侵攻開始




王都を殲滅したシリウス一行は、ほど近い平原にいた。



小高い丘の上にシリウスとサリスの姿がある。




(とりあえずは順調......)




なんやかんやでいい感じに、王都を滅ぼせたと思う。



あとは生き残りが、邪神の降臨とでも噂を広めてくれればそれでいい。




シリウス達の眼下には、無数の魔獣を悪魔達の軍勢がいた。




多種多様な異形の怪物達が大地を埋め尽くしていた。



魔獣 推定一万体。


悪魔 推定六百体。




これだけの戦力があれば、スラン王国全域を支配することができるだろう。



各自ある程度の部隊に分け、抵抗した村や町は殲滅。素直に降伏した場合は殺さない。



そう言った命令を下して、各々進撃させる予定だ。





だが、この国にもいまだにレベル50クラスの強者は少なからずいる。




逆転勝利の可能性はないだろうが、一部では撃退されることもあるだろう。



それは、それでいい。




完全的に一方的な戦いでは面白くない。



対抗できる余地があるくらいが見ていて滑稽で面白い。





「それでだーー」




一つ問題がある。



シリウス達には、魔王城的な拠点がないのだ。


それらしき施設がないと、それはそれで格好がつかない。




「我らにも拠点が欲しいと思わないか」


「そうですね......どこかの都市でも占領しますか?」




都市を占拠して私有化するとして、どのような町がいいのだろうか。



その時だ、転移魔法を使ってサラティアが姿を現した。



「隣国ーーライジア王国の貿易都市、リ・ヘイダは如何でしょう?」




彼女はそう言った。



サラティアはシリウスが事前準備としてスカウトした守護聖典の1人だ。




「あそこは、海に面した大都市で貿易により非常に栄えています。戦略的な軍事面、後々にシリウス様がお造りにられる国家の経済面を考慮してここを起点とするのがいいかと」




シリウスはそう言った話は、全く分からない。


 

適当に乗っかっておこう。




「サラティアの言う通りにしよう。我は戦略は全くもって知らない......それ故にお前を仲間に引き入れたのだから」






サラティアは地政学に精通している。戦略や戦術に対する知識も非常に深い。



王族教育の賜物と言っていい。



中身が一般人のシリウスにはない技量だ。





「しかしシリウス様、この女を早々に信用していいのですか?」



シリウスの耳元でサリスがそう囁いた。




「まぁ、問題はない」




裏切る可能性はないとは思っている。



確かそう言った設定だったはずだ。




主神に天使達は素直に従い続けるしかない。




「サリス様、その心配はありませんわ。お互いに逆らえない身体という事は理解してるでしょう?」


「......シリウス様が言うならその御意向に」




サリスも納得はしてくれてたようだ。





「では、貿易都市リ・ヘイダを堕とそう」




シリウスはそう言うと、手を掲げる。




そうすると、その場に立ち続けていた悪魔と魔獣達が一斉に動き出す。




彼らはスラン王国の残存勢力の制圧に向けて動くだろう。




「それで、貿易都市の戦力は?」




シリウスはサラティアに問いかける。





「軍隊が少々ーー特級冒険者パーティーが一組。それともう一つ問題なのですがカーマダイン家の人間が何人か常駐しています」




カーマダイン家。



シリウスはこの二年間の旅の中で度々耳にした言葉だ。



確か、この世界有数の傭兵一族だ。



200年前に降臨した勇者の血を引いた一族らしく、平均的に凄まじい戦闘能力を誇っているとは聞いている。




魔族との戦争では、人類国家連合軍により雇われかなりの大活躍だったようだ。



特に当主のセヴァル・カーマダインは、魔王軍の最高幹部を撃破するなどの功績を上げている。



シリウスはセヴァルに関しては、守護聖典にすら届きうると考察はしている。






しかしーー。




「それで、それは勇者パーティーより強いのか?」


「はっきり申し上げれば、当然弱いかと」




ならば問題はあるまい。




あるのは鏖殺だけだ。

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