第7話 家をどうする?
で、僕の内心の驚愕はともかくとしてレイミーさんの話は続く。
「でね、この隠者の村で普通に仕事をしてる人たちの平均月収が大銀貨三枚ぐらいなの。家を一軒、土地ごと購入するのが安くて大金貨五枚って感じかしら。ちなみに
確かに、あのボリュームで前世でいう
野菜と共に甘めのソースで炒められた何かのお肉がお皿一杯にあり、パンが二個にご飯がついて、スープもついてきてる。
そう! ご飯があるのには安堵したんだ。僕は朝はパン派だけど昼、夜はご飯じゃないとって思ってたからね。
ただしレイミーさんが言うにはお米があるのはこの大陸ではこの隠者の村だけだろうって話だ。
何でもデックスさんの前の村の代表だった人が魔法で麦を変化させてお米にしたそうだよ。
そんな魔法があるなんて凄いよね。でもその人も天寿を全うされたって言ってるから今では村で食べる分だけを種籾を残して作ってるんだって。
お米派の人は村でも三割ほどしか居ないってレイミーさんが言ってたよ。
勿体ない。こんなに美味しいのに。
そんな感じでレイミーさんからこの世界の常識を教わった僕。
次はレイミーさんからの質問が始まったんだ。
「ケーイチさん、使徒様なのは分かったけど初めからそんなに強い使徒様っていうのは記録に残ってないの。ハンターギルドに今まで登録された使徒様たちは初めはそれほど強くなかったと記録されているわ。でもケーイチさんはいきなりデスグリズリーやデウスグリズリーを倒している…… デスグリズリーはハンターとして2級の人が倒せる強さ、デウスグリズリーにいたっては二段以上じゃないとソロでは倒せないとなっているの。ちなみにだけどハンターとして段位までのぼっている人はこの大陸では十五人しか居ないわ。二段以上なのは七人ね」
う〜ん…… どう答えようかな? 素直に言ってしまおう! こういう時の僕は嘘は苦手だからね。
「レイミーさん、実は僕自身が強いんじゃなくて、この武防具が凄いだけなんです。これらの武防具は鍛冶の神様が自ら鍛えて僕にくれたものなんです。実際の僕自身はこの武防具が無ければとても弱いです」
僕の言葉にレイミーさんが納得している。
「そうなのね、鍛冶の神様が鍛えられた武防具。でもそれを与えられたのもケーイチさんの実力の一つだと言えるわ。これからもケーイチさんはその武防具を常に装備して活動してくださいね。それと、7級からと言いましたけど、私権限で1級上の6級からに変更しますね。買取受付担当にそんな権限があるのかって? フフフ、私たち買取受付は日々、獲物を狩ってくるハンターを見ていますから、この前まで角兎しか狩れなかったハンターが、力をつけて牙猪を狩ってきたならば、私たち受付の権限として昇級させてもいい決まりがあるんです。本当ならケーイチさんはデウスグリズリーを倒せるほどなんですから段位認定しても良いんですけど、そうするとギルド本部までケーイチさんが行かないとダメになりますし、目立ちたくは無いんですよね?」
「はい。出来れば穏やかに毎日を過ごしたいです。その為にはこの村に永住したいと思ってます。『お米があるから!』なので昇級せずに7級からのままで良いですよ」
そう、やって来たばかりの僕がいきなり6級からとなると他のハンターに目をつけられるかも知れないし、僕としては目立たずに過ごしたいから昇級は無しにしてもらいたい。
「そう…… うん、分かりました。それじゃケーイチさんの望みどおり7級からのままで。それで、永住されるならば家を購入されませんか? ケーイチさんの今のお手持ちのお金で買える家がこの村には何軒もありますよ。あ、目立たないように商業ギルドにいる私の友人を通せば買った人は誰か分からないように購入出来ます。対外的にはケーイチさんは借りているって言えば大丈夫だと思うんです」
なるほど、家か…… でもさっき教えて貰ったけど、家を買うと税金がかかるんだよね。
建ってる敷地面積に応じてらしいんだけど、例えば十メートル四方に建ってる家の税金は平屋だと年に銀貨八枚(八万円)。二階建てだと大銀貨一枚(十万円)に銀貨五枚(五万円)。
僕が一人で住むならそんなに大きな家は必要ないからなぁ。でもそんな都合の良い物件があるのかな?
「悩まれてるようなので、どうですか、明日は物件の下見に行ってみたら。私の友人に話を通しておきますし」
悩む僕を見てレイミーさんが提案してくれたのでそれに乗る事にした。
「はい、そうします。色々と教えてくれて有難うございます。とても助かりました」
僕はレイミーさんにお礼を言って部屋を出ようとしたら、
「ケーイチさん、待って。宿に案内するから」
とすっかり忘れていた僕は顔を赤くしたのだった……
ランチの代金はもちろん僕が支払いましたよ。そういう約束だったし。
それから住宅地区にあるハンターギルド推薦の宿までレイミーさんが案内してくれて、宿の人には期待の新人だからよろしくねと言ってくれた。
「おお、レイミーちゃんがそう言うなら本物だな。分かった、名前は? ケーイチか。よし、うちは朝飯代金に銅貨三枚かかるが、それをタダにしてやろう。頑張ってハンターとして成長しろよ」
と筋肉ガッシリの宿の親父さんにサービスをしてもらった。宿代は一泊、大銅貨三枚。取り敢えず一週間分を先払いした。
「おお、凄いな。新人なのに一週間分を先払い出来るのか。牙猪でも狩ってきたのか?」
と親父さんに聞かれたけど、ハハハと笑ってごまかしておいた。翌朝にレイミーさんが宿まで迎えに来てくれる事になってる。そのまま一緒に商業ギルドまでついてきてくれるそうだ。
優しい良い人に出会えて良かったよ。というかこの村の人たちは基本的に優しい人ばかりな気がするよ。村全体の雰囲気からそう感じるんだ。
うん、小さい家なら購入しても良いかなってその夜には僕はその気になってたんだ。
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