第14話 パーティー名は狩り女(かりじょ)!

 どうやって説明をしようかな……


 僕が悩んでいると、剣を持ったお姉さんがハッとしたように言う。


「ご、ごめんね。助けて貰ったのに名乗りもせずに。私たちは6級三人のパーティーで狩り女かりじょって言うの。私がリーダーのセツよ」


「私が魔法士のライラ」


「あの、傷薬を有難う。私が盾役のハンナ」


 自己紹介をしてくれたよ。パーティー名が凄いよね。前世で歴女れきじょって呼ばれる女性が居たけど、狩り女かりじょってこの世界ならではだね。っと、僕も自己紹介しないと……


「僕は7級ハンターのケーイチです。無事で良かったです。その傷薬は残りを上げますから、使って下さいね。それでこのジュボッコは僕がいただいても良いですか?」


「もちろん、ケーイチくんのだよ! でもあの、この傷薬はいただけないよ! まだこんなに余ってるのに! ケーイチくんだって必要でしょ」


 いや、僕の収納内には同じ高級傷薬がまだ22個ありますから大丈夫です。でもそのままそう言うとまた何でそんなにとか言われそうだから……


「えっとですね。僕の住んでた田舎では人に一度あげた物は返して貰ってはいけないという風習があってですね。その風習を破ると二度と故郷に戻れないっていう恐ろしい決まりがあるんです。なので、僕としては返されると困るんです…… 分かってもらえますか?」


「そ、そんなの黙ってれば故郷の人たちにバレたりしないでしょう?」


「いえ、ダメなんです…… うちの田舎には千里眼のお婆がおりまして、僕の行動を逐一監視してますから、いま、この時にもお婆の視線を感じてます」


「なにそれ! 怖っ!?」

「そ、その人ってとんでもなく凄い魔法士様では!?」

「ケーイチくん、常に見られているなんて落ち着かないね……」


 三者三様に僕の口からでまかせを信じてくれたみたいだ。


「いえ、もう慣れましたから。だから、そのままその薬は使って下さいね、それじゃ僕はこれで」


 と流れるようにテツジュボッコを魔術ザックに入れるフリして収納してさっさと立ち去ろうとしたけど……


「ちょ、ちょっと待ったーっ!!」


 【ねるとん紅◯団】を彷彿とさせる言葉がセツさんから出たよ。


「あの、まだ何か? ハッ、ひょっとして横取りとは言わないけど僕の身体で対価を払えとか?」


「そんな事いいません!! もう、ケーイチくん。ちょっとだけでも教えてよ。その強さの秘密を。だってテツジュボッコの枝葉は鉄と同じなんだよ。どうやって木刀で斬ったの?」


 やっぱり素直に別れてはくれないみたいだ。ここで僕は奥の手を出した。


「ハンター規則、第二条のa項【他のハンターが秘密にしてる事をみだりに知ろうとしてはイケナイ!!】を適用します。セツさん、僕はソロ活動ハンターなので手の内を人に知られたくないんです。よろしくお願いします」


 狩り女の人たちが真面目にハンター規則を読んでるかどうかは分からないけど、この規則はちゃんと明記されてるからね。


「リーダー、ダメだよ。ケーイチくんを困らせちゃ」

「そうだよ、セツ。せっかく助けてくれたのに、私たちが迷惑までかける訳にはいかないわ」


 ライラさんとハンナさんがそう言ってセツさんを止めてくれる。


「ち、違うの、困らせようとかじゃなくて…… 私も剣を使う者の1人として純粋に興味があったから…… その、ゴメンね。ケーイチくん……」


 いえいえ僕も素直に言えれば良いのですけど…… 凄いのは僕じゃなくて鍛冶の神様から貰った武防具なんですよって。

 神様から貰ったっていう部分を言えないからなぁ…… 言えばまた使徒様だ何だと言われて大事になりそうだしね。


 僕は目立たず、騒がれず、普通に生活したいのです、ゴメンねセツさん。


「いえ、分かって下されば良いんです。それじゃ、これで。皆さんはギルドに戻られるんですか?」


「ううん、まだ二体しかジュボッコをハント出来てないから…… せめてあと三体ぐらいはハントしないと」


「それなら、コッチにジュボッコが居るみたいなので案内しますよ。その後に別れましょう」


 僕は気配感知で普通のジュボッコの居る方向が分かるから、そこまで狩り女の皆さんを案内する事に。


「良いの? ケーイチくんもジュボッコハントに来たんでしょう?」


「僕は今日の自分のノルマは達成済みなので大丈夫です」


 という訳で狩り女の皆さんを案内してジュボッコのいる場所まで行くと。


「ど、どうするの、コレ……」

「さすがに一度に八体は……」

「でももう向こうにも気づかれちゃったよ……」


 うん、八体しか居なかったか…… 十体は居ると思ったんだけどなぁ。僕の気配感知もまだまだだね。


「僕も協力しますからハントしちゃいましょう。もちろんですけど八体全てを狩り女の皆さんにお渡ししますからね」


 そう言って僕は木刀を腰から抜いた。


「ええいっ!? 男は愛嬌、女は度胸!!」


 前世では逆でしたがこの世界ではそうなんですね、セツさん。


「違うわ、リーダー! 女は知性よ!!」


 魔法士らしい言葉ですねライラさん。


「2人とも違うわよ! 女は頑丈よ!!」


 うん、ハンナさん。ハンナさんに相応しい言葉です。


 そして、ハンナさんを先頭に僕たちはジュボッコに突っ込んで行った。


 戦闘時間凡そ十五分。八体全てをハントしたよ。


「ハアハア、し、信じられない。こんなに早く八体もハント出来たなんて」


「ケーイチくんが凄すぎるよ、ハアハア」


「ホントね。ケーイチくん一人で五体だもの……」


 で、僕にその五体を渡そうとか何とか言ってくるから、僕は皆さんに言ったんだ。


「ハンター規則、第一条のb項【事前の取決めを損なうなかれ】です。ハント前に八体全てが皆さんのだって取決めしたので、ダメですよ」


 それでもまだ何かお礼をって言うから僕は質問に答えて貰う事にしたんだ。


「それじゃ、一つ教えて下さい。7級から6級に上がる条件ってあるんですか?」


「えっとね、特に条件は無いの。ただ、依頼を確実にこなす事かな。大体の目安としては、7級〜6級依頼を失敗せずに凡そ三十ぐらいこなせば昇級出来ると思うよ。後は獲物買取受付のお姉さんが認めた場合かな?」


 そう言えばレイミーさんがそう言ってたね。でも僕は魔物魔獣ハントをしてこなかったから、まだレイミーさんの所には行ってないんだよね。今日から始まりだから。レイミーさんの昇給の為に頑張らなきゃ。

 それはそれとして、依頼については僕は今のところまだ十数回しか依頼をこなしてないからね。でももう少し頑張れば6級に上がれるかな。


「それとねついでだから教えてあげる。6級から5級に上がるのは採取ハントと討伐ハント依頼を各三十以上ずつこなせば上がれるの。5級から4級に上がるのにはギルドの課す試験に合格する必要があるわ。4級から3級、3級から2級、2級から1級も同じで試験を受けて合格する必要があるわ。それ以上の初段といって段位になるには試験だけじゃダメらしいけどね。ゴメンね、段位については分からないの」


「いえ、とても良く分かりました。有難うございます。皆さんはもうすぐ5級ですか?」


「ううん、私たちもやっと最近になって6級になった所だから。まだまだこれからよ」


「それじゃ、お互いに頑張りましょうね!」


 そう言って狩り女の皆さんと西門に向かって歩いていると向かい側から男性ばかりのハンターパーティーが歩いてきた。最初に見学させて貰ったパーティーとは違うね。


「おっ、セツじゃねぇか。ハント出来ずに泣く泣く帰るのか、オイ」


 何だろ、テンプレの匂いがするよ…… 

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