アンナの最期
クロガネさんの恋人と名乗る男が気に入らない。
絶対に恋人なんかじゃない。
クロガネさんは迷惑……していたかしら?
キスも嫌そうな印象じゃなかったし……。
わたしの見間違いよね。きっとそう!!
あの男をなんとかしないとクロガネさんに近づけない。
知り合いの男に頼んで、あの男を――。
◆ ◆ ◆ ◆
「すみません」
急に背後から声をかけられ、アンナは思わず振り向く。
そこにいたのは薄汚れた若い男。髪はボサボで無精髭を生やし、
服も洗濯していないのか汚れており、ジャケットのロゴも読みづらくなっている。
清潔感がまったくない相手に関わりたくなかったため、アンナは無視しようとするも、男が遮るように一枚の紙を掲げた。
「この男を探しているのですが……見ていませんか?」
紙は指名手配書で、そこに載っていたのは『クロガネの恋人』と名乗っていたあの男――カイトだった。
アンナは驚きのあまり言葉を失う。
(あの男、お尋ね者だったの!? そんなやつがどうしてクロガネさんの恋人なの? もしかして、クロガネさんは脅されているんじゃ……。そうだとしたら危険じゃない。あいつをクロガネさんから引き離さないと!!)
カイトを危険と感じたアンナは、意を決して男に告げる。
「わたし、その人見ました。知り合いの家で……」
「その知り合いの家はどの辺りにありますか?」
「道案内します」
アンナは男をクロガネの自宅へ連れて行く。近道である裏路地を通れば、遠回りをせず、短時間で着いた。
「着きました。あの家です」
「質素な家だね」
「廃墟を改築しただけですし、クロガネさんは傭兵の仕事であまり帰って来ないときもありますから」
「そうなんだ。――ありがとう」
男がお礼を言った直後、アンナの後頭部にひんやりした硬い“なにか”が当てられる。刹那、ドンッ!! という衝撃とともに彼女の意識はそこで途絶えた。
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