第22話 我が家が聖域!

 今日は休日!!


 朝から家の中の掃除をサチの指示でやってるんだ。そんな時にフィルちゃんが僕の家に駆け込んできたよ。


「ケーにい! 助けてっ!!」


 ただ事じゃないね!! 僕はフィルちゃんをちやんと家の敷地内から玄関に入れて道を伺ってみると、


「こっちだ! この家に逃げ込んだぞ!!」

「金はもう払ったんだからな! 俺たちのモンだ!!」

「あのガキなら子爵様も喜ぶに違いねぇ!!」


 うん、どうやら懸念してた事が起こったみたいだね。フィルちゃんをお父さんが奴隷商に売っちゃたんだね…… さて、どうしようかな。


「クソッ、何だ! この家は? 敷地の中に入れねぇぞっ!?」

「なにバカな事を言ってやがる! 退けっ! 俺がって、ウオオーッ! い、痛えーっ!」

「お前ら、遊んでんじゃねえぞっ! ここに入るぐらいわけないだろうがっ! ッイッ! 痛えーっ!!」


 おマヌケ三人組が僕の家の敷地内に入ろうとしてサチの結界に阻まれてるよ。


「クソがっ! おい、ここに居るのは分かってるんだぞっ!! 出てこいっ、くそガキっ!!」


 まあ取り敢えず僕が出ていくしかないよね。


「どちら様ですか? この家は僕が借りているのですが? 家の前であまり騒がないで下さい」


「何だ、このガキは?」

「こんなガキが借りているだと?」

「そんな事はどうでも良い! さっきこの家に入ったメスガキを俺たちに渡しやがれっ! 小僧!」


 三流というのは前世でも今世でも同じようなセリフを口にするんだね。僕はもう一度だけと思い、三人に言った。


「僕はどちら様ですかとお聞きしたんですけど、あなた方は大人に見えますけど、ひょっとして人の言葉を理解できない魔物なんですか? それと、もう一度言いますが人が借りて住んでいる家の前で騒がないで貰えますか?」


 当然だけど僕は分かってて煽ってるんだよ。何故ならば木刃きばは装備してないけど、木鎧きかいの胸当てだけ装備しているから。

 何故なら、僕は掃除の時にほこりまみれるのが嫌だったから。

 実は掃除をする前に胸当てを埃すらも寄せ付けなかったら良いなあっていう軽い気持ちで装備してみたんだ。すると、アラ不思議、本当に埃すらも寄せ付けないんだよ。鍛冶の神様には感謝してもしきれないよね。


「このくそガキっ!! 俺らをバカにしやがってっ!!」


 そう言って男の一人が拳を握って僕を殴ろうとしたけど、サチの結界に阻まれるし手首が変な方向に曲がってるし……


「ギャーッ! 痛え! 痛えよっ!!」

「お、おいっ! 大丈夫か? やりやがったな! このガキがっ!!」


 いえ、自業自得ですけど…… 僕は何もしてませんよね? まあでもそろそろ僕も飽きてきたから敷地の外に出たんだ。


 トコトコと歩いて出てきた僕に殴りかかろうとしたおじさんはさっき手首を折ったお兄さんと同じ運命を辿ったよ。


「ウギャーッ! 痛えーっ!!」


「で、残りのあなたはどうしますか? 殴ってきますか? 僕は構いませんけど。それとフィルちゃんは僕の保護下に入りました。フィルちゃんのお父さんに支払ったお金はフィルちゃんのお父さんから取り戻して下さい。僕の保護下にいるフィルちゃんを奴隷として連れて行くのは許しません」


「クッ、だがな坊主、こっちもちゃんと契約書を交わして買い取ったんだよ。だからお前が例えどんなに偉かろうが神様でもない限り天罰が下るのはお前なんだ。分かるだろ? 俺たちは商業の神様との契約も交わしているんだよ、さっ、分かったならさっさとガキを差し出しな!」


 まさか神様を持ち出して来るとは思わなかったよ。よし、頼りたくはないけど一か八かだっ!!

 僕は一歩下がって我が家の敷地内に戻り、大きな声で


「おーい、ドガ様ーっ!? この人たちが言ってる事は本当ですかーっ?」


 って叫んだんだ。ドガ様っていうのはイケメン神様の事だよ。


『う〜ん…… まあここも神域ではあるから顕現は出来るけど…… 異なる神域だからなぁ…… まあ、サチくんが許してくれてるから良いか。で、ケーイチくん、久しぶりだねぇ。それで、この者たちが言ってる事が本当かって? それは私じゃなくてラナに聞いてもらわないとダメだね。お〜い、ラナ?』


『はいは〜い、ドガ様呼んだ? 何用かな?』


 うん、この世界の神様の名前が分かったよ。ドルガ、サーラ、テッカ、ランナのそれぞれの国が信仰する神様の名前は、ドガ、サラ、テカ、ラナなんだね。

 僕が謎が解けた喜びに浸っていたらドガ神がラナ神に説明を終えたみたいだ。


『え〜、ラナ知らないよ〜…… どれどれ、その契約書見せて!』


 ラナ神がそう言うと一人だけ無事だったおじさんの懐から一枚の神が飛び出てラナ神の手に。それを読んだラナ神は……


『えい! 天罰覿面てんばつてきめんー!!』


 裁きの雷さばきのいかづちっていうのかな? かみなりでおじさんを打ったんだ。


「アギャギャギャ、アババババー!!」


 雷で打たれたおじさんは変な踊りと変な叫び声を上げてるよ。


『ケーイチくん、この契約書は偽物だよ。だから心配いらないよ〜、という事で用事が終わったみたいだから、じゃあね〜』


 ラナ神は行ってしまい、ドガ神もまた


『まったく、サラの国にも困ったものだ…… まあ、ケーイチくんなら上手くやれると思うよ。頑張ってね』


 って言って行ってしまったよ。何をどう上手くやれって言うんだろう? まあ取り敢えずフィルちゃんの事はコレでかたがついたから、後はこのおじさん達をどうすれば良いのか?


 って思って気絶してない痛みを訴えてたおじさんとお兄さんを見たら僕に向かって土下座してるんだ。いったいどうしたの?


「まっ、まさか使徒様とは知らずに大変なご無礼を…… これは俺の仕業なのでどうかコイツらはお目溢しを……」


 おじさんの方が僕に向かってそんな事を言うんだ。でもどうして使徒ってバレたんだ!?


「な、何を言ってるんですか? ぼ、僕が使徒様だなんて…… 何の冗談でしょう? それで、フィルちゃんは僕の保護下に入って今後は手出ししてこないって事で良いんですね?」


 僕は内心の動揺を押し隠しておじさんに言った。


「は、はい! 勿論です、使徒様、いえ、ケーイチ様!」


 僕が使徒様と言われて睨むと慌てて名前で言い直すおじさん。うん、それで良いんですよ。


「俺たち、いや、他の奴隷商も二度とこの村には参りません!! 違います! いえ、むしろ子供を売ったあの野郎を奴隷として連れ去りますのでどうかご容赦を!!」


 う〜ん、フィルちゃんのお父さんをね。それなら条件をつけようかな。


「フィルちゃんのお父さんを連れて行くのは構わないけど、一つ条件があるんだ。良いかな? 奴隷とするのは構わないけれど、その心根を正すように指導出来る人の下へ売ってもらいたいんだ。そして、心根が正しくなった時にはフィルちゃんと会えるようにして欲しいけど、どう? 守れるかな?」


「はい! しとさ…… ケーイチ様!! 必ずやそう致します! コレが俺の身分証明書です!」


 って言って商人カードを見せてくれたから心の中でラナ神に願うと、


『オッケー、契約は成立だよ!! 履行されなかった場合は【天罰覿面】だからね〜』 


 とラナ神の声が僕だけじゃなくおじさんにも聞こえたみたいだ。


 おじさん達はその後はペコペコ頭を下げながら帰って行った。

 僕は玄関口でサチに守られながら一部始終を見ていたフィルちゃんにこれで良かった? と聞いてみた。


「うん、有難う。ケー兄。でも、私、家に一人じゃ……」


「えっ!? フィルちゃんもここに住めば良いよ。良いよね? サチ」


「アは構わぬぞ。フィルはアが見えるからの」


「でも、良いの? ここって借家なんだよね?」


 あ、そうだ。対外的にはそう言ってるのを忘れてたよ。でもサチが助けてくれたよ。


「良いのじゃ、フィル。この家は仮初に人のモノとしておるが、アが家主なのじゃ。アが良いと言えば人の家主もダメとは言わぬ」


「うん!! 有難うサチちゃん!!」


 こうしてフィルちゃんも一緒に住む事になったんだよ。


 で、その日からなんだけど座敷童であるサチが居るからって事でそれまでも近所の人には神聖視されてたんだけど、ドガ神とラナ神が顕現したのを何人かに見られていたみたいで……


 何故かドルガやランナの神殿から聖域サンクチュアリとしての認定証が届いたんだけど……


 無視しても良いよね? 

 

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