第18話 メリーさん再び!

 翌朝、ギルドで待ち合わせした僕と狩り女のみんなは意気揚々と西門を目指したんだ。


「結局、ゴタゴタして昨日は買取してもらえなかったから、今日の分も合わせて買取してもらいましょうね」


 セツさんがそう言ってホクホク顔をしている。


 それもそうか。昨日だけで十体のジュボッコだからね。今日も同じぐらいの数をハント出来れば数日休んでも大丈夫なぐらいの稼ぎになるからね。


「ケーイチくん、今日はよろしくね」


「はい、皆さん。よろしくお願いします」


 馬車も順調に進み西門に着いた僕たちはさっそく大森林へと向かう。今日はお昼ご飯を狩り女の人たちが作ってきてくれているので、今から午後三時までジュボッコハントに費やすのだ。


「あまり奥には入らないようにしましょう」(セツ)

「そうね、昨日みたいに上位種が出るかもしれないし」(ライラ)

「セツ、今日の目標は?」(ハンナ)


「今日も十体よ。ケーイチくんは?」


「僕は五体ぐらいを考えてます。昨日の分もありますから今日はそれほど数をハントしなくても良いかなって」


「それじゃ、十五体目標に頑張りましょう!」

「オオーッ!!!」


 という訳で大森林の浅い部分を回ってるんだけど、6級〜7級ハンターパーティーも沢山いて横取りしたな、いやお前たちだろって喧嘩がそこかしこで起こってたんだ。浅い部分ではハントは出来そうにないね。


 僕たちはそんな喧騒から離れる為に少しずつ奥へと入っていき、6級パーティーでももうすぐ5級になるようなパーティーしか居ない場所まで進んできた。


「おっ! 狩り女にケーイチじゃないか。ここらは既に何パーティーかいるし、この先の西方面は危ない魔物や魔獣が居るから、南に向かうと良いと思うぞ」


 昨日ギルドにいたパーティーが僕たちを見て教えてくれる。


 僕たちは有難うとお礼を言って南寄りに進路を変えた。西が危ないのはジュボッコ以外のそれなりに強い魔物や魔獣が出てくるからとの事。

 それらは6級パーティーでも怪我する強さがあるからって話だった。


 南寄りに進むと、出るわ出るわ! ジュボッコたちがワラワラと出てきた。

 その数、十二体。


「ライラ、ファイアチップをお願い! セツは大盾でヘイトを集めて!」

「了解、セツ!」

「任せて!」


 えっと、僕は?


「ケーイチくん、私が討ち漏らしたらお願いね!」


「はい、セツさん!」


 ライラさんのファイアチップの魔法は正確にジュボッコの頭頂の枝葉に火をつける。チップの名の通り、パチンコ玉ぐらいのサイズの火を飛ばす魔法なんだけど、ライラさんは一度に五つ撃っていた。それを二回。二発外れたけど、計八体のジュボッコの頭頂に火がつくと、ジュボッコたちは何とか消そうとアタフタしている。

 そこにセツさんが切り込み枝葉を斬っていく。

 

 残り四体はハンナさんのヘイト集めによって盾に向かって突っ込んでいく。僕は突っ込んで弾き返されたジュボッコの頭頂を撫で斬る。


 時間にして十分ほどで十二体のジュボッコをハントし終えた。


「やっぱりケーイチくんが居てくれるだけで早く終わらせる事が出来るわ!」(セツ)


「臨時と言わずにずっと一緒に組んで欲しいわね」(ライラ)


「ケーイチくん、どうかな?」(ハンナ)


「皆さん、狩り女というパーティー名なんですから僕が入ると変更しないとダメになりますよ。まあそれは建て前なんですけど、せっかくのお誘いですけど僕はソロで頑張ってみようと思ってますから、今回のように臨時で組む形で今後もお願いします」


 僕がそう頼むと三人とも仕方ないという感じで頷いてくれた。


「しょうがないよね。一人でも強いものね」(セツ)

「まあ、今回は諦めよう」(ライラ)

「私はいつでも良いからね、ケーイチくん」(ハンナ)


 セツさん、実は強いのは僕じゃなくて武防具なんです……

 ライラさん、さすがは知性ある魔法士さんです。その諦めの良さはグッドです。ただ、今回はという言葉に少し怖さを感じます。 

 ハンナさん、何がいつでも良いんでしょうか? イケナイ想像をしてジュニアがオッキしそうになりますから意味深な言葉は止めて下さいね。


 それからも順調にハントを続けて、お昼には三人が作ってくれたお弁当を食べて、更にハントを続けた。二時半になって戻ろうという事になった時には、狩り女は合計三十一体。僕が合計十八体のジュボッコをハントしていたんだ。


「コレでライラの杖を新しく出来るわね!」

「セツの剣もでしょ!」

「私は今回は装備の更新は必要ないから」


 狩り女の皆さんが嬉しそうに話してるのを聞きながらギルドに戻った僕たちに更に嬉しい話が。


「職人組合からジュボッコ素材を買取りしたいとの申し出があったので、一体の買取り金額が銅貨五枚から大銅貨一枚に上がってます」


 コレは凄いよね。僕が昨日の分も合わせてジュボッコ二十八体。討伐報酬が一体につき大銅貨五枚、買取り金額が一体につき大銅貨一枚だから……

 大銀貨一枚と銀貨六枚と大銅貨八枚で前世の円に換算したら凡そ十六万八千円だ!

 二日でこの金額を稼ぐなんて前世では絶対に無理だったよ。


 狩り女の皆さんは、昨日の分と合わせてジュボッコ四十一体だから、大銀貨二枚と銀貨四枚と大銅貨六枚だね。みんなとても素敵な笑顔だね。


 で、僕はコソッとレイミーさんにジュボッコの上位種が一体ありますと話すとデスグリズリーを入れた倉庫に案内された。


「さあ、ケーイチくん。ここに出して」


 言われて僕はテツジュボッコを収納から出す。


「テツジュボッコね。さすがはケーイチくんだわ。テツジュボッコにも依頼が出ていて、討伐報酬が大銀貨三枚、買取り金額が銀貨二枚なの。今ここで渡しておくわね。それと、やっぱりケーイチくんは7級のままじゃ変に目立っちゃうから、6級に昇級してもらうわね」


 それもそうか。最下級の僕が余り魔物魔獣ハントを多くしてたら目立っちゃうよね。


「分かりました、レイミーさん。よろしくお願いしますね」


 今回は素直に昇級を受け入れる事にしたんだ。


 で、狩り女の皆さんに昇級する事とまた機会があったら臨時パーティーを組みましょうと話をして家に帰る事に。


 途中でサチへのお土産として鳥串、前世の焼き鳥を買って家に向かうと、家の前に見覚えのある馬車が……


 あれ? メリーさんの馬車だよね? まだこの村に居たんだ。って、僕の家の前にどうして停まってるのかな?


 不思議に思いながらも我が家に近づくと、メリーさんとサチの声が聞こえた。


「だから、本当なんです〜、私はケーイチ様とお知り合いなんです! 信じて下さい座敷童様!」


「それはケーイチに確認してみねば分からぬのじゃ。なので敷地内には入れたが家の中に入れる訳にはいかぬ」


 ああ、僕が中に居ると思ってるのかな。ナタリーさんも居るね。ネルソンさんたちは見えないなぁ。


「メリーさん、お久しぶりです。まだ村に居られたんですね!」


「あっ!? ケーイチ様!! 良かった〜、出会えて!! 助けて下さーいっ!!」


「えっと、とにかく落ち着いてください。どうぞ家の中に入って下さい。ナタリーさんもどうぞご一緒に。馬車は敷地内に馬と一緒に入れておいて下さい。あ、家の中は靴を脱いで下さいね」


 僕はメリーさんとナタリーさんに言って取り敢えず家の中に入って貰ったんだ。鳥串、稼ぎが良かったから奮発して百本買っといて良かったよ。


 二人とも何だかやつれてるように見えるからね。たくさん食べて貰おう!

 


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