第11話 ダンジョンハンター!

 今日も元気だ、朝食が美味い!!


 さてと、いつもの気合も入れた所でハンターギルドに向かうか。


 既に家の購入手続きを済ませた日から三日が過ぎている。僕は薬草ハントで稼いでいるんだ。

 依頼のある薬草をメインにして、でもギルドでも常に買取をしてくれるから、依頼以上の数を採取しながら日々を過ごしてたんだ。

  

 ゴズさんとはあの後、二回ほどギルドで出会ったよ。

 

「ケーイチ、今日も薬草ハントか? 気をつけてな!」


 なんて声をかけてくれるんだ。顔は強面だけど本当に優しい先輩だよね。ただギルド内にいた他の人たちが何故かざわついてたけどね……


 さてと今日も薬草ハントに行こう。僕は午前と午後の二回、薬草ハントに行って一日銀貨二枚と大銅貨を二枚〜三枚稼いでいる。

 前世の金銭価値で言うと日当二万二千〜三千円だね。十分に稼いでいると思うんだ。

 この世界では保険制度とかが無いから所得税や社会保険料なんかも取られないしね。まあ、どっちが良いかはまだ分からないけど……


「ケーイチさん、本日も薬草ハントに出かけられますか?」


 受付のお姉さんことターニャさんにそう聞かれる。


「はい! 今日はブーシュの葉をメインに採ってきますね」


 僕がそう言うとターニャさんが紙を差し出してきた。


「ケーイチさんは採取のサイズも揃っていて切取りやギルドに持ってきて下さる時もキレイな状態を保って下さるから、6級ハント対象のコチラの薬草をブーシュの葉を採取するついでで良いので探してみて下さい。ついでで良いのでよろしくお願いします」


 そう言うので渡された紙を見てみたら、体力回復ポーションの素材になるヒーラという薬草について書かれていた。


「分かりました。よく見て探してみます」


 僕はターニャさんにそう答えてギルドを出た。今日も東門に向かう。交代制の門番さんも全員と顔見知りになったよ。


「おっ! ケーイチじゃないか、おはよう。今日も無理せずに頑張れよ!」


「はい! タッキさん。今日も稼ぎます!」


「ハハハ、魔物や魔獣が出たら門まで走って逃げてくるんだぞ!」


 そんな会話を交わしながら門を出た僕はブーシュの群生地を目指して歩く。ブーシュはショウゲンよりも少し遠くに群生地があるけど、そこまで遠い訳じゃないからね。


 ヒーラの群生地はブーシュの群生地からはそれほど離れてないみたいだ。馬車の中で確認したからね。ブーシュの葉をパパッと採取してヒーラの群生地を目指してみようと思う。


 僕はブーシュの群生地での採取を終えてヒーラの群生地へと向かっている。途中で角が生えてるウサギさんに襲われたけど角ごと両断しちゃったんだ。これじゃギルドに買取って貰えないから家に住むようになったら料理して食べようと思う。


「着いた! ここだねヒーラの群生地は。いっぱい生えてるね」 


 僕はヒーラを採取していく。ヒーラは茎も葉も素材として使用されるから茎を五センチ残して切っていく。十本一束を五つ採取して止めておいた。

 一束銀貨一枚になるからね。これで五万円だよ。ブーシュと合わせると今日は七万円も稼いじゃったよ。


 ホクホク顔で東門に戻ろうとした時に奥からガサガサッて音が聞こえた。後ろを振り返るとハンターらしき人が三人いる。


「おっ!? 何だ、坊主もハンターか? ああ、薬草ハントだな。ヒーラか。稼げるぐらい採れたか?」


「コラ! ディン! いきなり失礼だろっ! 仲間が済まないね。僕たちは三人とも3級ハンターで【ダンジョン調査隊】っていうパーティーを組んでいるんだ。僕がリーダーのロッシュで、君にいきなり話しかけたのはディン。それから、僕の後ろで隠れてるのがヘラといってディンの娘だよ。良かったら君の名前を教えてくれるかい?」


 リーダーのロッシュさんが自己紹介も含めてみんなの事を教えてくれた。ちょっとパーティー名が引っかかるけど、厨二病的な名前じゃないから逆に好感が持てるよね。おっと、返事しなきゃ!


「はい、僕の名前はケーイチです。7級ハンターです。ギルド受付のターニャさんに頼まれてヒーラの採取をしてました。ちなみに年は十二歳です」


「やっぱり、ヘラよりも年下だったね。ほら、ヘラ。言っただろう」


 ロッシュさんがそう言うと後ろに隠れていたヘラさんが前に出てきた。


「ワタシ、ヘラ。ケーイチより四つ年上。3級になったばかりだけど、ケーイチより先輩!!」


 うんうん、年下だと分かると安心して強気になるタイプのなんだね。僕は精神がオジサンだから可愛らしく見えるよ。顔には出さないけどね。


「はい、ヘラ先輩! よろしくお願いします!」


 僕が返事をしたらヘラさんは目を見開いてお父さんであるディンさんに言う。


「パパ! この子お持ち帰り! ヘラがちゃんと飼育する!」


「コラコラ、ヘラ! 生き物は飼えないって言ってるだろうが!」


 いや、この親子の会話ダイジョブですか? 僕が困り顔でロッシュさんを見ると申しわけ無さそうな表情をしていた。


「コラ! 二人ともっ!! ケーイチくんは動物じゃないぞ! ちゃんと人だ。飼育とか飼うとか言うのは失礼だろ! ちゃんと謝れ!」


 おお、もう僕はこのパーティーと出会った時はロッシュさんとしか会話しないようにしようと心に決めた。


「えっ!? ロッシュ、人も動物」

 

 うん、ヘラさん間違ってはいないですよ。


「バカ言うなロッシュ。俺はヘラに合わせて言っただけだよ。ケーイチだってそれくらい分かってるよ」


 いや、ディンさん。初対面でしたからそこまで貴方の心の機微まで分かりませんよ。


「それじゃ、皆さん、僕はこれで失礼します。急いで今日の報酬を貰いたいので!」


 三十六計逃げるにしかずを発動した僕は言うだけ言って東門に向かって走りだした。


 で、僕は馬鹿でした……

 

 そりゃおんなじ馬車に乗りますよね……


「いや、ケーイチくん。そんなに気恥ずかしそうにしなくても良いよ。僕たちの事を少し話そうか? 僕たちはパーティー名が表すようにダンジョンに潜ってハントしてるんだ。ダンジョン内にも魔物や魔獣が出るけど、ダンジョン内だと魔物や魔獣は倒すとドロップ品を出して消えてしまうんだよ。だからそれほど大きな魔術ザックやバッグが必要ないというメリットがあるんだ。それと、ダンジョン内に残ってるアーティファクトなんかが手に入ると大きなお金になる事もあるしね。実際に隠者の村周辺には東に一つ、西に二つ、北に一つのダンジョンがあるんだよ。ケーイチくんも4級になったら北のダンジョンに行ってみてごらん。北のダンジョンは比較的弱い魔物や魔獣しか居ないからね」


 ロッシュさんが気を遣ってくれて僕にパーティーでの主な活動を教えてくれた。


「そうなんですね。でも、ダンジョンに入れるのは4級からなんですか?」


「うん、この村周辺のダンジョンはそうだね。ドルガ王国の辺境の村にあるダンジョンは5級ハンターでも入れるダンジョンがあるけどね。でも、まあこの村で暮らすなら頑張って4級まで上がってダンジョンでハントするのも有りだと思うよ」


 ロッシュさんはそうやってダンジョンハンターになるのに必要な級や、他には装備など、また泊りがけで行く場合に必要な物なんかも教えてくれた。

 ダンジョンの中にはセーフゾーンと言って魔物や魔獣が入れない部屋があるんだって。泊りがけで行く人たちはそこでテントを張って野営して深く潜っていくらしいよ。


「色々と教えて下さり有難うございました。昇級したら考えてみます!」


「うん、まだまだこれからだから、地道に頑張ってね、ケーイチくん」


 ギルド前で全員が馬車から降りてギルド内に入ったけど、ロッシュさん達は買取受付の方へ向かった。僕はターニャさんの方に向かう。


「ケーイチさん、ダンジョン調査隊と一緒に戻って来られたんですね。ロッシュさんは良い人ですけど、ディンさんとヘラさん親子はちょっと変わってるでしょ? って、私がそう言ったのは内緒にしておいて下さいね」


 僕はハイって言いながら採取した薬草をターニャさんに手渡した。 


「ヒーラも採取してくれたんですね。有難うございます。それじゃちょっと待って下さいね。【鑑定】…… はい、品質も良品質です。はい、コチラが買取額になります。銀貨七枚と大銅貨五枚です。今日はかなり稼げましたね」


 とニッコリ笑ってお金を渡してくれるターニャさん。


 本当は買取受付にいるレイミーさんの方に持って行きたいんだけど、レイミーさんは薬草関係は鑑定出来ないんだって。だからターニャさんに渡して居るんだ。

 レイミーさんは慣れてきたら魔物や魔獣をお願いしますねって言ってくれてる。

 でも、ダンジョンハンターか…… 

 

 うん、取り敢えず今の級では無理だから昇級してから考えよう。

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