第16話 ギルドで!
ギルドに戻ると中ではヤットたち【やさグレ】のメンバーが大騒ぎしていた。
けど、その場に居る他のハンターや、ギルド職員の反応は冷たい。
ちなみにヤットは既に服を着てるよ。
「だから言ってるだろうがっ!! ケーイチっていう狩り女と一緒にいたガキがいきなり俺たちに攻撃して来たって!!」
凄い言い分だね。自分たちから仕掛けた事を僕から仕掛けた事にしようとするなんて。
「いきなり理由もなく他のハンターを攻撃するのはハンター規則違反だろう? あのケーイチとかいうガキはハンター資格剥奪だろ?」
一方的にヤットがそう言ってる相手はターニャさんだった。ターニャさんがヤットを見る眼差しは氷みたいに冷たいモノだったよ。
あっ! ターニャさんの後ろからレイミーさんが来てるよ。
「ターニャさん、何事ですか?」
レイミーさんは知ってて聞いてる感じだね。
「ああ、レイミー。やさグレの面々がケーイチくんをハンター規則違反で資格剥奪を申し出ているのよ。でも一方の言い分だけ聞くわけにはいかないわ。だからケーイチくんが戻るまで保留だって言ってるのにヤットさんがそんなものは必要ないって聞かないのよ」
「へぇ〜…… ヤットさん、ギルドが定めるハンター規則、第六条c項はご存知ですか? 規則違反を訴えた場合には訴えた側だけの主張を鵜呑みにせず、訴えられた方の言い分も確認する事! その規則をギルド職員の私たちに破れと? まさかそんな事は言いませんよね?」
レイミーさんも視線と口調が絶対零度だよ……
「なっ!? そんな事は俺は言ってないだろう!? だがな、あのクソガキが規則違反をしたのは事実なんだよっ!! だから何らかの処罰を今決めても良いだろうがっ!!」
そこにセツさんたち狩り女の面々が声を上げた。
「ちょっと! 何をアホな事を言ってるのよ、ヤット!! 規則違反を犯したのはアンタでしょ!!」
「ターニャさん、ヤットたちやさグレの面々は私たちに絡んできて、私たちを手助けしてくれたケーイチくんにまで難癖をつけたんです」
「魔法を先に仕掛けてきたのもヤットに言われたカットです。その後にハットがケーイチくんに攻撃を仕掛けました。ケーイチくんは仕方なく応戦しただけです。私たちが証言します!!」
セツさん、ライラさん、ハンナさんがそう言うと、成り行きをみてたハンターたちからも声が上がる。
「おいおい、やっぱりか! ヤットたちの言い分は可怪しいと思ったんだ。狩り女のメンバーが言うほうが正しいのだろうぜ!」
「そうだ! 普段から真面目にハンターとして活動してる狩り女たちが言うならそっちが正しいに決まってる!」
ハンターたちがそう野次るとヤットたちも反論する。
「オ、オイッ!! 何を言ってやがる! 俺たちがウソ吐きだってぇのかっ!!」
「
「小娘どもの言う事を信用するのか!! 俺たちの方が正しいのにっ!!」
ヤット、カット、ハットが言うと誰かが
「ケッ! お前らト兄弟の言うことなんか信じられるかよ!!」
と吐き捨てた。
「今いった奴は誰だ!? 表に出ろ! ギタギタにしてやるっ!」
コレはもう墓穴を掘ってるよね。ハンター同士での喧嘩はご法度だからね。
「はい、そこまでです。ヤットさん、先ほどの言葉を取り消して下さい。でないと規則違反を犯した事になりますよ」
ターニャさんがすかさずそう言うけど、頭に血が上ったヤットは止まらない。そして、あろうことかターニャさんに向かって剣を抜いた。
アレ? 剣がなおってるよ? ああ、予備の剣か。
「クソうるせぇんだよ! ターニャ! お前も俺の誘いを断り続けやがってっ!! 今すぐここで裸になったら斬らずにいてやるよ!! さあ、脱げ!」
うん、これはもう手を出しても良いでしょ。僕は木刀を腰から抜いてハンナさんの後ろからスルスルと摺り足で前に出た。
そしてそのまま、ヤットの持った剣を斬る。
それから先ほどの再現とばかりにまたヤットの体をくまなく撫で斬った。
ハラハラと儚く散っていくヤットの服たち。
う〜ん…… やっぱり男の裸は見たくないね。
名前がヤットだけにやっと自分の服が散るのを見て僕が居る事に気がついたみたい。
「
とヤットが声を上げた瞬間に剣が鍔元から斬られたのを気づいたかのように落ちた。
「アアーッ! お、親父の聖剣が!?」
素っ裸のうえ、罪のない女性に対して剣を抜いた事で今回はちょっと僕も怒ってたから、皮膚もちょっと切って血を流しながらも、ワナワナと震えて顔を青ざめるヤット。
ヤットの剣じゃ無かったんだね。二段ハンターのお父さんの聖剣なんか持ち出すからそんな事になるんだよ。
そして、ターニャさん、レイミーさん、他のハンターたちの反応と言えば……
「プッ! 子供、いいえ赤ちゃんサイズかしら?」
「本当に…… それで良く女性を口説くわね? いえ、口説くというよりはいつも脅してたのは自信が無かったからなのね。ププッ!」
「言ってやるなよ〜、ターニャちゃん、レイミーちゃん。成長しなかったのはコイツの胆が座ってない証拠なんだからよぅ。ハハハハハ!」
うん、コレでこの村に居づらくなったと思う。
ワナワナと顔を青ざめて震えていたヤットだったけど、みんなの声で正気に戻ったみたいだ。
「こっ、このガキ! 一度ならず二度までも!! もう容赦しねぇぞ!! 唸れ、聖剣ヴァリヴァリヤ!!」
柄だけになった聖剣に向かって吠えたヤットが僕に向かって聖剣だったものを振る。すると、剣身が無いのに斬撃が僕に向かって至近距離から飛んできたよ。
「危ない! ケーイチくん、避けて!!」
レイミーさんがそう言うけど、僕が避けると後ろにいる狩り女の人たちに斬撃が向かっちゃうからね。それに、僕の防具はチートだから。
「なっ!? 何で斬撃が消えたんだっ!? この聖剣を使えば俺の放った斬撃の攻撃力は9,999になるんだぞ! 竜すらも斬れる斬撃なのにっ!?」
ヤットが僕に当たる前に消えちゃった斬撃にアタフタしてるよ。どうしようかな? お仕置きが必要だよね。でも僕の前世があんまり酷いお仕置きは止めておけって言ってくるんだよね……
仕方がないから、僕は可愛らしい物を撫で斬るだけにしたんだ。コレでもう女性を困らせる事は出来ないよね。
「なっ、何をしやがったっ!! クソ…… ガキーッ!? さ、竿が!? 俺の竿がーっ!!」
「うわっ、エゲツなっ! やっぱり子供だからか?」
「あーあ、ヤットの奴もコレで終わりだな……」
「涼しい顔してたけど、ケーイチもかなり怒ってたんだな」
えっと、間違えたかな? ヤットの
って思ったらレイミーさんが駆け寄ってきて僕の耳元で急いで教えてくれたんだ。
「ケーイチくん、男性のシンボルを斬るという行為は絶対にお前を許さないという意思表示になるんです。そして、二度と自分の前に顔を見せるなという意味も含みます。子供のケーイチくんがそこまでの制裁をするとは誰も思ってなかったので、だからみんながあんな反応なんです」
ああ、そういう意味があったんだ。知らなかったからしょうがないよね。でも、ここは郷に入っては郷に従えで僕はやさグレの面々にこう言ったんだ。
「僕は怒ってます。初めはセツさんたち狩り女の人たちに絡み、
僕の言葉を聞いたカットとハットは
「い、嫌だーッ! ジュニアを斬られるのは嫌だーッ!!」
「お、俺はこの村を今すぐ出ていく! サラバだ!!」
そう言ってその場を一目散に走って逃げ出したんだ。
残ったヤットは、
「まっ、待て! 俺も連れて行けよーっ!!」
なんて走り出したんだけど、ギルドの入口で何者かに弾き飛ばされて戻ってきた。
ちなみにジュニアを斬った後はカットが素早く治癒魔法をかけたらしく、出血は止まってるよ。
それにしてもピクピクしてるけど、生きてるよね?
ヤットを弾き飛ばした人物が中に入ってきた。
「あっ、貴方は!?」
ターニャさんがその人物を見てそう言う。
いったい誰?
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