第5話 隠者の村!

 進む道は魔物も魔獣も出てこずに快調だった。そして、頑丈そうな防壁が見えてきたんだ。


「さあ、あそこですわ。ようやく到着しましたわ」


「姫様、お疲れ様でございました」


 ナタリーさんとメリーさんがそんな会話をしていたら見えている門が開いて中から人が三人出てきたよ。


「ようこそ、メリレア姫。私はこの村の代表でデックスと言います。この二人は私の補佐で、女性がルーラ、男性がヒサトと言います。先ずは防壁の中へお入り下さい。ドルガ王国の望みが何なのかお聞きしましょう」


 デックスさんはそう言うと防壁の中へと招いてくれた。メリーさんが少しだけ緊張してる様子だ。


 気になるのはヒサトっていう男性かな? 随分と男前だもんね。


 防壁の中は村っていうレベルじゃ無かったよ。街だね。目的地に着くまでにデックスさんが教えてくれたところによれば、この村の広さは半径凡そ五キロメートルで円形をしているそうだよ。

 中心から北部分に畑を中心とした農業地区。東部分は行政地区。西部分は商業地区。南部分が住宅地区となってるんだって。


 定期馬車が村中を巡回してるから行き来の不便さも無いそうだよ。

 住人の人口は一千人で広さの割には少ないけど、みんながノビノビと生活しているそうだ。


 それぞれの地区のまとめ役がいて、その人たちをまとめているのが目の前のデックスさんらしい。とは言ってもデックスさんが権力を持ってる訳じゃなくて、あくまでも代表者として調停したりする程度の事らしいんだけど。


 そんな事を教えられながらついていくとどうやら目的の場所にたどり着いたみたいだ。


「今日からご要件が済むまでコチラの屋敷でお過ごし下さい。お見受けしたところ、侍女の方たちなどはお連れされてない様子。庶民の者で申しわけないですが、三人ほどメリレア姫付きの侍女が中におりますのでお仕いください。先ずは旅の疲れを癒して下さい。三時間ほど後にお話を伺いましょう」


 そう言うとデックスさんとルーラさん、ヒサトさんは隣の建物へと入っていった。


「う〜ん、取り敢えずこのお屋敷をお借りしましょう。中に入るわ、ナタリー」


「お待ち下さい、姫様。私が先に入ります」


 ナタリーさんはメリーさんの護衛らしく初めての建物には自分が先頭に立つつもりのようだ。その前に僕はお二人に言ってみた。


「あの、ノッカーがあるからそれを鳴らしてみれば良いと思いますよ」


 二人とも僕の言葉に顔を赤らめている。悪い事をいってしまったかな。


「も、もちろん、私も姫様も気がついていたぞ、ケーイチ殿!!」


 はい、そんなに力説しなくても大丈夫ですよ。ここだけの話にしておきますから。

 ただ、他の騎士さんたちはクスクスと笑ってますけどね。


 ああ、ネルソンさんとそれ以外の騎士さん二人のお名前は、ネルソンさんの娘さんで成人されたばかりの見習い騎士であるヴェルダさんと、ナタリーさんの従姉妹であるサリアさんだ。

 男性騎士はネルソンさんだけだね。


 それにしても一国のお姫様がどうしてこんなに少ない護衛でここまでやって来たんだろうね。まあ、僕には関係ないけど。


「さてと、それじゃ僕はここでお別れしますね。これから行くところもありますから。あ、デスグリズリーの小さい方は売れたらお金を持ってきますから」


 そういったらメリーさんが、


「エエーッ!! ど、どうしてですのっ、ケーイチ様!! ここでお別れなんて!?」


 って叫ぶけど、いや隠者の村までの護衛ってお話でしたよね? もしかしてお忘れですかメリーさん。


「姫様、ケーイチ殿とはこの村までの契約にございました。道案内という名目で金銭での報酬などはございません。ケーイチ殿、ここまで不甲斐ない我らにご助力いただき感謝いたします。なお、デスグリズリーについては倒されたのはケーイチ殿ですので、その買取金はケーイチ殿がお持ちください」


 さすがナタリーさんはちゃんと理解してくれてたようだ。


「はい、分かりました。ナタリーさん、道に迷ってた僕をここまで連れてきてくれて有難うございます。メリーさん、もしも手助けが必要ならばいつでも声をかけてくださいね。僕で良ければ手助けしますから。ネルソンさんも、ヴェルダさん、サリアさんも有難うございました」


 僕がそう言って頭を下げると騎士の皆さんは剣を鞘に入れたまま掲げて返礼してくれた。メリーさんだけはまだ何かをブツブツ言ってたけど、取り敢えず僕はみんなの前から退いて、村の中を歩き出したんだ。

 

 デックスさんが言うにはここは村の中心地らしいから、西部分の商業地区へと向かう。

 ハンターギルドでデスグリズリーを買取して貰うためだ。


 中心地から歩くこと十五分、ハンターギルドに到着したよ。

 ハンター登録をしてない僕の持ち込みは手数料として一割取られるらしいけど、先立つモノが一切無いから背に腹は代えられないよね。


 中に入って見るととてもきれいで整理された空間だったよ。前世のお役所をみてるみたいだ。


 僕は買取窓口に向かった。


「いらっしゃいませ、本日は何をお持ちでしょうか? ハンター登録をされているのでしたらカードの提出もお願いいたします」


 受付の可愛らしいお姉さんが僕が子供の姿なのに侮る事なくちゃんと接してくれている。


「今日はデスグリズリーを二体、買取をお願いしたくてやって来ました。ハンター登録はしてないのでカードは持ってません」


 僕がそう言うとお姉さんは、


「ハンター登録は今からでも直ぐに出来ますが、登録されませんか? 登録料の銀貨一枚は買取額より引かせていただきますよ」


 と、僕が文無しなのを見てとったのかそう言って提案してくれた。


 う〜ん…… ハンター登録か。どうしようかな? 出来れば違う職に就きたいけど、コレといって何の能力も無い僕はハンターに登録する方がいいのかな? 武器も防具もチートだしね。


 少し悩んだけどお姉さんのオススメ通りにハンター登録をする事に。


「はい、それではコチラにご記入をお願いします。お名前、年齢、書ける範囲の技能をご記入くださいね。登録は十歳からとなりますが、十二歳未満ですと見習いハンターとなります。十二歳以上でしたらハンターとして登録出来ます。けれども、十二歳の方は初めは初歩ランクとして7級からとなります。見習いハンターは10級です」


 お姉さんの説明を聞きながら名前と年齢、技能は気配感知だけを書いておいた。


「まあ! 気配感知をお持ちなんですね。それならばパーティーを組むのにとても有利ですよ。気配察知よりもより詳細が分かる気配感知は重宝されますから」


 お姉さんはそう言って僕が記入した紙を機械に入れた。そしたら機械の下の方から一枚のカードが出てきた。


「はい、コチラがケーイチさんのハンターカードとなります。身分証明にもなりますので肌見放さず、無くさないように注意してくださいね。無くされても再発行致しますが、その都度銀貨一枚が必要になりますから」


 僕はこの優しいお姉さんに色々と教えて貰おうと思い、聞いてみた。


「お姉さん、お時間はありますか?」


「ウフフフ、ケーイチさん。ナンパするにはまだお若すぎると思いますよ」


 ナンパじゃ無いんです……


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る