第34話お嬢様は妄想が止まらない

魔薬を飲まされて、もうだめだと思ったその時、おっさんがさっそうと助けに来てくれた。


やっぱりおっさんは私を助けに来てくれた......でも。


私は魔薬を飲まされてしまった。


もう、頭の中が淫猥な気持ちでいっぱいだ。


おっさんにキスをしてもらいたい。


おっさんに乳を揉んでもらいたい。


おっさんに大事なところが全然隠せてないパンツを間近で見てもらいたい。


気のせいか、いつもと同じような気がするけど、気のせいだ。


私はこれから淫らな性にしか興味がない、はしたないおっさん専用の奴隷になるしかないんだ。


それがせめてもの救いだ。


「―――――~~~~ッ!!!!」


私は驚いた。


気が付いたら、おっさんに接吻されてた。


ああ。これはきっと夢なんだ。


もう、私の脳は魔薬で犯されて、ありもしない幻覚を見ているんだ。


「夢だから言うぞ。──私はおっさんのことが大好きだぞ。今のキスは私のファーストキスで、とても嬉しかったぞ。そして、おっさんに私が小娘じゃなくて、ちゃんと成熟した女で、おっさんと毎日子作りをしたくて、したくて仕方ないんだってことに気が付いてもらって......そして、そし......て」


「あの、その、お嬢さ……ま?」


「子供は10人はもうけよう。きっと何人かは英雄になるぞ。その子の子供も......孫も、子孫も......きっと、たくさん英雄が生まれるに違いない」


「だから、そのお嬢様?」


「安心しろ。これは夢だ。だから、本当のことが言えるんだ。......おっさん、愛してるぞ」


ああ、このまま、キスからの流れで、無駄に発育しすぎた乳を荒々しく揉みしだいて、そのままエッチしてくれれば、もっと幸せになれるな。


どうせ夢なんだし。


せめて私の願望位、叶えてよ。


「あの、お嬢様、胃の洗浄は終わりやしたぜ」


「へ?」


段々、正気に戻って来た。


さっきまでの奇妙な淫らな気持ちがなくなって、いつもと同じおっさんへの気持ち。


おっさんにキスをしてもらいたい。


おっさんに乳を揉んでもらいたい。


おっさんに大事なところが全然隠せてないパンツを間近で見てもらいたい。


あれ?


なんかいつもと同じ気持ちのような。


「お嬢様、安心してくだせえ。飲んだ魔薬は全部吐き出させました。だから安心してくだせえ」


「え?」


え? え? さっきの夢じゃないの?


リアル?


私、なんてはしたないことを?


「安心してくだせえ。わかっておりやす。お嬢様は忌々しい魔薬に犯されておかしなことをうなされたように言ってたんでさ。俺のこと好きだなんて、光栄ですが、ありえねぇ話でやす。だけど、安心してくだせえ。俺は勘違いしないおっさんでさ」


「え? 私、魔薬に犯されておかしくなったんじゃ?」


「俺が生活魔法で水を生成して……その……お嬢様に口移しで胃の中に水を送り込んで洗浄しやした。……す、すいやせん。危急の事とはいえ、お嬢様の唇を卑怯にも奪うなど」


「……え? いや、いいんだ。ちょっと魔薬の影響でおかしくなっていたようだ。だ、だから勘違いするなよ。私がファーストキスをおっさんに捧げられて嬉しくて、嬉しくて仕方がないとか。できればこのまま押し倒して私の初めても捧げる事ができたなら、どんなに幸せだろうだなんて、これっぽっちも考えていないからな。間違っても、責任とってもらって、このまま結婚届を市役所に出しに行こうとか、実はもう、結婚届は書いてあって、後はおっさんにサインしてもらうだけとか、絶対違うんだぞ!」


「……お嬢様。まだ、ちょっとまだ魔薬の影響が?」


は!? しまった。


動揺して、ついヤバイこと言っちゃった。


これじゃ、好きバレになってしまう。


……でも、こんなチャンスを逃す訳には。


この部屋は王宮の別棟で、人気はない。


察するに、警護の人員はおっさんに全員爆散されたのだろう。


……つまり。


密室におっさんと二人っきり。


そして、私は剥かれて、下着しか身につけていない。


ゴクリと喉がなる。


「……あ、あのな、おっさん。なんか、おっさんにな、せ、接吻されるとだな。なんか淫らな気持ちが収まるような気がするんだ。もしかして、おっさんの唇には魔薬を打ち消す効果があるんじゃないかな? って。いや、絶対あると思うぞ。だ、だから」


ああ、だめだ。ここでという所で、恥ずかしさに負けて、接吻して欲しいと言えなかった。


接吻してもらった後、乳を揉まれると、魔薬の効果が薄まるような気がすると言おうと思ったんだけど。


「さすがお嬢様。俺は胃の洗浄だけでなく、クリアの魔法で、魔薬の毒素を消しておりやした。だから、そんな気がしたんだと思いやす」


「そ、そうか! な、なら、頼む! か、勘違いするなよ。魔薬に犯されたくないだけで、おっさんにたくさん接吻してもらいたくて、もらいたくて仕方ないとか、もしかしたら、乳を揉んでもらった方が効果が高いかもしれないとか、思ってないぞ!」


「わかってまさ。お嬢様。任せてくだせえ」


そう言うと、おっさんは私に顔を近づけて来る。


やった!


私は慌てて目を閉じて、キス待ちの顔を作る。


柄にもなく、しおらしくなってしまい、目を閉じて、少し目が潤んで来た。


念願のおっさんとの接吻、しかし。


チュ


おっさんは私の額にそっとキスをした。


「治癒の魔法は何も唇を合わせなくても、効果がありやす。これ以上お嬢様を穢す訳には生きやせん」


もぉおおおおおおお。


おっさんの馬鹿!


乙女心がわかんな過ぎる。


私はもう、接吻どころは最後の一線まで一気に行きたい位の気持ちなのに!


囚われていて、救い出されたんだぞ!


普通、ここはキスシーンからからのベッドシーンだろ!


「お、おっさん。その……ありがとうな」


「へい。俺は当然のことをしただけでやす」


私は気持ちが通じないものの、おっさんのカッコ良さに、更に惚れ直してしまった私だった。

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