第13話 魔物魔獣ハント!
我が家での生活も一週間が過ぎてサチと過ごすことにも慣れてきた頃、僕はいよいよ魔物魔獣ハントをメインに活動する事にしたんだ。
一週間のうち前半三日を魔物魔獣ハント、後半二日を薬草ハントの日と決めて、残り二日は休む事にした。
夢の週休二日を異世界で取得出来るなんて思っても見なかったよ。
薬草ハントについてはターニャさんから続けて欲しいと頼まれたのもあるけど、新たに見習いハンターとなった十歳の子を二人、勉強の為に連れて行って欲しいって言われたんだ。
薬草ハントの場所は出てくる魔獣も角が生えたウサギさんぐらいで、その子たちも狩った事があるって話だったから受けたんだよ。
でも十二歳が引率者で良いのだろうか……
まあそんなこんなで今日は魔物魔獣ハントの日なんだ。朝食も食べてギルドにやって来た僕は7級ハンターで受ける事の出来る依頼を見てみた。
【緊急!】
西門から一キロ進んだ大森林に増えたジュボッコのハント!
報酬はジュボッコ一体につき大銅貨五枚。
対象ハンター 7級〜6級
これなんか良さそうだね。ギルドの発行してる魔物魔獣図鑑によればジュボッコは体高八十センチ〜一メートルで、手の代わりになってる枝先になる実を飛ばしてくるらしい。で、ジュボッコが増えると普通の木が枯れていってしまうんだって。土中の養分を吸い取ってしまうから見つけたら討伐対象になるんだけど、その弱さから5級以上のハンターが狩っても報酬は貰えないっていう決まりがあるそうなんだ。
ジュボッコの弱点は頭頂にある枝葉。それを切れば光合成ができなくなって倒せるらしい。
これなら僕でも一刀両断せずに倒せると思う。多分だけど……
ジュボッコはその体自体が素材となるから、討伐報酬の他に買取額も入ってくるから美味しいよね。まあ、一体につき銅貨五枚の買取額だけど……
それでも十体倒せば銀貨五枚に大銅貨五枚で五万五千円になるから稼ぎとしては十分だ。
僕はこの依頼を受ける事にした。
受付を済ませてさっそく馬車駅に向かう。今日はいつもと違う反対側の駅だ。いつもは東門に向かうからね。西門行きは向かい側になるんだ。
「おい、ケーイチ。そっちは西門行きだぞ」
さっそくいつもと違う馬車駅に居る僕を見つけたゴズさんに声をかけられた。
「ゴズさん、今日は薬草ハントじゃないんです。ジュボッコハントに行ってきます!」
僕は元気よく返事をする。
「おお、いよいよ魔物ハントデビューか。ジュボッコは大して強くないが複数いる時は気をつけてな」
僕はゴズさんに頭を下げてちょうど来た馬車に乗り込んだ。
馬車は直ぐに西門に着き、僕は西門を守る門番さんにギルドカードを提示する。
「おっ!? まだ7級か? それにソロなのか。ジュボッコは弱いけど気をつけるんだぞ」
「はい、気をつけます。有難う!」
門番さんと会話を終えて西門を飛び出した僕は西に向かって走る。
西にある大森林の浅い部分にジュボッコが湧き出しているらしいからね。
僕の他にも7級や6級のハンターがパーティーでハントに来てる筈だ。
狩り尽くされる前に少しでも狩らないとね。
ちなみにだけど僕の能力値も少しは上がってるんだ。ほら、クマさんを倒したから
名前∶ケーイチ
年齢∶十二歳
性別∶男
種族∶人
体力∶195
気力∶195
攻撃∶67(+999,999,000,000)
防御∶67(+5,555,555,000,000)
武器∶神木刀(銘【
防具∶神防具一式(銘【
技能∶言語完全理解·収納·古流刀術·気配感知
あのクマさん二体で
その後も角の生えたウサギさんは何体か倒したけど、
今度のジュボッコハントで一つでも上がると良いなぁって思ってるんだ。
大森林の入口に着いた僕は周辺を良く確認する。この付近では戦闘は起こってないみたいだからやっぱり大森林の中に入る必要があるみたいだ。
慎重に歩を進めて大森林の中に入ると、右手側で戦闘している声が聞こえる。どうやらパーティーでハントをしてるみたいだ。
後学の為に陰から見学させて貰うことにしたよ。
「そっち行ったぞ!」
「おう、任せろ!」
「セイッ!!」
見たら僕よりも少し年上の男子パーティーだったよ。盾役の人にヘイトを集めて剣士の人が頭頂の枝葉を切っている。もう一人の人は装備からして剣士じゃなくて斥候役なのかな?
でもその人もダガーで素早く枝葉を切ってるよ。
なるほど、パーティーだとあんな感じで連携出来るからハントも楽になるんだね。
良いものを見せて貰ったよ。それから僕はその場をそっと離れてもう少し奥に入って行く。
すると、居たよ! ジュボッコが二体。僕が先に気がついたから二体はまだ僕に背を向けている。
そっと近づいて木刃で頭頂部分を優しく撫でた。
それでやっと気がついたジュボッコが僕の方を向こうとしてそのまま倒れた。斬られた事に気づいて無かったんだね。相変わらずこの木刃は良く斬れるよ。
僕はハントしたジュボッコを魔術ザックに入れるフリをして収納にしまった。何処で誰が見てるか分からないからね。普段からこうしておかないと収納の事がバレちゃうかも知れないから。
それからも順調にジュボッコをハントしていく僕。十体のジュボッコをハントし終えた時に悲鳴が聞こえたんだ。
僕は悲鳴が聞こえた方に走り出した。
「いやっ! ウソ! 何で?」
「上位種が居るなんて聞いてないっ!!」
「クッ! やっぱり斬れないっ!!」
女の子三人のパーティーがジュボッコ相手に苦戦してるみたいだ。上位種って言ってたけどそう言えば木肌色じゃなくて赤錆色だね。
助けようかと思ったけど横取りはハンターとしてご法度だからなぁ…… 一発で資格剥奪になっちゃうし、どうしようかな?
そう思ってた時に赤錆色のジュボッコが種を飛ばしたんだ。
盾で防ごうとした女の子だけどその盾を突き破り、更には鎧も貫いて肩口に種が刺さったみたいだ。
これはもう危険だよね!!
「助けは要りますか?」
僕は更に種を飛ばしたジュボッコと女の子たちの間に立ちふさがる。僕の鎧、
「えっ!? ダメよ! 逃げてっ! 助けを呼んできてっ!!」
僕が女の子たちより幼いのをみて取った剣を持った子がそんな事を言うけど、助けを呼びに行ってる間にこの子たちはヤラれてしまう。
「僕なら大丈夫です。お姉さんたち、そこから動かないで下さい。あ、それと怪我をしたお姉さんにこの傷薬を!!」
僕は後ろ手に村で購入した高級傷薬を放り投げた。受け取る気配を確かめた僕はジュボッコに向かって走り出す。
自分の飛ばした種が跳ね返って自分を攻撃した事に戸惑っているジュボッコは僕の木刃の優しい撫で斬りで枝葉を失い倒れた。
「ウソ!? 何で木刀で!?」
「エット…… 間違いなくテツジュボッコだったよね?」
「な、何が起こったの?」
倒したからとお姉さん方の方を見たら傷ついたお姉さんがまだ薬を塗ってない!
「ダメじゃないですかっ!! 早く薬を塗って下さい! 乙女の柔肌に傷跡が残ったらどうするんですかっ!! さあ、僕は後ろを向いてますから早くっ!!」
僕の言葉と本当に後ろを向いたからお姉さん方が鎧を脱がして傷薬を塗っている。
「エエーッ! こ、これ!?」
「高級傷薬じゃないっ!!」
「こ、こんな高いの支払えないよ……」
なんて言ってるけど僕は金銭を要求したりしないですよ。
「薬は塗りましたか? 鎧にも塗って下さいね。穴ぐらいならそれで元通りになりますから」
そう、この世界の誰も気づいてないけど、僕は気づいたんだ。傷薬って鎧や盾、剣が欠けたりした時に塗ってやると補修してくれる事に。世紀の大発見だと思うんだ。
「ほ、本当に直った!?」
お姉さん方が驚いてるけど、どうやら服も鎧も身につけたみたいだから僕はお姉さん方の方を向いた。
「あの、横取りとか言わないですよね?」
僕は一番不安だった事を確認する。
「言わないよ! 命の恩人にそんな事を!」
剣を持ったお姉さんがそう言うと他の二人のお姉さんもウンウンって頷いてくれてる。良かった、これで資格剥奪は免れたよ。
で、お姉さん方に質問攻めにあう僕……
うん、どうやって説明をしようかな……
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