Different 6 YAMATOの元兵士

 

『おまえ、危険だから消すわ』


 通信から聞こえてきたのは、カイトではなく俺を殴ったあの男だ。


「……は?」


 なんであの男がシュヴァルツ・アシェに乗っているんだ?

 カイトがシュヴァルツ・アシェのパイロットじゃないのか?


 混乱する俺をよそに、シュヴァルツ・アシェが間合いを詰めてきた。

 俺が距離をとろうとしたとき、機体が大きく揺れ、モニター画面が乱れる。

 相手がセンサーのある頭部に攻撃をしてきたことに気づき、俺は一層苛立つ。


「……やりやがったなあ!! てめぇ!!」


 俺はミサイルで反撃しようとする。

 しかし、俺の動きを先読みしたのか、シュヴァルツ・アシェは両肩のミサイルコンテナをハンドガンで破壊した。

 カイトと戦っていたときとはまったく違う、シュヴァルツ・アシェの動き。

 不意に俺は先ほどの男の言葉を思いだし、その意味をようやく理解する。


 あの男は、人の命を奪うことに躊躇ちゅうちょがない。

 戦い慣れた……いや……戦いに!!

 まともじゃない!!


 ずっと忘れていたという感覚がよみがえった直後、禍津日の右腕を吹き飛ばされる。

 恐怖が……死への恐怖が加速していく。


「うわああああああ!!」


 残された左腕でショットガンを撃ちまくる。

 だが、まったく当たらない。


「くそッ!! なんで当たらねぇんだ!! 最新鋭のパンツァーだぞ!!」


 世界政府総帥の騎士という男から貰い受けたパンツァー・禍津日。

 YAMATOのパンツァーより性能が高く、これならシュヴァルツ・アシェを倒せる、と思った。


 だが、実際はどうだ?


 シュヴァルツ・アシェのパイロットがカイトであれば、此方が勝っていただろう。

 ところが、いまシュヴァルツ・アシェを操縦しているのはカイトではない。――彼の護衛を務める男。

 護衛を頼まれただけの男が、あのような戦い方をするはずがない。

 あれは戦い方。

 兵士の戦い方ではない。

 あれは……あれは……。


 刹那、全身を押しつぶされる圧迫感が俺に襲いかかってきた。

 喉奥からせり上がってくる物……大量の血を吐きだす。


「……あ?」


 己の体へ視線をやれば、鋼鉄の杭が俺の胸の中心を貫いていた。


「ああああああああ!!」


 悲鳴も上げるも、それは爆発によって掻き消され、目の前は真っ暗な闇に包まれた。

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