょ?!」


「あなたにめちゃくちゃ懐いてるのね。犬だけど猫撫で声で甘えるのね…」


「あれ?モールさんもわかるんですか?」


「え、えぇ…まぁ私は竜人だし、そいつの言ってることはもとより分かってたんだけどね」


 テンションの高い私にモールさんはなんだか引き気味な感じもするけど、コマの可愛さが分かってもらえてテンションバク上げだ。


 というかモールさんって竜人だったんだ。確かにトカゲみたいな尻尾があったし、これは竜人の特徴なのかもしれない。よく見れば目もきれいな琥珀色で爬虫類みたいに瞳孔も縦に切れ長で鋭い。


「な、なによ」


「い、いえ!ただどおりで目がきれいなんだなぁ…と」


「ふ、ふんっ!早く部屋に戻りなさいよ!」


 え、え〜?!褒めただけなのに…ちょっと気難しい人なのかもしれないな。


 そうしてモールさんに追い出された私たちは来た道を戻り、部屋に帰った。


「私は魔王様に報告に行ってきますわ。お二人は食事の時間に慣れば呼びに行くので、ゆっくりしていてくださいね〜」


「は、はい!ありがとうございます」


 セイラさんは部屋につくとそう伝えて、部屋の前で別れた。セイラさんは呼びに来てくれるようだし、このままコマとゆっくりしていよう。


 コマは慣れない部屋ということもあり、くつろぐのをためらっているようだった。


「コマ〜おやつ食べる?」


(たべりゅっ!)


 おやつという言葉を発した途端、コマはすぐに反応し私の前におすわりした。あぁ…いっつもおやつって言った時、こういう反応してたんだなぁ…とほっこりしつつもコマが大好きなささみジャーキーを取り出した。

 そういえばこっちで暮らすということはこういったおやつも貴重になるのでは?しかし、獣族といった種族もいるのだからワンチャン似たようなおやつがあるのかもしれない。


 あとで聞いてみようとは思うがおやつはもっと慎重に消費していこう。


 コマにおやつをあげて2人でふかふかなベッドの上でくつろぎ始める。コマはジャーキーをあっという間に食べ終えて、私の足の上で甘えているようだ。ゆっくりと撫でながら私はコマに質問をした。


「コマってさ炎吹いてたけどさ、どうやって吹いたの?」


(ん〜?なんとなく…攻撃しなきゃってなって吠えたら出てた!ユミのこと守ってたんだよ!えっへん!)


 コマは元気にそういうと私の方をキラキラとした瞳で見る。これは褒めてほしいんだろうな。愛らしいやつめ!


「しゅごいな〜コマちゃんは!天才!天才犬だ!」


(えへへ!もっと褒めて!)


 こうして言葉が伝わるようになるとコマが喜んでいるかとかよく分かるし、何よりコマがこんなにも私のことを好いてくれていることが嬉しい。


 でも、コマも私もこれから魔王軍の一員として働き、戦っていくことになる。もしもの時にコマに頼りっぱなしだと飼い主としても、人としてもダメだ。私もコマに頼るのではなく、一人でも戦えるようになろう。


 そう私は決心してコマに向き直った。


「コマはさ、これから戦うようになるかもしれないんだけど、そういうの嫌じゃないの?」


(コマはユミのためなら頑張れるよ!)


 コマはそう言って『わふ!』と鳴いた。


(コマはユミのこと大好きだからね!ユミは?コマのこと怖いとか思ってない?)


 コマは不安そうにこちらを見上げて私の顔色を伺った。


「そんなの…大好きに決まってるじゃん!コマのこと怖いだなんて思ったこと無いよ。コマは私にとって一番大切で大事な家族で親友だもん」


 コマの不安を吹き飛ばすようにコマの頭を強めに撫でた。


 コマだってまだ2歳。どれだけ強くったって中身はまだまだ犬だし、幼いんだ。コマがどれだけ強くなろうとコマは大事な家族であり、親友。


 守られてばかりではいけない。私もコマのことを守っていくべきだ。それが飼い主としての努めだろう。


 それを私は強く胸に刻み込み、この世界でコマとともに生き延びようと決心した。

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