第2話:魔王城ってどこですか?!

 あたりは禍々しい城の玉座の間って感じの内装。そしてこちらを睨む人たち…いや人なのか?角は生えてるし、翼は生えてるし、そもそも人型なのか怪しいヤツまでいる!そして玉座に座る強そうな人!全身真っ黒な甲冑で目の部分だけ青い光がぼんやりと輝いているのが見える。


 …………オワタ\(^o^)/


 どうみたってラスボスじゃん!これなんか、魔王様とか言われててもおかしくないもん!


「…魔王様、召喚には成功したようです」


 ほら!あの甲冑マンの横にいる肌の青い女性が魔王様って言ってる!予想的中!ヤッター!じゃねぇよ!!!!!

 ていうか召喚?!もしかしてなにかしらの黒魔術的なやつに巻き込まれた感じ?!あの魔法陣が光ってそういうことだったりするのかな?!?!?!


「見たところ人間の少女と…犬…ですかね?なぜ人間が…」


 犬…そう犬!コマは?!コマは無事なのか?!


 焦ってコマの方を見ると私の腕の中で震えてあたりを威嚇している。可愛い巻き尾も垂れ下がっており、不安がっているのは一目瞭然。とりあえずコマを抱き直して、コマを落ち着かせるためにも撫でる。


「…ふむ…おい、そこの少女」


「は、はいぃ!」


「名を名乗れ」


 なんだこの高圧的なオーラ!高圧洗浄機かってぐらい私の精神を綺麗さっぱりこすぎとっていく…。って上手いこと言ってる場合か!()


「あ、相田由美です…アイダが名字で、ユミが名前ですぅ…」


 焦って余計なこと言っちゃった!絶対に名字とかどうでも良かったでしょ!


「あっ…こっちはコマで、うちの愛犬です…」


「ふむ…見たことのない犬だな」


「し、柴犬っていう犬種で私の出身国原産の犬なんです」


 も、もしかして犬好き?犬派?コマに結構興味持ってるみたい。でも当のコマは威嚇しまくり、ムキ顔しまくりなんですけど!コマよ…落ち着け…落ち着いてくれ……!


「ハハハ!見ろこのコマという犬、我を見ても服従するどころか威嚇しておる!」


 何だこの人…突然笑い出したかと思えば…これはコマのことを褒めているのか?


「こ、この犬!魔王様に威嚇など…不敬だぞ!」


 そう言って青い肌の女性がコマを目掛けて歩いてくる。顔は怒りでいっぱいだし、これはまずい!殺される!


 急いでコマを抱き直して、どう取り繕おうかと考えているとコマが私の腕から飛び出した。


 私を守るように吠え、威嚇を続けている。ていうかコマ強気じゃない?!元々度胸のある犬だけど、明らかに強そうな人にビビってないんだけど!流石にこれは死んじゃうって!戻れ、コマ!


 流石にまずいと考え、コマを引き戻そうとしていると目の前から青い女性が消えた。


 まばたきをした瞬間、女性がコマに向かって黒い塊をぶつけようとしている瞬間だった。


「コマ!」


 そう叫んだ瞬間だった。


 コマの口から大きな吠え声とともに炎が吹き荒れた。


「ワンッ!」


「うおっ?!」


 その炎は見事に女性に命中。女性の向けていた黒い塊もその炎によって燃やされたのか消えていた。


 女性は何が起こったのか分かっていないようで、自身の焦げた服の裾を見つめている。少し経ってハッとした女性は再びコマにあの黒い塊をぶつけようと構え直した。


「フフ…フハハハ!」


 目の前の信じられない出来事に何も動けないでいると甲冑マンは笑い出した。


「ハハハ……ルン、下がれ」


「っ!…はい」


 ルンと呼ばれたその女性は手の黒い塊を握りつぶすようにして消すとコマを恨めしそうに睨みながら下がった。


「ふむ、ユミと言ったか?その犬はなかなかに面白いじゃないか」


 突然話しかけられて私は何も反応できずにいた。


 すると甲冑マンは玉座から立ち上がり、ゆっくりと私たちの前に歩いてくる。立ち尽くす私はそのあまりにも強いオーラに動くことができなかった。

 対するコマは私の足もとに立ち、私を守るように威嚇している。さっきの青い女性のときとは違い、尻尾が下がって震えているのでやはりこの甲冑マンは強さが桁違いなのだろう。


「ワン!わぅん!」


「こ、コマ!落ち着きなさい!…あ、あのこの子の無礼は謝罪します!なのでどうかこの子の命だけは…!」


「ふむ、ならばお前自身の命はどうでも良い…というのか?」


「っ!……ひ、必要であれば…」


 なんて恐ろしいことを聞いてくるのだろう。しかし、コマが大切なのは確か。コマが助かるというのなら私は潔くこの命を差し出そう。

 そう決心して目を瞑っていると甲冑マンはクツクツと笑った。


「案ずるな、命は狙わないさ。今のところは…な」


 甲冑マンの顔のあたりの炎が一層強くなり、気が高ぶっているのだろうと予想できた。あと、そのタメは怖いですぅ……。


「その犬はコマだったな。そなたも警戒するな。ユミの命は保証してやろう」


「…わぅん」


 コマもこいつの言っていることが理解できるのか珍しく他人の言うことを聞いて、お座りをした。尻尾は未だに下がっているのでまだ完全に警戒は解いていないのだろう。


「なぁ、ユミよ」


「は、はい…」


「我らが魔王軍に所属しないか?」




 ………はい?



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