Different 4 アンナ

 クロガネさんの恋人と名乗る男が気に入らない。


 絶対に恋人なんかじゃない。


 クロガネさんは迷惑……していたかしら?


 キスも嫌そうな印象じゃなかったし……。


 わたしの見間違いよね。きっとそう!!


 あの男をなんとかしないとクロガネさんに近づけない。


 知り合いの男に頼んで、あの男を――。


「すみません」


 急に背後から声をかけられ、わたしは思わず振り向く。

 そこにいたのは薄汚れた若い男。髪はボサボで無精髭を生やし、うつろな目つきが特徴的だ。

 服も洗濯していないのか汚れており、ジャケットのロゴもちょっと読みづらい。

 清潔感がまったくない相手に関わりたくなかったため無視しようとしたとき、男が一枚の紙を掲げた。


「この男を探しているのですが……見ていませんか?」


 紙は指名手配書で、そこに載っていたのはクロガネさんの恋人だ、と名乗っていたあの男だった。

 あの男、お尋ね者だったの。

 そんなやつがどうしてクロガネさんの恋人なの?

 もしかして、クロガネさんは脅されているんじゃ……。そうだとしたら危険じゃない。

 あいつをクロガネさんから引き離さないと!!


「わたし、その人見ました。知り合いの家で……」

「その知り合いの家はどの辺りにありますか?」

「道案内します」


 わたしは男をクロガネさんの家へ連れて行く。近道である裏路地を通れば、遠回りをせず、短時間で着いた。


「着きました。あの家です」

「質素な家だね」

「廃墟を改築しただけですし、クロガネさんは傭兵の仕事であまり帰って来ないときもありますから」

「そうなんだ。――ありがとう」


 男がお礼を言った直後、わたしの後頭部にひんやりした硬い“なにか”が当てられる。

 刹那、ドンッ!! という衝撃とともに、わたしの意識はそこで途絶えた。

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