第37話おっさんを追放した勇者(笑)達の受難5

勇者(笑)レオンSide


俺達は気を取り直して、冒険者ギルドに向かった。


いちいち細かいことを気にしても仕方がない。


俺がおっさん以上の男であることをわからせればいいだけだ。


「君、冒険者パーティ銀の鱗なんだけど金になるいい仕事はないかい?」


俺は新人と思しき受付嬢に、パーティ名をさりげなく知らせた。


新進気鋭の俺達のパーティ名は流石に予め聞かさせれているだろう。


俺が剣聖であると気がついたら、腰を抜かしかねないな。


クククッと、少々意地の悪い笑みが出る。


まあ、このギルドに勤める以上、通過しなければならない儀礼だ。


俺は、この新人受付嬢が慌てふためく様を想像し、心を躍らせていた。


「依頼なら掲示板で探してください。普通、皆さん、そうされてますよ」


「……もしかして、俺のことを教えてもらってないのか?」


「は?」


「仕方ないな。新人ならやむを得ないか。俺は固有スキル剣聖の持ち主のレオンだ」


さぞかし腰を抜かせて驚くだろうな。


面白い展開になったぞ。


まあ、俺が愉快になるから、構わんか。


「存じ上げておりますが、それが何か?」


「は?」


この受付嬢は一体何を言ってるんだ。


新進気鋭の銀の鱗だぞ?


固有スキル剣聖の持ち主の俺様だぞ?


「レオンさん。いつまでも新進気鋭のパーティのつもりでいないでくださいね。あなた達はもう、信頼も実績も何もない落ちぶれたパーティなんですよ」


「……な、なんだと?」


「実績がないのにいつまで大物気取りなのですか? おっさんのように実績を積んで、有名になってください。いい加減、気がつきませんか?」


「ふふふっ。言えてます。おっさんみたい……なんて、絶対無理だと思うけど」


なんと、新人受付嬢達にすら舐められる始末。


これも、あのおっさんの陰謀のせいだ。


あいつが何か影で悪さをしているに違いない。


「……ぶっ殺してやる」


「誰をですか?」


突然、殺気を感じた。


受付嬢シアだ。


昨日、シアの短剣捌きが見切れなかったことを思い出す。


「今日の所は見逃してやる」


捨て台詞を残して去るが、これも全ておっさんのせいだ。


『殺してやる』


俺を不当に貶め、罠を張り巡らして、俺が手にする筈だった手柄を横取りして、俺の未来を邪魔しているんだ。


当然の報いだ。


俺はおっさんを殺すと心に決めると、ギルドを出た。


☆☆☆


「今日のご飯代どうするの? あーし、ひもじい」


「レオンがおっさんを追い出さなきゃ、はあ」


女共の無神経な発言にこめかみがピクピクする。


誰も見ていなければ、殺してやるところだ。


「あれ? レオンさんじゃないですか?」


突然涼やかな声をかけられて驚いて、声の方を見る。


「……ヒ、ヒーラーのミア……そ、それと?」


そこにはあれ程抱きたかったヒーラーのミアと見知らぬ美少女がいた。


「お前。どこに行ってたんだ? 今からでも遅くない。さっさと戻って来い。今なら特別に許してやる」


「すみませんが、今はおじさまのパーティに属しています。それに脱退の宣告はしましたし、ギルドにも正式な手続きを踏ませて頂きました」


何だと?


この俺がパーティに誘っているんだぞ? 喜び勇んで参加するのが普通だろ? そして、喜んで股を開くべきだろう? この女、頭おかしいのか?


「いいから俺のパーティに戻って来い。そのおじさまとやらなんて、絶対うだつが上がらい奴に違いない。例えば、あのおっさんみたいにな」


「そうだよ。ミア、戻っておいでよ。おじさまって、あんた、あのおっさんにも気持ちあったみたいだし、悪い癖だよ。あのおっさんなんてあーしのこと、いつも気持ち悪い目で見てたんだよ」


「そうだよ。あたいのことも気持ちが悪い目で見てたんだよ」


いいぞ、エミリアにアンネ。


最近、いい働きが何もなかったから、少しは見直したぞ。


「おっさんに見られて気持ち悪い? おっさんは英雄だぞ! イケオジだぞ! それを見られて気持ちが悪い? 気持ちいいでしょ? 誰もがおっさんを見て素敵だとは思いませんか? 思いますよね? 思わないわけがないですよね? 思うでしょう? 思いなさい? ……思え!」


突然、もう一人の美少女がブチギレをかます。


だが、ちょうどいい。


俺のコレクションにミア共々加えてやる。


俺の魅了のスキルで俺のモノにしてやる。


「まあ、おっさんに好意を持っているのはわかるけど、あの程度の男に惚れ込むなんて、君達はまだ若い。もうちょっと、上を見るべきだよ。……例えば、俺とか」


そう言って、魅了のスキルを展開して二人を見る。


「ミアちゃん。こいつ、チャーム系のスキルを使ったぞ」


「え? まさか、それは禁忌じゃ?」


「私はディフェンスシステムのスキルがあるし、状態異常のスキルに反応するスキルも持っているから、わかる」


ヤバい。


バレた。


それにしても、なんでこの二人は俺のスキルに無反応なんだ?


剣聖の俺のステータスを上回る人間なんて、ザラには、いない……筈。


「おっさんの悪口も言っていたな。……ここは」


「そうですね。エミリアさんもルビーさんも聞き捨てならない発言をしてましたし」


「え?」


「は?」


「い、一体何を?」


「安心して、エミリアさん。決闘用結界はもう、展開しているから」


「へ? ヒーラーのお前ごときが何言ってんの?」


ミアが重戦士のエミリアに詰め寄る。


意味がわからない。ボコボコにされるつもりか?


ドカンッ!


爆音と共にエミリアが爆散した。


「な、な!」


「ひぃ」


思わず驚きの声をあげてしまう。


魔法使いのルビーは尻餅をついてしまう。


「あなたは私がお仕置きをしてやるぞ」


もう一人の美少女がルビーに詰め寄る。


「や、止めて。わ、私はただ、本当のことを!」


「おっさんの短刀の投擲に助けられたことないの? あなたの目は節穴? おっさんはあなた達を守るために、あなた達を見てたに決まってるんだぞ!」


「あのおっさんが? 絶対気持ち悪い想像してたに違いない。あたいのこと舐るように……」


「それは光栄に思え!」


「え?」


ルビーが驚きの声を上げると、美少女はヒョイとルビーを持ち上げて。


ビリビリビリビリ


ルビーの体を紙人形みたいに破いてしまった。


「ひ、ひぃ!」


恐怖のあまり、逃げることができねえ。


「アリスちゃん、この人、おじさまを追放した上、所持金とか全部盗ったんですよ」


「それは罰が必要だな」


そう言うと、二人に軽々と両肩を掴まれて、持ち上げられる。


「一体何を?」


「決まってるでしょう?」


「「股裂きの刑♡」」


ビリビリビリビリ


おかしな音と共に、俺の体は股から真っ二つに裂かれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る