第10話 ハンター初仕事!
そのまま二人とは別れて僕は日用品を買いに向かった。レイミーさんに教わったお店に向かう。
「あった、ここだね。ドルガ王国の総合商店、【カルベ】。隠者の村支店って何だかそのままのネーミングだね。まあ、ここなら日用品の他に服なんかも揃うらしいから」
僕はお店の中に入ってみた。
「いらっしゃいませ、どうぞゆっくりご覧ください」
お店の中には店員さんが三人いて周りに目を配りながら棚の整理なんかをしている。僕は一人の店員さんに声をかけて日用品コーナーの場所と衣服の場所を聞いた。
「日用品はコチラになります。衣服はコチラの通路を真っ直ぐに進みますと並べてありますので」
店員さんが丁寧に答えてくれた。お礼を言って僕は品物を選ぶ。
「えっと、歯ブラシ、ワッ、歯磨き粉もちゃんとあるや。コップは木なんだね。食器はどうしようかな? 食器は家の中を確認してからでいいや」
なんて言いながら必要な物をカゴに入れて衣服のコーナーに向かった。
「ちゃんとサイズがあるね。異世界モノの定番だと古着がメインみたいになってるけどこの世界だと違うみたいだね。ちゃんと新品のようだ、良かった。それじゃコレとコレと…… 替えの下着も三つと」
カゴに入れた品物を持って会計場所に向かうと店員さんが丁寧にたたんでくれた衣服を魔術ザックに入れるフリをして収納に入れた。
お店を出た僕はまだ午後二時だったからハンターギルドに向かった。依頼掲示板の6〜7級の場所をじっくりと見てみる。目ぼしい依頼は午前中に取られているだろうけど、今からでも出来そうな依頼があれば受けてみようと思うんだ。
「これなんか行けそうだな」
僕は一枚の依頼を見つけた。ハントするのは薬草だった。薬の材料になるショウゲンという薬草を十束を一つとして合計五つ。
生えている場所も書いてくれてるから今からでも行けそうだ。報酬は大銅貨二枚(二千円)と安いけど今から行ってそれだけ稼げれば問題ないよね。
僕はその依頼書をはがして依頼受付に持って行きお姉さんにギルドカードを提示しながらコレを受けますと告げた。
「はい、ケーイチさん。7級依頼ですね。今の時間ですとちょうど五分後に東門に向かう馬車がギルド前に着きます。気をつけて行ってきてください。それと、薬草採取の注意事項が書かれた紙をお渡しするので、馬車の中で良く読んでおいてくださいね」
「はい、分かりました」
受付のお姉さんから紙を渡されて僕はギルド前の馬車駅に向かった。午後二時十五分発の馬車が既に来ていたから御者さんに確認する。
「すみません、この馬車は東門に行きますか?」
「行きますよ、坊っちゃん。東門には四十分に着く予定です。運賃は銅貨三枚ですよ」
良かった、ここまで丁寧に教えてくれるとは思って無かったよ。僕は先に御者さんに銅貨三枚を支払い中に入った。乗合馬車だから他にも乗ってくるかも知れないから端の方に座る。
出発時間の近くで一人のおじさん? お兄さん? が乗ってきた。その人が乗るとそれまでに乗ろうとしてた人たちが一斉に居なくなる。
そのお兄さんはハァ〜とため息を吐きながらも乗り込んできて、僕を見てギョッとした顔をする。
その顔は
その強面さんは僕を見て固まっている。けれども僕が興味なさそうに強面さんから視線を外すと何も言わずに僕の真反対に座った。
「それじゃ、出発しますね〜」
御者さんがそう言って馬車が発車した。
ガタゴトともっと揺れるのかと思ったけど、意外にも揺れは小さいや。石畳の道がしっかりとしてるからかな? いや、これはちちゃんとサスペンションが作られているとみた。じゃないともっと揺れる筈だからね。
出発して強面さんは目を瞑ってたけど、時々片目を薄く開けて僕を見てるのは気づいてた。
「なあ、坊主。俺が怖くないのか?」
何か覚悟を決めたような表情で強面さんが僕に話しかけてきたよ。
「えっと、僕はケーイチと言います。7級ハンターです。お兄さんはハンターですか? 良ければお名前を教えて下さい。それと、質問の答えですけど、お兄さんはお顔は確かに普通の人が見れば怖いと思うかも知れませんが、その身体から出ている雰囲気は柔らかいので僕はお兄さんが怖くありません」
何せ強面というならば前世の父親の方がこのお兄さんの五倍は強面だったと思う。幸い僕は母親に似てあの強面を受け継がなかったんだけど、目だけは似てるって良く言われてたなぁ……
強面さんに返事をしながらそんな事を思ってたら強面さんの目に涙が滲んでいるよ。
「そ、そうか、怖くないのか! 有難う! ケーイチと言ったか? 俺は3級ハンターのゴズという。今から一仕事終えて家に戻るんだ。ケーイチは今からハントか?」
物凄く嬉しそうな声だね。まあ、慣れてない人には怖く見えるんだろうね。でもこのゴズさんは本当に
「はい、今から東門近くの草原で薬草ハントに行くところです。あっ!? 受付のお姉さんに言われてたので、今からこの紙を読みますので、ゴズさんお話はちょっと待ってもらえますか?」
すっかり忘れてたよ。この紙をよく見てショウゲンの採取の仕方を覚えないと。って思ってたら走る馬車の中を普通に立って歩いて僕の側までゴズさんがやって来た。
「ああ、ショウゲンの採取だな。それならちょうどいい。見本を見せてやるよ」
ゴズさんはそう言うと背中に背負ったザックをおろして手を入れて薬草を取り出した。
「ケーイチ、コレがショウゲンだ。採取するなら今見せてるこのサイズに成長したのがベストだぞ。茎を5センチ残して切ればまたそこから成長するからな。これより小さかったり、大きかったりするのは採取しない方が良い。ほら、見本として持っていけ」
「エエッ! い、いいんですか?」
だってショウゲンを持ってたって事は何かの依頼を受けてたんじゃないのかな?
「ああ、気にするな。俺の家の隣の薬師に頼まれてハントの序に採取したんだが、多く採取してあるから、一本ぐらい減っても大丈夫なんだ。だから、持っていけ。それと、他の薬草についても教えてやろう。これがビョウゼンというある程度の病に効く丸薬を作る為の薬草だ。この薬草も茎を五センチ残して採取するんだぞ。それからこれが毒消し薬を作る為に必要なブーシュという薬草だ。これは葉だけを取るんだ。葉の大きさはこの見本ぐらいのサイズが良いぞ」
と三種類の薬草についてゴズさんは僕に教えてくれた。
「その紙に書かれているのはこの三種だからな。まあ、採取に慣れるまでこの見本を干して持っておくと良いぞ。値段が良いのはブーシュだ。葉一枚で大銅貨一枚でギルドが買い取ってくれるからな。依頼が出てれば一枚大銅貨二枚〜三枚が相場となってる。っと、どうやら着いたな。ケーイチ、怪我しないように無理せずに頑張るんだぞ。また、ギルドで会おう!」
「はい!! 有難うございました! ゴズ先輩!!」
僕が降りるゴズさんにそう言ってお礼を言うと、
「せっ!? 先輩!! は、初めてそう呼ばれた!! おう! 俺はケーイチの先輩だっ! 何か困った事があったなら頼ってくれて良いからな!」
最初はちょっと戸惑い、それから嬉しそうにそう言ってくれた。
僕は顔は強面だけど、優しい先輩に会えて良かったなぁと思ったよ。
頂いた薬草の見本は直ぐに収納に入れた。コレで干す必要も無いからね。
そして、東門に着いた僕は帰りの馬車の時間を御者さんに聞いてみた。
「坊っちゃん、帰りはアチラの馬車駅ですから間違えないようにしてくださいね。時間は午後三時半、午後三時四十五分、午後四時十分、午後四時半、午後四時四十五分、午後五時十五分です。この時間以降にも馬車は走ってますが、東門が午後五時二十分に閉まりますから、それまでには中に戻るんですよ」
「はい、分かりました。有難うございます」
本当にこの村の人たちはみんな親切な人ばかりだね。
僕は東門にいる門番さんにギルドカードを見せて、薬草採取に行きますと伝えた。
「ショウゲンの採取か。頑張れよケーイチ。こうやって採取してくれてるから俺たちが使う傷薬が出来ているからな。頼んだぞ。だけど、五時までには戻って来いよ」
門番さんも親切な人だったよ。
こうして、僕は採取に行ってちゃんと午後四時半の少し前に馬車駅に戻ってこれたんだ。
ショウゲンは依頼の数だけ取ったよ。
ギルドに戻って受付のお姉さんに手渡したら、
「初依頼、達成おめでとう」
って笑顔で言って貰えたよ。よし、明日からも頑張ろう!
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