魔族VS半神





サヴァスは海上を掛けて、貿易都市の海岸線まで走り抜けた。



海岸の砂場に着地の瞬間、砂を巻き上げて周囲の視界を遮断した。



辺りの砂埃が収まり、辺りを確認する。




正面から、牛と人を合わせた様な化け物が数体こちらに向かっている。


その背後には二足歩行の山羊の様な化け物が控えていた。




「悪魔かしら?」



おそらく、十中八九そうだろう。



しかし人間の都市になぜ悪魔の群れがいるのだろう。



もしや悪魔の集団にでも占拠されたのか。



それとも悪魔使いの人間がいるのか。



それとは別に強力な魔法使いがいるだろうが。




どちらにせよ厄介だ。





悪魔達は一斉にサヴァスに襲いかかってくる。



サヴァスは静かに大剣を構える。



「っ遅い」



先頭に立っていた悪魔を一撃で切断する。




「ウオオオォ!」



もう一体の悪魔が拳を振り下ろす。




サヴァスはそれを大剣を盾にして防いだ。



だが、その隙にもう一体の悪魔が横から突進してくる。




「うっ!?」



攻撃をもろに喰らったサヴァスは、近くにあった岩に激突する。



崩れた岩の中から、すかさずサヴァスは立ち上がった。



頭から血が流れている。



流石に無傷とはいかない。




「油断したら怪我をする......そこそこ強い、でも」



この牛の様な悪魔は、人間の冒険者ーーおそらく一級上位〜特級下位に分類される程度の強さはある。



それがこの数だ。



この都市は何かおかしい。



なぜこんな強さの悪魔が群れているのだ。





「重爆」




サヴァスはそう言い、砂浜に大剣を突き刺す。



大剣から魔力が放たれ、地面を伝って前方が消し飛ぶ程の大爆発が起こる。



周囲の視界を爆煙が覆う。



目の前には、巨大なクレーターができていた。



2体の悪魔を巻き添えにして吹き飛ばした。





だが、牛型がもう一体。



そして山羊が控えている。




「ウオオオォ!」



「くっ!」




牛型とサヴァスが同時に走り出す。



牛型の拳と、大剣が交差する。



牛型の悪魔は真っ二つに両断され、サヴァスは後方に吹き飛んだ。




サヴァスは吹き飛ばされながらも、体勢を整える。



「痛いじゃないっ......!」



牛型悪魔の攻撃力は中々だ。


それでもサヴァスの致命傷にはならないだろう。




「魔族、人ヨリ強イ!」



今度は山羊型の悪魔が突っ込んでくる。




「その見た目で喋るんじゃないわよ!」



サヴァスは大剣を振るう。



山羊の片腕を切断する。



だが、もう片方の腕で身体を握られる。



「コノママ潰ス!」




悪魔は握った手の力を強めようとする。



しかし。



「ナ、ナンダ!?」



悪魔の手が逆にゆっくりと開いていく。



「意外と非力ね」



サヴァスが己の怪力で、抵抗して見せたのだ。



手を振り払うと、大剣を悪魔の脳天目掛けて振り下ろす。




「ガァ!!」



真っ二つに両断された悪魔はその場で、倒れ落ちる。




「少し疲れた......」





しかしこれほどの強さの悪魔だ。



きっとこの都市を占拠している勢力の最高戦力と見ていいだろう。






と思っていたーー。





「嘘? なによ、何なのよ!?」 




なんとリ・ヘイダの街から、数えきれないほどの悪魔が此方に向かってきていた。



それも先程の牛型と山羊型の悪魔だ。




「流石にこの数はきついっ」






でも、自分ならやれる。



おそらく瀕死は覚悟しないといけない。



でもこの程度の強さなら、勝ちの可能性の方が高い。








「魔族とは強いな、我の眷属をこうも容易くとは」




その時だ。



背後から声をかけられる。



「なにものっ!?」




咄嗟に背後を振り向くと、白銀の髪、真紅の瞳、そして黒衣に身を包んだ少女が立っていた。




「人間っ、いや違う!?」



その少女から放たれるオーラは人間とは違う異質なものだった。




「まぁ93レベルだ、このくらいできて当然だろう」



少女は意味不明な事を呟く。



「私が相手をしてやろう、魔族」






シリウスとサヴァスは、対峙してしまった。

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