第38話聖女ちゃんはおっさんを誘惑する

クーデター事件以来、3日程暇をもらえた。


何でも、お嬢様は第一王子派や第二王子派の粛清に忙しいらしい。


暇なので、市場で魔道具を見たり、吉○家の牛丼のレトルトを大量に仕入れた。


事態が収まったら、お嬢様や王様が遊びに来て、牛丼を美味い、美味いと散々食い散らかすからな。


聖女ちゃんや教皇様も好きみたいだし。


俺が大量の買い物袋を抱えて常宿の俺の部屋を開けると。


「はあ?」


何故か部屋の広さが倍になっている。


「おじさま。お帰りなさい」


「せ、聖女ちゃん?」


何故か聖女ちゃんがいる。


「おじさま、あのね。同じパーティだし、一緒に住んだ方がいいよね。だから部屋を改装させてもらったよ」


「へぇ?」


ますます間抜けな声が出る。


いや、同じ部屋で生活するとか、ダメなヤツだろ?


信頼してくれるのは嬉しいが、世間体というものがある。


「おじさま、私、お風呂に入って来るね。だからね、えっと、いやいいの」


何故か真っ赤な顔でそういうと、いつの間にか作られた浴室に入って行く。


いや、前は風呂もトイレも共同だったけど、隣の部屋を3つ程ぶち抜いたらしい。


俺の部屋は前の4倍広くなった上、キッチンや収納も一新されて、風呂にトイレもある。


「俺、どうしよう」


ほとほと困り果てる。


聖女ちゃん(ミア)Side


私は大胆な行動に出る事にした。


おじさまの正妻の座を勝ち取るには既成事実を作るしかない。


なら、同居して、隙だらけで接すれば、いくらおかたいおじさまでも魔がさして。


私はおじさまに荒々しく胸を揉みしだかれながら、ベッドに押し倒される様を想像して、キュンキュンして来た。


「お風呂に女の子が入っていたら、覗きに来るのがマナーだよね? きっと、おじさまは来てくれる筈。誠実な方だもの♡」


お風呂を覗かれて、そのまま行為に及ぶ所を想像して、おしっこじゃないのが出てきた。


あん、今日、私はおじさまのモノになるんだわ。


…………


…………


…………


「10330、10331、10332」


30分近く経つのに一向におじさまは来てくれない。


私は慌ててお風呂を出ると、バスタオルを体に巻き付けて、おじさまがいるリビングに行った。


「おじさま!」


「へぇ? どうしたんですかい? 聖女ちゃん?」


「どうしたんじゃないですよ! 乙女がお風呂に入っているんですよ。この状況わかりますよね?」


「へい。わかっておりやす。間違っても、洗濯物を取りに行って、間違って、聖女ちゃんのお風呂上がりと鉢合わせになんてないように控えてやした」


え? 何言ってんの、おじさま? ここは覗きに来るのが常識でしょ?


「おじさま。私達は一緒に住むんですよ。これ、同棲ですよね?」


「い、いや。その言い方は語弊を生みやす。あくまで同居で、俺は自重しやす」


同居? 同衾と言って欲しい位なのに!


「おじさま! 酷いよ。乙女がお風呂に入っていたら、覗きに来て、そのまま、セ、セックスするのが常識でしょう?」


「へ?」


おじさまがあたふたしているが、私もせ、セックスなんて言ったから、顔が火照る。


これじゃ、私が痴女みたいになっちゃう。


「か、勘違いですからね。私はお風呂で、おじさまが覗きに来てくれるのを期待していたとか、そのままの勢いで襲われて、セックスしようとか思ってなんてないですからね!」


「もちろん、わかっておりやす。俺は勘違いしないおっさんでさ」


ああああああ!


勘違いしてる!


おじさまは紳士的過ぎる!


かといって、このまま抱いて欲しいだなどとは恥ずかしくて言えない。


「わかりました。おじさまがそういうつもりなら、罰として、一緒に添い寝してもらいます」


「は? それはまずいのでは? 聖女ちゃんも年頃の娘でさ。それなのに?」


「おじさま、わ、私ね、西部戦線で凄く頑張ったの、だからご褒美が欲しいの、だから」


「俺なんかの添い寝でいいですかい?」


「うん、おじさまに添い寝してもらったら、きっと心が落ち着くの」


もちろん、風呂上がりのバスタオルを巻いただけのままで添い寝をしてもらう魂胆だ。


乙女心がわからないおじさまも流石に裸の女の子と同じベッドに入って、何もしないなんて非常識な事はしない……筈。


なんか自信がなくなって来た。


いや、何もしてくれなかったら、朝、布団の中でもそもそして、おじさまのズボンを下ろして、フェラをすれば、きっと!


私、痴女じゃないよね? おっさん専用種付けメイドとして当然の行為だよね?


☆☆☆


聖女ちゃん(ミア)


「おじさま。約束のキスをお願い」


私はバスタオル1枚でおじさまと同じお布団に入っていた。


お堅い、おじさまはきっと拒否するかなーって。


お堅いのは......だけ。いけない、私ってば、なんてはしたない。


でも、おじさまは私と同じお布団で添い寝してくれることに同意してくれた。


「へぇ? キス?」


「おじさま、酷いよ。西部戦線から無事帰還したら、あのキスの続きを」


全部は言えなかった。恥ずかしくて、思わずお布団を被る。


再びお布団から顔を出すと、勇気を出して、こう言った。


「お願い。おじさま。乙女に恥をかかせないで」


そう言って、目を瞑って、キス待ちの顔を作る。


すると。


ちゅッ


もうおおおおおお!


お・じ・さ・ま・!


おじさまはまたしても私のおでこに口づけして、あっちを向いてしまった。


こうなったら。


私はバスタオルを脱ぎ捨てると、素肌でおじさまに密着した。


おじさまは上半身裸だ。


「ぐぉおおおおおお」


ぐすん。


おじさまは既に深い眠りにおちていた。


私もおじさまの逞しい背中で、いつの間にか寝入ってしまった。


♡♡♡


ちゅん、ちゅん


朝ちゅんの小鳥の声だ。


「はっ! しまった!」


私は朝のおじさまのパンツを脱がしてフェラをするご奉仕種付けメイドとしての義務を忘れていた。


既におじさまの姿はなく、身体にはブランケットが巻かれていた。


か、完全敗北だ。


私は深い悲しみの底に落ちて行った。

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