邪神の軍勢



一方同時刻ーー王城中庭にて。





そこには、騎士団の人間達が死体の山を築いていた。




その死体の山を築き上げていた張本人は、サリスだ。



守護聖典が一柱、かの主の天使。




「化け物がっ!」



この広場で最後に残っていた初老の男ーー騎士団長、ロック・デイバーがそう言い放った。




「人に化け物とは......言うものではありませんよ」


「こんな人間いてたまるか!」




ロックはそう啖呵を吐きつつも、サリスを分析しようとする。




(こいつ、恐らく魔王軍の将軍よりも強い......)




ロックはかつて魔王軍との戦争で、将軍クラスの大魔族と戦ったことがある。



勇者パーティーを除けば、王国最強と言われたロックでさえ、魔将軍には敵わなかった。



その時のあいつよりこの女は一段階強い。





「どうしました、かかってきたらどうです?」



ロックは身構える。


考えなしに突っ込んで勝てる相手でもない。




「培養術法ーー魔獣腫」




彼女がそう呟いた瞬間。



辺りで絶命し倒れていた騎士達の身体が溶けていく。



それは瞬時に再構築され、異形の獣へと姿が変貌する。




体長が10メートル近い6本足の熊のような怪物、顔が三つあるゴリラのような怪物、巨大な大蛇など多種多様だ。




「な、何をした!?」




ロックはあまりにもの出来事に、硬直してしまう。




「死体を転がしておくのも勿体無いので眷属に変えさせてもらいました」


「な、なんだ、そ、その、魔法は!?」


「魔法ーーというよりかはスキル? らしいです。私も詳しく知りませんが」



ロックはスキルに聞き覚えがあった。確か、勇者が使っていた秘技だ。



恐らく異世界の技術なのだろう。




ロックは、自身に喝を入れる。




「良くも仲間達を弄んでくれたな、外道が!」



覚悟を決めて、全力で突進してくる。




だが、その瞬間だ。




空から、怪しげに眩く槍が降ってくる。



それはロックの頭を見事に貫通した。





ロックはその場に転がり絶命する。




「シリウス様っ!」



それからゆっくりとシリウスが降下してくる。




「我の方は終わった......サリスも粗方片付いた様子だな」


「はい、取るも足らない者たちばかりでした」




騎士団長ロックのレベルは68。



まぁ、サリスの敵ではないだろう。



それに騎士団の平均レベルも30あまりと言ったところ。



レベル88のサリスにとっては赤子のようなものだ。




「それとあたりの死体を全部魔獣に変えて欲しい」


「勿論、善処します」




魔獣は、NPCなどを媒介に生産できるレベル20〜40のモンスターだ。


プレイヤーかNPC、もしくは指揮官系モンスターを多数配置することにより軍勢レベルの魔獣を操ることができる。




地獄門ヘルゲート



シリウスがその魔法を唱えると、背後に禍々しい巨大な門が出現する。



そこから、20体の悪魔が姿を現した。



四メートル前後の巨大な体躯、二足歩行の牛のような悪魔だ。




この魔法はレベル50の悪魔を複数召喚することができる。



この量産型悪魔は、指揮官系のスキル構成+レベル相応の物理戦闘能力を持っている。



魔獣を引きいれさせるには丁度いい。



これを繰り返していけば相当量の悪魔の召喚できる。




それにこの世界でレベル50というのは、かなりの強者だ。


60少しで一国最強と呼ばれるのだから、無限に生産できる50レベルがどれほどの脅威になるのか想像に容易い。




「良い軍勢が作れそうだ......」



シリウスは邪悪な笑み浮かべた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る