第6話 ハンターギルド!

 僕はここでお姉さんにちゃんと説明をした。


 田舎からでてきて道に迷ってたところを偶然にも騎士さんたちによって助けられ、ここまで案内をしてもらった事。

 道中でデスグリズリーが出たけれども、田舎でも倒した事があったので何とか倒した事。

 田舎育ちなので金銭価値などにも疎くて困っている事。

 今、お姉さんがとても丁寧にお話してくれたので、時間があるのならば少し僕の疑問に答えて貰いたい事。


 などもっともらしい理由を考えた通りにお姉さんに話すと、


「あら、そうだったんですね。そういう事ならばデスグリズリーの買取を終えたら昼食を奢ってもらえますか? それならば質問にお答えしますよ」


 と少し思惑とは違ったけれども、それでも教えてくれるならばと僕はお姉さんの提案を了承したんだ。


 で、デスグリズリーはどの部位をお持ちですかって聞かれたから、全部ですって答えるとそれじゃコチラについてきて下さいと言われたのでお姉さんについて行く。


 倉庫らしき場所に案内されて中に入るとヒンヤリしていた。


「ここはギルドの倉庫なんです。この中ですと肉なども腐るのが遅いですので、コチラに出していただけますか。それと、ケーイチさん。手ぶらでデスグリズリーを持ってるなんて仰ると収納の技能を持ってる事が直ぐにバレてしまいますよ。なので、買取が終わったらギルドで販売している魔術ザックを購入してくださいね。ケーイチさんのご年齢で収納を持ってると悪いハンターにバレると、荷物持ちとしてこき使われたりしますから、注意してください」


 お姉さんがそう教えてくれた。


「はい、分かりました」


 と答えて僕はデスグリズリー二体を出したら、お姉さんが大声を出したよ。


「エエーッ、一体は確かにデスグリズリーだけど、もう一体はデウスグリズリーじゃないですかっ!? ホ、ホントにこれをケーイチさんが?」


 お姉さんに聞かれたので僕は本当だから素直に頷いたよ。


「これじゃ7級始まりなんてダメだわ…… でもまだ十二歳だし…… どうしましょう…… ハッ、先ずは買取額の査定を終えてしまいますね。諸々の問題は昼食の時に考えましょう」


 そう言ってお姉さんが何かを唱えるとデスグリズリーとデウスグリズリーとお姉さんが光の筋で繋がった。


「はい、きれいに切れてますからデスグリズリーは金貨三十枚、デウスグリズリーは白金貨二枚になります。ある程度細かいお金を含めてお渡ししますね。先ほどの登録料もここから引かせて貰いますし、魔術ザックはどうされますか? 買われますか? 収納を持っている事の誤魔化し用なので一番安いモノで良いかと思います。一番安いモノでもデウスグリズリー一体は入りますから。そうすると銀貨二十枚の魔術ザックです」


 僕はそれも購入しますとお姉さんに伝えた。


「それではそれらを差し引いた金額をお渡ししますね。少し先ほどの買取受付の前でお待ち下さい」


 そう言われたから僕は倉庫を出て買取受付の前にある椅子に座って待っていた。 


 暫くするとお姉さんが戻ってきて僕を手招きする。


「はい、コチラが魔術ザックです。使用者登録をしますので、コチラに利き手の人差し指を当てて下さい」


 言われた場所に指を当てると何かが僕の体から抜けていった。


「はい、ちゃんと出来たようです。それじゃこの中に買取金額も入れてますからちゃんと持っていて下さいね。さて、それじゃケーイチさん。昼食に行きましょう!」


 お姉さんはそう言うと立ち上がり窓口から出てきた。僕はお姉さんの後ろについて行く。


「おや! レイミー、また年若い彼氏じゃないか!!」


 ギルドを出て通りを歩いているとお姉さんにそんな声がアチコチからかかる。けど、レイミーさんは、


「バカね、田舎から出てきた従弟いとこよ。これから案内するのよ」


 って答える。けれども答えられた方も、


「おいおい、ここより田舎なんて無いだろ?」


 なんて笑いながら言ってるよ。

 

 まあ、場所的には田舎なんだろうけど、シッカリとした防壁があり中の建物も頑丈そうに見えるからここは田舎とは呼べないと思うなぁ。


 そんな事を思ってたら馬車乗り場らしい場所についた。


「ケーイチさん、ここから馬車に乗って出かけるわ。あ、安心して。話の後でちゃんとギルド推薦の宿まで案内するわ」


 レイミーさんが教えてくれた。


「はい、お願いします。でも、時間は大丈夫なんですか?」


 僕は買取受付をそんなに長い時間は不在に出来ないだろうと思って聞いてみたけど、交代要員を確保したから午後休を取ったのとレイミーさんが言った。


 そして馬車がきてレイミーさんと一緒に乗るとやって来たのは住宅地区だった。

 その内の一軒の食堂に入る。


「おや、レイミーおかえり。今日は早かったねって! お前、そんな若い子をたぶらかしてきてっ!!」


 中に入るやいなやこの食堂を経営してるだろうと思うレイミーさんに似たおばさんがレイミーさんの後に続いて入った僕を見てそう叫んだ。


「お母さん、何をバカなことを言ってるのよ! この子は今日、ハンター登録に来たばかりの新人さんで、色々と教えて欲しいって頼まれたから昼食を一緒にって誘っただけよ! ランチ二つを個室にお願いね」


「ホントかい? 僕、色々と教えてもらうって言って、アッチエッチの方の教えが入ったらおばさんにちゃんと言うんだよ。バカ娘をおばさんがちゃんと叱るからね」


 いや、貴女の娘さんはそんな事を教えたりしないと思いますよ。


「お母さん、怒るわよ!」


「はいはい、ランチ二つね!」


 そそくさとその場を去るレイミーさんのお母さん。


「もう! ホントに! ゴメンナサイね、さあ、ここよ。入ってケーイチさん。この中なら安心して秘密の話も出来るから。もう分かったと思うけどここは私の実家なの。父と弟が料理を、母と妹が配膳をしてるのよ。私だけがギルドに就職したのは安くお肉を仕入れる為、ってそれは冗談だけどね。で、家はギルドでも利用して貰ってて、ギルド長が内密の話をする時にこの部屋を利用するの。だから、ここにある遮音の魔道具を使えば今、この部屋にいる私とケーイチさんの声はお互いにしか聞こえなくなるから安心してね。さ、座ってちょうだい」


 レイミーさんに言われて椅子に座ると、さっそく


「ケーイチさん、田舎から出てきたってウソなんでしょ? う〜ん…… 使徒様、だよね?」


 とバレてしまってるーっ!? やっぱりバレるものなのかな?

 そう思い仕方なく頷く僕。


「うん、大丈夫よ。秘密にしたいなら誰にも喋らないから。それなら先ずはこの世界の常識を知らないとダメね。今から一般的な事を言うわ。頑張って覚えてね」


 レイミーさんがそう言ってこの世界の常識を語ってくれた。

 途中でレイミーさんの妹さんがランチを二つ持ってきてくれたから、先にそれを食べて話が続く。


 分かった事は、この世界も一年が十二ヶ月で、全ての月が三十日だという事。

 曜日もあって、幸いな事に月火水木金土日らしい。読みがつき曜日、曜日、みず曜日、曜日、かね曜日、つち曜日、曜日だということだ。

 時間の概念もあり、一日二十四時間も一緒。時計も高価ではあるけどちゃんとあるそうだ。魔道具らしいけどね。

 そして、お金。


 銅貨、大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、黒金貨で銅貨十枚で大銅貨一枚という風に各十枚で次の硬貨の一枚になる。


 一番安いパン一個が銅貨二枚で買えて、宿代の平均は大銅貨五枚だそうだ。


 う〜んと、頭の中で簡単に換算表を作ってみた。


銅貨は百円、大銅貨は千円、銀貨は一万円、大銀貨は十万円、金貨は百万円、大金貨は一千万円、白金貨は一億円、黒金貨は十億円……


 えっと、確かさっきデウスグリズリーの買取価格が白金貨二枚ってレイミーさんが言ってたような……


 今、僕は二億円も持ってるのか!?


 と換算してから心臓が止まるほどビックリしてしまった……

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