ゼア帝国侵攻




ライジア王国とゼア帝国の国境線に十万体の魔獣の群れが向かっていた。



大地を黒く染め上げる異形の化け物達は、地面を踏み鳴らして進軍する。




その動きを察知していたのは、帝国諜報部の特殊部隊だった。



彼らの活躍により、いち早く魔獣の進行を察知することができていた。




ゼア帝国側の国境には、帝国正規軍4個師団ーー四万人。


冒険者六千人。


傭兵一万五千人。


徴兵された非正規軍五万人。



のべ十万千人の大軍勢が魔獣達を迎え討とうとしていた。





帝国軍陣地中央の司令部にて。




「この戦い如何なる結果になりましょうか? アバラ騎士長」



そう問いかけたのは、赤髪の女騎士だ。


彼女はリーヌ・ライ・コールヌイーー帝国筆頭騎士団、その最高戦力の"四剣"の一人だ。



問われたのは、同じく騎士の男だ。



「さぁな......しかし戦うしかあるまい」



アバラと呼ばれた男はそうとだけ言った。



彼こそ帝国軍最強の騎士だ。



帝国正規軍の中で唯一、大魔族を討ち取ったことのある猛者だ。




その時だ。



一人の兵士が駆けつけてくる。




「魔獣に紛れて悪魔が多数、恐らく上位個体です!」



噂には聞いていたーーあの魔獣は悪魔の群れに率いられていると。





それもカーマダイ家の精鋭と互角だそうだ。



それが本当なら、絶望しかない。





「ところでリーヌ、カーマダイ家の精鋭とお前が戦ったならどうなる?」


「一人なら辛勝、二人なら互角で上等、三人なら勝ちの可能性は薄いかと」


「だな、俺も四人で囲まれたら負けるだろう」



それと同等の化け物が無数にいるーー現実はあまりにも酷い。



「まぁ、深く考えるのはよそう」


「ですね......騎士になった時から決めていました」



二人は覚悟を決める。



その時だった。





「貴方達が帝国の最精鋭ですか」




その時だ。



背後から声がかけられる。




振り向くとそこには、一人の少女がいた。



黒衣を纏ったオッドアイの少女だ。




呪われた眼を持った彼女は口を開く。




「シリウス様が配下......守護聖典が一人」




シリウスーー悪魔達が口を揃えて言う主の名前だ。



その正体はほとんど不明。



分かるのは、化け物を率いてる長ということだけだ。




「敵ということか?」



アバラは問いかける。 




「そうですね。始めましょうか、少数の精鋭はあらかじめ潰せとの命令です」



少女ーーサリスの背後に無数の魔法陣が展開する。




「かかれ!」




辺りにいた数十名の兵士達がサリスに襲いかかる。



だが、飛びかかった兵士達の全てが、身体中がバラバラに吹き飛んで絶命する。




「レベル30以下は、問答無用で完殺できるスキル? らしいです」


「何を言っている? なんなんだその力は!?」


「私も分かりません、あの人から与えられた力は理屈すら不明です」


 


サリスはそう言って心眼を発動する。




(女の方はレベル66、男の方はレベル73。少し私では困りますね)



サリスのレベルは88ではあるが、支援特化のステータス構成の為、実際の戦闘力はレベル70後半相当。



勝てなくもないが、単独では戦いたくない。




上位悪魔招来デーモン・コール




サリスが魔法を唱えると、全身を鎧で覆われた人型の悪魔が姿を現す。



リザード・デビルというレベル84のアンノウンワールドのモンスターだ。




サリスの強みは、強力なモンスターを使役することにある。



絶対に数的不利を作らせない。



「お前は悪魔の相手を、俺はあの女を殺す」


「了解です!」




二人は戦闘体制に入る。




「他の騎士たちを呼べ! お前らが勝てる敵ではない 大魔族級が2体現れたと伝令しろ!」



アバラの怒号とともに辺りにいた兵士達が一斉に動き出した。




「増援が来る前に鏖殺しましょうか」




サリスは笑みを浮かべた。

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悪役ロールプレイヤーの私、自キャラとして見知らぬ世界にいたので、理想の悪役目指して侵略する @coco8958

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