第8話 商業ギルド!

 翌朝、朝食を食べ終えたタイミングでレイミーさんが迎えに来てくれた。


「おはようございます、レイミーさん。よろしくお願いします」


「おはよう、ケーイチさん。それじゃ、さっそくだけど商業ギルドに向かいましょう」


 二人で馬車に乗り商業地区へと向かう。商業地区に着くとレイミーさんはハンターギルドに行きギルド長に半休を願い出て、もぎ取ってきたそうだ。


 いいのだろうか、僕に付き合わせて…… そうは思ったけどこの世界の常識を教わったばかりの僕にはレイミーさんしか頼れる人はいない。いつか必ず何かでお返ししようと思い、今回は甘えさせてもらう事にした。


「さあ、こっちよケーイチさん」


「はい、レイミーさん」


 僕はレイミーさんの横に並んで歩く。すると昨日と同様に軽口を言いながらレイミーさんとのコミュニケーションを楽しむ村の人たち。


 そんなやり取りを眺めながらついて歩くこと五分。どうやら商業ギルドについたようだ。


 勝手知ったる風に中に入るレイミーさん。そして、案内受付の人に何かを告げた。

 案内受付の人が受付を離れて奥へと進み、机で事務作業をしている男性に声をかけている。

  

 その男性がコチラを見てレイミーさんを見てパッと表情を明るくした。うん、レイミーさんの彼氏さんなのかな?


 机から離れてコチラに来る男性は僕たちの前に来ると挨拶をしてくれた。


「やあ、レイミー、おはよう。この人が昨夜話にあった人だね。はじめまして、ケーイチさん。商業ギルド住宅担当のクルスと言います。レイミーの婚約者なんです。立ち話もなんですからコチラにおいで下さい」


 クルスさんはレイミーさんの婚約者さんなんだ。昨夜って事は僕と別れた後にレイミーさんはクルスさんと会ったのかな? スマホなんかは無いだろうしきっとそうだろうね。

 それにしてもレイミーさんにしてもクルスさんにしても明らかに年下の見た目の僕にさん付けで呼んで丁寧に対応してくれるよね。

 僕としては本当に有り難い事なんだけど、何だか悪いような気もするよ。ほら、実際は前世の記憶があるからレイミーさんやクルスさんよりも年上感覚だからね。

 一応は気をつけて見た目通りの口調を心がけるようにしてるけどね。


 そんな事を考えながらクルスさんの案内で個室に入った僕たち。

 中のソファに座るように勧められて素直に座るとさっそくクルスさんが本題に入ってくれた。


「さて、家の購入をご検討されているとか。そこで、税も少し安価な物件を二軒ほど見繕ってみました。コチラの地図をご覧ください。今、ケーイチさんがお泊りになってる宿がここです。一軒目はこの宿から西方面に歩いて三分ほどの場所で、平屋で風呂無しの物件となります。トイレはついてます。敷地面積が凡そ八メートル四方なので本当に狭い家なのですが、年に銀貨五枚の税金で済みます。もう一軒はコチラの場所で、今の宿からは離れてますが、直ぐ側に馬車駅がありますので移動に不便はないかと思います。敷地面積は凡そ二十メートル四方で家屋は十メートル四方の二階建てなのですが、少し訳アリの物件なので税金は年に大銀貨一枚となってます。コチラは風呂もついてますよ」


 いや、その訳アリの訳を教えて下さいよ、クルスさん。


「フフフ、訳アリの訳を隠してもしょうがないのでお教えしますと、座敷童が住んでいてその座敷童が気に入らないと住めないからなんです。ですので先にコチラの平屋の物件を見た後に、ココに向かいたいと思いますがよろしいですかケーイチさん?」


 何だ、座敷童か…… って、異世界なのに居るんだね、座敷童。まあ気に入って貰えたら住めるなら挑戦してみるのも良いなぁ。


「はい、先ずは平屋の物件を見てみたいです。その後にその座敷童が居る物件にも行ってみたいです」


 僕とクルスさんがそう話してたらレイミーさんが午前中に終わりそうだから私もついていきますって言ったんだ。

 うん、お二人の貴重な時間を僕は邪魔しないようにしますよ。 


 という訳でまた馬車駅まで行き住宅地区に戻ってきた。

 今度はクルスさんも一緒だからかみんなが遠慮して話しかけてこないよ。

 そんな二人は仲良く話しながら歩いている。若いって良いよねぇ〜…… ハッ!? 今の僕はもっと若いんだった!!

 この思考もそのうちに体の若さに引っ張られて変わってくれないかな。変わると良いなぁと考えながら二人を見ながら後をついて歩く僕。


 泊まってる宿を越えて歩くこと三分で最初の平屋の物件にたどり着いた。

 家というよりは小屋といった外観だね。


「中もご覧ください」


 そう言ってクルスさんは鍵を開けて中に入らせてくれた。


「あれ? 思ったよりも広いですね」


 そう、外観から想像していたよりも広く見える。よくよく考えてみたらそれもそうか。八メートル四方だと六十四平米で、凡そだけど三十八畳の広さだもんね。


「主要な柱だけしか立ててないので、ほぼ八メートル四方そのままの広さを確保してあるのと、トイレの床面は地面から離してあるので、八メートルよりも外に出てますが、接地してないので税金対象外になってますから。それと普通の平屋よりは少しだけ屋根を高くしてあるので、部屋の高さもあるので広く見えるのだと思います」


 ああ、なるほど。天井が普通よりも高いからか。

 

 中は半分が台所兼居間で、半分が寝室になっている。一人で住むなら何の問題もないなぁ。逆に学生の頃に住んでたボロアパートよりも広々として快適そうだ。


「うん、中々良さそうですけど、もう一軒を見てから決めたいと思います」


 僕はクルスさんにそう言って保留にしてもらったんだ。


 保留にしてもらったのは決して座敷童に会いたいっていうミーハーな理由じゃないからね。


「そうですね、分かりました。それじゃもう一軒の方に向かいましょう。少し遠いですが徒歩移動でも大丈夫でしょうか?」


 うんうん、少しでも長く婚約者さんとお話したいんですよね。僕は見た目は子供でも中身は大人なんでちゃんと分かってますよ。例え前世で悲しい独身で、お金を払って初めてを経験した男だとしても…… うん、何だか悲しい気持ちになってしまったぞ。

 今世では恋人が出来るように努力しよう!!


 そう思いながら僕はクルスさんに頷いて徒歩移動を了承したんだ。 

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