第23話 隠者が呼んでる!
認定証が届いたけど無視してたら遂にそれぞれの神殿から神官がやって来たんだ。
まあ、僕もフィルちゃんもハントに行ってたからこの人たちは何時から待ってたんだろうね?
「あの…… どなたですか?」
分かっていても尋ねるのが僕という人間の良い所でもあり、悪い所でもある。今日は薬草もいつもより多くハント出来て、なんとナリちゃんがお泊りに来るから最高にご機嫌だったフィルちゃんが家の門前に居る人たちを見て不安そうになってしまった。
さっきまでニコニコ笑顔だったのにこんなに不安そうになるなんて、僕としてはこの人たちに怒りを覚えるよね。
「ん? なんだ、君は? この家の関係者かね?」
前世でいうスーツに良く似た服を着た人が偉そうに僕にこう言ってきたんだ。なので僕はその人を無視してフィルちゃんの手を引いて門を開いて敷地内に入った。
「なっ!?」
「おお! 入ったぞ! 後に続け!」
そう言って入って来ようとしたけど入れる訳ないよね。
「グワッ! や、やはり入れん!」
「何でこの子どもたちは入れるのだ?」
「君、何か知ってるなら教えなさい!」
三人の大人がそう言ってくるけど僕はフィルちゃんに先に家の中に入っていてねと言う。
「うん、ケー兄。ナリちゃんが来るまでに何とかなるかな?」
「大丈夫だよ。ちゃんとお話して帰ってもらうから」
「コラ! 私たちを無視するんじゃない!」
「なんて子どもだ! 大神官様が足を運んで来られたのに!」
ギャーギャー言ってるのを無視してフィルちゃんが家の中に入るのを見届けてから僕は大人たちに向き直った。そして、
「僕はどなたですかとお聞きしましたよね? それに答えもせずに質問してくる人にまともに応対するつもりはありません。お引取りください」
僕がそう言うと更にギャーギャー言い出す大人たち。
「こちらに居られる方を誰だと思ってるんだ!」
「なんて礼儀知らずの子どもだ!!」
「早く我々を
煩いなぁもう。どっちの神様の宗教なんだろうね? どっちにしてもまともに受け答えも出来ない人たちが信者で大丈夫なのかな?
そう思ってたら、また三人ほどの大人がナリちゃんに案内されてやって来たよ。でも、新たにやって来た人たちは門の中に居る僕を見て丁寧に頭を下げてきたんだ。
「ケーイチ様とお見受けします。私はラナ神様にお仕えするハーヴェと申します。一度、お手紙を差し上げたのですがお返事をいただけなかったのでこうしてやって参りました。もしご都合がよろしければ少しお話をさせて頂けませんか?」
凄いね。この人たちはちゃんとした聖職者だよ。事前に僕のことも調べてるみたいだ。
「なっ!? ラナ神教だとっ!! ダメだ、ダメだ! ここはドガ神様が降臨なされた聖域だぞ! ラナ神教が出しゃばるなっ!!」
さっきから煩いのはドガ神の方だったんだ。イケメン神様、ちゃんと信者の教育をしてくださいよ。
そう思ったけど、取り敢えず僕はナリちゃんを手招きして呼んだんだ。
するとハーヴェさんはナリちゃんに案内を有難うって言って僕の方に行くように手を離したよ。うん、この人たちなら話をしても良いな。
でも、ナリちゃんが門に入ろうとした時にドガ神教のスーツ男がナリちゃんを捕まえてしまった。
「そこの子ども! 我らを中に入れるのだ! じゃないとこの子がどうなっても知らんぞ!!」
ハア〜? 本当にこの人たちは聖職者なの? それにこんなのに信仰されてるドガ神も大丈夫なの?
僕は呆れを通り越して怒りを覚えたから、腰の
「なんて事をするのですか! あなた達は本当に聖職に就く者なのですか? この行いを見ればドガ神様もあなた達を信者とはお認めになられないでしょう! そもそも、ここは二柱の神様が降臨なされた地! 聖域である事は間違いありませんが、それを無理矢理に中に入ろうなどと!! 私たちはあなた達を宗教裁判に訴えさせて貰います! あなたはドガ神教のパルペ大神官ですね。今すぐここから立ち去りなさい!」
ハーヴェさんって強いんだね。僕の目にも止まらない速さだったよ。
「フンッ! 商人風情の神が最高神であるドガ神様にお仕えする私を訴えるだと! バカも休み休み言え! 訴えれるものなら訴えてみるが良い!!」
とそこにまた新たな人が……
「そうね、訴えますわ、パルペ大神官。王国ドルガの第三王女として訴えを起こさせてもらうわ」
メリーさん参上だよ。しかも、ナタリーさんと二人で獲物を担いでるし、返り血で顔も凄い事になってるよ…… いや、小川があるんですからお二人とも村に戻る前に顔ぐらい洗いましょうよ。
「ナッ!! ざ、斬首の王女と狂血の女騎士がなぜこんなとこに!!」
あーあ、今の言葉は不味いんじゃないかなぁ…… メリーさんとナタリーさんのコメカミがピクピクしてるんだけど……
「フフフ、ナタリー。確か私にも無礼討ちの権限ってあったわよね?」
「いえいえ、姫様。ここは私にお任せを。近衛騎士には主を侮辱された際にはその者を討っても良いという法律がございますので!」
二人の言い様に慌てて逃げ出す三人の大人たち。捨て台詞は
「良いか! 必ずやこの地を我が物としてみせるからなーっ!!」
だったよ。まあ無理なんだけどね。それよりもドガ神には文句を言わなきゃダメだよね。後で文句を言ってやろうっと。
っと、それよりも……
「ナリちゃん! 大丈夫だった? 怖い思いをさせてゴメンね」
「ううん、ケーイチお兄ちゃん。このおじさんが直ぐに助けてくれたから怖く無かったよ」
「ハーヴェさん、ナリちゃんを助けてくれて有難うございます。立ち話も何ですから中にどうぞ」
「おお! よろしいのですか? それではお言葉に甘えさせて貰います。こちらの私の従者もよろしいでしょうか?」
「どうぞ、ご一緒に。メリーさん、ナタリーさんもどうぞ。先にお風呂に入ってくださいね」
「わ、やった! 有難うございますケーイチ様」
「感謝する、ケーイチ殿」
ハーヴェさんたちも僕が招いたので問題なく門を通り中に入って来れたよ。中に入ったハーヴェさんだけど玄関でいきなりサチに向かって語りかけたんだ。
「座敷童様、異なる神を信仰する者でございますか、どうかお屋敷に入ることをお許しください」
そう言って頭を下げると従者の人たちも頭を下げた。
「ケーイチが招いたならばアは構わぬ。入って正直に話すと良いのじゃ」
「有難うございます、座敷童様」
本当にこの人たちこそ、聖職者だよね。自分たちの信仰してない神様にもちゃんと敬意を払ってるんだから。
それから、ナリちゃんはフィルちゃんの部屋に行って貰った。サチがおもてなししてくれるって言うからお任せだ。
僕は居間にハーヴェさんたちを案内して麦茶を出してあげたよ。
「お心遣い有難うございます」
そして、話をしたんだけどラナ神教としてはこの地を聖域として認定したからといって信者たちが押し寄せたり、神教の持ち物としたりするつもりは一切ないとの事。ただ、門前にて信者が短い祈りを捧げる事は許可して欲しいとの話だったんだ。
「祈りと言っても五秒ほどですのでそれほど長く門前に留まる訳ではございません。どうかお許し頂けないでしょうか?」
ハーヴェさんと従者さん二人がそう言って頭を下げてくるけど、う〜ん、どうしようかな?
「ケーイチよ、許してやるのじゃ。それぐらいなら問題はあるまい。アも中より見ておくしの」
困ってたらサチがそう言うので、
「分かりました。あまり一度に大人数じゃなければ良いですよ」
と許可を出したんだ。
「おお! 有難うございます。ケーイチ様。信者たちは一日に三人までとしますのでご安心を。午前に二人、午後に一人としますし、時間もケーイチ様たちがお出かけされてから、お帰りになるまでの間に致しますので。どうかよろしくお願い致します。また、何かしら問題がございましたらハンターギルド経由でよろしいので、商人国ランナの大神殿、ハーヴェ宛にご連絡ください。直ぐに対処致します!!」
そう言って頭を下げてハーヴェさん達は帰っていったよ。うん、ラナ神教は良い人たちが多いのかもしれないね。
さてと、ドガ神に文句を言う前に……
「で、メリーさん、ナタリーさんはどんなご用事ですか? 手土産まで持って来られたからお話はお聞きしますけど」
とお風呂から出た二人にそう言うと、
「ケーイチ様、隠者様がケーイチ様にお会いしたいと仰ってるんです」
「ケーイチ殿の都合の良い時でと仰っておられるから、時間のある時に私たちと一緒に隠者様に会ってくれぬだろうか」
との事だったよ。
僕は隠者様に用事は無いんだけどなぁ……
強いのは僕じゃなく武防具なんです!? しょうわな人 @Chou03
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。強いのは僕じゃなく武防具なんです!?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます